起業家の実例に学ぶ「事業成長のノウハウ」ー第1回 組織構築の実践例(採用編)ー

「起業家インタビュー」から、先輩起業家の実践例をご紹介

こんにちは、DIMENSION Business Producerの伊藤紀行です。これから数回にわたって、スタートアップやベンチャー業界における選りすぐりの起業家を取上げた「起業家インタビュー」をの中から、事業成長のノウハウをご紹介していきたいと考えています。

ご支援先の起業家の皆様からもお悩み相談頂くことが多い、「組織づくり」。第1回目はその起点となる「採用」の勘所について、これまでDIMENSION NOTEでお話を伺った経営者の皆様の知見や実例を基に、皆さんと考えてみたいと思います。

これが絶対の正解!というものはない領域だと思うのですが、優れた先輩起業家の事例から、皆さんの事業成長のヒントになる要素があればと思います。

組織づくりを、要素に分解して考えると?

組織づくりという大きなテーマについて、どのような要素に分解して考えるのが良いでしょうか?

前提として、組織について考える枠組みはたくさんあります。皆さんにとってしっくりくるものを選定いただければと思いますが、本記事では一例をご紹介します。

例えば、「働き甲斐のある会社ランキング」に複数回選出されているナイル社の高橋社長は、以下のようなフレームワークで考えられています。

”組織づくりには大きく「採用」、「オンボード」、「エグジット」、「アフター」の4軸があります。言い換えると、採用は「どれだけいい人に入ってもらうか」、オンボードは「どれだけパフォーマンスしてもらうか」、エグジットは「どういう人がどういう理由で辞めるか」、アフターは「辞めた後にどれだけ応援者になってくれるか」。

組織づくりはこの4つの項目の「総合格闘技」です。

採用だけ強くてもオンボードが駄目だと組織はうまくいきません。私は組織づくりにおいては、この4つの項目それぞれを分けて考え、全て高めるよう意識しています。(ナイル社 高橋社長)”

 

組織づくりに大切な要素をプロセス別にしっかりと押さえ、更に組織を卒業された後までおさえられている、実践的な枠組みですね。本日は上記のフレームワークの最初の要素にあげられている、「採用」の部分について考えてみたいと思います。

 

お金やブランド力が無い中で、何が採用の成否をわけるのか?

一般的に、上場企業や大手企業に比べ、スタートアップにはお金やブランド力の点で劣るケースが多いはずです。なかなか良い人が来てくれなくて。。という声を、ご支援先の経営陣の皆様から伺うことも多いです。

そんな中で、何が採用の成否を分けるのでしょうか。

過去に我々のメディアにご出演頂いた50人超の経営者のお話から、素晴らしい人材の採用に成功している起業家の皆様の共通点を探してみると、

 1.採用=営業ととらえる
 2.顧客である候補者の課題を理解する
 3.その上で、解決策を提示する

そんな共通項があるように思います。

一見シンプルですが、言うは易し、行うは難し。私自身、前職でチームの責任者として採用に取り組んだ際のことを振り返ってみると、1でとどまってしまい、2及び3までは踏み込めなかったため、貴重な人材の方の採用を逃してしまった。。という悔しい経験があります。

これは!という方にジョインしていただくために、どのように実践できそうでしょうか?具体例をみていきましょう。

 

3日で選考を完結し、年間1,000名の採用を実現??

例えば、組織の急成長に伴い年間1,000名を採用されているSHIFT社は、「3日で選考を完結する」という驚異的な手法を編み出されています。同社の丹下社長は、こんな風におっしゃっています。

”私たちは採用したいペルソナがどのような人で、彼らを採用するために何ができるか、ということを誰よりも知恵を絞り、実行してきているのです。

例えば、お金もブランド力もある大手ITコンサル会社は、採用エージェントに年収の60〜80%もの紹介フィーを払っていたりします。資金力で劣る私たちは30%程度しか払えませんから、普通にやっていては優秀な人材を回してもらえません。

そこで人材紹介エージェントにヒアリングを実施し、私たちにできることを考えました。

例えば、選考リードタイムが大手は45日ほどかかる所を、弊社は3日にしました。そうすることで月末に売上ノルマを達成したいエージェントが私たちに紹介案件を回してくれるようになったのです。(SHIFT社 丹下社長)”

 

「選考に時間がかかっている」という課題を特定し、そこへの解決策を提示した良い例ではないでしょうか。丹下社長から上記のお話を伺った際、「大企業に打ち勝つことために、ここまで考えて工夫されているのか!」と、貴重なヒントを頂けたことに感動しました。

スピードこそベンチャーの強みになるケースは多いと思いますので、丹下社長のアプローチから応用・実践できることがあるかもしれません。

 

入社2年後までを見越し、あえて長期の面接プロセスを実施?

3日で選考プロセスを終えるシフト社と、対極にある事例もみてみましょう。冒頭でフレームワークをご紹介したナイル社では、意図的に長い採用プロセスをとっています。高橋社長は以下のように語っていらっしゃいます。

”弊社は採用プロセスが非常に長いです。面接が3回、性格診断テスト、入社した場合に行うであろう仕事を筆記テスト化したワークテストを60分。この全ての結果を採用担当者が全役員が参加する採用委員会で議題にかけ、合否を判断しています。

採用委員会では、応募者の6ヶ月後、12ヶ月後、24ヶ月後の期待値に対し、正当な報酬を支払う価値があるということを役員全員に説明しなければいけません。その上で役員が「その評価は甘い」「もっと目標をあげられる」といった議論をするのです。

このプロセスを経ているので、もし採用ミスがあった場合でも全員が納得できます。逆にうまくいった時には、「こういう理由で給与を上げるべき」という議論もスムーズにできます。

求職者にとっても、人生に数回しかない大切な意思決定局面において、これだけしっかり自分のことを見てくれる会社のほうが納得感があるでしょう。

おかげさまで、2020年に入ってから当社の採用プロセスでオファーを出した方の80%が入社を決めてくれています。組織づくりと採用プロセスが、しっかりワークしている証左だと感じています。(ナイル社 高橋社長)”

 

入社段階から2年後までの活躍を見据えての採用は、なかなかできるものではないかもしれません。高橋社長からこの話を伺った際、自分が候補者であれば、「ここまで考えてくれる企業なら、安心して参画できる」と思うのではないか?との所感を持ちました。

スタートアップで働くやりがいは非常に大きいものですが、最初は不安に感じる方も多いかと思います。一見遠回りのように見えますが、こちらの事例も、採用候補者の心理をしっかり考え抜いたうえでの手法と言えるのではないでしょうか。

 

候補者の課題を考え抜き、最適な採用戦略を!

いかがでしたでしょうか?今回の記事では、採用に長けた2社の事例をご紹介しました。

皆さんの会社では、どのような採用戦略がベストでしょうか。

  • 皆さんの企業に応募する採用者の方にとっての、課題は何でしょうか?
  • また、皆さんはどのようにしてその問題を解決することができるでしょうか?

 

スタートアップにおける組織づくりには、1つの決まった解があるわけではないと思います。上記について考えてみることで、皆さんにとって最適な採用法について、何かヒントがつかめるかもしれません。

組織づくりのその他の要素については、また次回以降のコラムで考えていければと思います。

 

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