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はじめてのスタートアップ組織づくりー第5回 創業期・採用の基本ー

連載を予定している内容

こんにちは。本コラムを担当します、DIMENSIONの中山と申します。DIMENSIONでは創業初期のシード・アーリースタートアップへ積極的に出資・支援しております。はじめて会社を創業する場合、”そもそも組織づくりって結局何を考えるの?”と悩む方が多いかと思います。本稿では基本的な組織論の考え方や事例をご紹介しながら、皆さんそれぞれにあった組織づくりのヒントをご提供できればと思っています。

  • 事業から組織を考える ⇒第1回
  • 組織内コミュニケーション、組織文化 ⇒第2回
  • ミッション、ビジョンの策定 ⇒第3回
  • ミッション、ビジョンの浸透 ⇒第4回
  • 採用:採用活動のキホン、候補者との対話、⇒今回
  • 採用:面接のキホン、転職エージェントとの対話
  • 育成:1on1運用、評価のありかた、管理職の参画&登用タイミング、人事参画タイミング

 

 

書籍やSNSでの情報収集もお薦め

前回では、ミッション・ビジョンの浸透について基本的な考え方をご説明しました。組織作りの考え方をここまで追ってきましたが、今回は人に参画してもらう、“採用フェーズ“について皆さんと一緒に見ていきたいと思います。

なお、採用ノウハウについては、創業~上場フェーズを経験されたベンチャー企業・採用人事、エージェントの方々がこれまでの採用現場に基づく知見を書籍、SNSなどで発信されています。ですので、それらをうまく使った情報収集をお薦めします。私自身も各社の採用人事の皆様と交流させていただき、日々学びをもらっています。

採用 = “自社” を商品とする営業活動

今回お伝えするのは、創業期の採用での基本的な考え方についてです。基本的な考え方をお伝えしたうえで、自社にあった採用ノウハウを各人で情報収集いただくのが効率的だからです。

採用は“自社”をプロダクト・商品とした営業/マーケ活動になぞらえることが多いです。

というのも、候補者は、“どんな会社に入れば希望するキャリアを築けるか””やりたいことを実現できるか”といった自身の物差しで複数の企業や採用ポジションを比較し、選択するからです。労働市場内で魅力的な人であるほどその選択肢が増える傾向にあります。

ゆえに、採用活動は“競合他社含めて、候補者の希望に一番近い企業になれるか”という、れっきとした営業活動なのです。採用人事の方々が、営業経験者のケースが多いのはこのためです。

具体的には下記のようなステップがあるかと思います。

①自社の認知
②自社へ惹きつけ、関係者の意向把握
③採用基準との照らし合わせ
④オファー、関係者意向のすり合わせ ⇒ 承諾
⑤オンボーディング

 

創業期の採用 = “惹きつけ(アトラクト)” に集中する

私自身、シード/アーリーステージにおけるスタートアップ支援をしていて、上記のステップのなかで、創業期のスタートアップが最も意識したいのは「②自社へ惹きつけ、関係者の意向把握」と考えています。

その理由はシード/アーリーステージでは

① 自社の認知:自社名がまだ知られていない
③ 採用基準:事業立ち上げ段階では、求める業務要件が日々変化する⇒そのため、ミッション・ビジョンに共感できる人かどうかのほうが、比重として大きい

このような状況ですので、創業期フェーズにおいて他項目はかなりの努力・エネルギーが必要だからです。

そういう意味でも、「②自社への惹きつけ、関係者の意向把握」のほうが努力しやすい点と感じます。

 

不採用になった人も大切に

採用要件については合わない候補者の方も大切にしましょう。無名のスタートアップの採用面接に来て下さる稀な人だからです。今すぐの参画は難しくとも将来の仲間集めを見据えて応援団になってもらうコミュニケーションを心がけるべきです。「またこの会社に来たいな」「経験を積んだらまた面談してみたいな」と思われたら模範的だと思います。

そういう意味では“面接”というよりは、“面談”で聞き手に徹しながら、下記のポイントを正確にヒアリングし、最も魅力的な選択肢となるよう対話するのが王道です。

  • 自社について:自社が取り組んでいること、社長が起業するまでの経緯を丁寧に伝えて
  • 候補者について:候補者の方の来歴、現職への課題感、これからやりたいこと(これからやりたいことについて、どんな選択肢がありそうなのか、その中で自社はどんな位置づけか)
  • 参画いただくために:候補者、関係者(主にご家族の方)が大事にしているポイントは何か

 

候補者、ご家族に選んでもらうために

候補者の前職と同水準の良い待遇が用意するのは難しくとも、“候補者、関係者から見て大事にしているポイント”において、1位になることが重要です。
例えば、候補者の来歴、転職希望の理由が、前職では比較的高収入だったが、激務で家族との時間も取れない、やりたいことを実現したいという場合だったとしましょう。すると転職先には “年収を少し下げても、フルリモートで、家族との時間が取れる職場“ であることを求めているのかもしれません。

であれば、他社よりもその点の蓋然性(がいぜんせい)の高さをしっかりアピールすべきです。

ちなみに候補者の本音部分は、信頼されないとお話頂けないかもしれません。したがって、”面接“というよりは”対話(=腹を割って話す)“を目指すとよいでしょう。他社に先駆けて、候補者が本当に大事にしているポイントを把握できれば、その候補者の意向に合った提案ができるはずです。

上記は候補者ご本人に関する視点でしたが、関係者であるご家族からの納得感も重要です。当然、ご家族の生活にも関わることですから、本当に参画頂きたい方であれば、ご家族との対話も検討すべきです。

DIMENSION NOTEでインタビューさせていただいた、Kaizen Platform 代表取締役CEO須藤憲司 さんの言葉を紹介します。

<ステークホルダーに「応援される」組織の作り方>

>>ベンチャーの経営者だったら、絶対に意識すべきなのが「従業員の家族」です。

>>従業員自身にとって最大のステークホルダーは家族やパートナーですよね。例えば私が初めてエンジニアを採用しようとした際に「奥さんが心配してる」と言って悩んでいたので、エンジニアと彼の奥さんと私の3人でランチをしたこともありました。他愛もない話をしただけだったのですが、その結果奥さんが入社を前向きに捉えてくれるようになりました。

>>結局、親ブロックとか嫁ブロックとか旦那ブロックとか世間では色々言われていますが、そういう意味で言うと、従業員の家族に応援されない会社は採用で勝てませんからやっぱり厳しいなと思っています。

 

次回は採用活動における、エージェントとの対話、面接の考え方について書きたいと思います。第1回第2回第3回第4回の記事も参考にしてみてください。

 

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