
先達に学ぶ
先達に学ぶ ー第11回 ICCからの学びー

こんにちは。DIMENSIONファンドの伊藤紀行です。
今回、これまでにDIMENSION NOTE でお話を伺ってきた60名 を超える起業家の事例から、課題発見のパターンを探ってみました。過去60名超の起業家の事例を調べていくと、多種多様な方法で課題を発見されています。
その中でもいくつかよくあるパターンを見てみると
などがあります。実際にはこれらの組み合わせであるケースが大多数ですが、それぞれのパターンで課題を発見した起業家の実例とともに、見ていきたいと思います。
本日のコラムでは、これまでのコラムで間接的に紹介してきた1と2のパターンに続き
3.海外の事例を研究、日本にはまだ解決策のない課題で、起業する
の事例として
のケースを基に考えていきたいと思います。
ベンチャーキャピタルで働いていると、事業をスタートしたばかり、あるいは事業を開始する前からご相談いただくことも多く、まさに課題を発見し動き始めたばかりの状況を目にするケースも多々あります。そこには1つの共通項、いうなれば王道の流れのようなものがあります。
それは、何らかの形でまだ世の中で解決されていない課題や問題に気づき、そこからその解決策となるような事業を考えていく、という流れです。起業して現在成功している方々は、一体どのように課題に気が付くことができたのでしょうか。海外との“格差”に直面してそのきっかけをつかんだ、ウェルスナビ株式会社 代表取締役CEO 柴山和久氏の、実例をみてみましょう。
彼がたどったステップを簡素化してみると
というものです。柴山さんのケースを具体的にみていきましょう。
私は財務省を退職した後にマッキンゼーに入り、最後の一年半ぐらいはニューヨークで機関投資家の10兆円規模の資産運用をサポートしていました。金融工学の専門家たちと一緒にアルゴリズムを作り、自動運用システムも構築しました。
そんな折、シカゴにある妻の実家に帰省した際に「私たちの家族の資産運用もサポートしてほしい」と義父母に言われ、資産内訳を見て衝撃を受けました。一般的なサラリーマンの家庭なのに数億円もの資産があったのです。
理由を聞いてみると、会社の福利厚生で若い頃から富裕層向けの資産運用サービスを使い、30年ほど世界中の債権や株式に分散投資してきた結果、資産が億を超えるほどに成長したとのことでした。
一方で、日本にいる私の両親を見ると、同じような職歴と年齢にも関わらず、アメリカの義父母と比べて10分の1しか資産がありませんでした。私の両親も、若い頃から資産運用サービスを利用できていれば、10倍以上の資産になっていたかもしれない。富裕層だけでなく、誰でも安心して使える資産運用サービスがインフラとしてあればいいのに。そう思い、起業を志すようになりました。
――日本ではまだまだ資産運用の概念が広がっていないように思います。
「長期・積立・分散」というのは資産運用の王道ですが、この有効性についてあまり日本では知られていません。日本で資産運用する多くの人が短期的な投資、投機的な投資に集中しています。結果、FXの年間取引額は5000兆円を超えているにも関わらず、個人資産の半分以上が預金で眠っているといういびつな資産構成になっているのが日本の現実です。
我々の作るサービスで、多くの人に「長期・積立・分散」の資産運用インフラを提供したい。それが私が起業した理由であり、ウェルスナビのビジョンにもなっています。“
それでは、サービスの必要性に気が付いた後、起業家はどのような行動をとるべきなのでしょうか。
課題に気が付いたら、他の誰かが実現してしまう前に、すぐさま行動に移す。これに尽きるでしょう。
楽天の三木谷社長の「スピード・スピード・スピード」 のモットーは皆さんご存じの方も多いかと思います。こと新しい事業の創出については、タイミングが非常に重要です。自身が課題を認識できた瞬間から最速で動く、そんな心がけが大事になってきそうです。
(以前のコラムで紹介した弁護士ドットコムの創業者元榮氏は、事業アイデアを思い付いたその日に退職届けをだす、という驚きの速さで実行に移していらっしゃいます)
以前、投資家同士の交流の場にて、優れた起業家は何が違うのか、と議論になったことがありました。投資家によって重視する資質は様々なのですが、“周りからのフィードバックへの修正速度”については、多くの投資家が共通して重視していました。
例えば、投資家との面談で話に上がったポイントについて、ものの数日後に、
「指摘をもとに顧客XX名にアンケートをとってみたところ、こんなことがわかりました」
「前回提案してもらった内容を基に早速実験してみて、〇〇をアップデートしてみました」
などの反応がかえってくると、起業家の修正速度に驚くとともに、その方の実行力の高さと本気度を感じます。
この資質は柔軟性とも関連しており、投資家含む周りの意見を柔軟に取り入れられるということにもつながります。(もちろん、それが的を射た意見であれば!そうでないものは、感謝しながら受け流してよいでしょう。)
結果的にそうした起業家に出資・支援するケースが多く、我々が投資を行わなかった場合にも、他投資家の力を得て事業を前進させていることが多々あります。少しでも可能性があると感じたら、すぐ実験してみる。この姿勢は起業家にとって非常に重要です。
柴山さんの事例に戻りましょう。
“――WealthNaviは市場にいち早く参入し、サービス開始からわずか2年で国内No.1のロボアドバイザーサービスとなりました。急成長するサービスを生み出すためのポイントをお聞かせください。
よくプロダクト・マーケット・フィット(PMF)と言われますが、先行サービスが無い中ではとにかく早く世にプロダクトを出してみて、お客様のニーズを確認することが重要です。
一番やってはいけないのが、企画に時間を使い過ぎること。前例が無いからこそ、何が正しいかはロジックではわかりません。ですので、とにかくプロダクトを世に出してみて、お客様の反応を見ながらプロダクトを磨き上げていくことが重要だと思います。“
“――WealthNaviは具体的にどのようにPMFをされましたか?
WealthNaviの場合、初期は数十人を招待する形でサービスをスタートし、ユーザーの声を聞いていきました。
初期のプロダクトは今から考えるとかなり恥ずかしい状態で、ランディングページにはなぜか「白いソファー」の写真。この状態で100万円預けてくださった人たちはすごいですよね。(笑)そんな恥ずかしい状態でしたが、リアルなユーザーの声を聞いて本当に良かったと思っています。おかげさまで、半年後には現状にかなり近い状態にまでプロダクトを磨き上げることができました。
ここで気をつけなければいけないことは、「実際に使っていただいているユーザーの声」を聞くことです。例えば、まだ使われたことのない方の「ここを改善したら使う」という言葉は、本当に改善点を示す言葉なのか、使うことを上手く断る理由としての言葉なのか判断がつきません。言葉の「真意」を捉えることが重要です。
とにかく早くサービスをスタートし、ユーザーの声の「真意」を捉えてプロダクトを改善していくこと。これがサービスを成長させるうえで重要だと思います。 “
いかがでしたでしょうか?本日のコラムでは、海外の事例からの起業の種を見つけ、素早く実現した事例をご紹介しました。
気になる海外の事例があれば、今この瞬間にも調べられます。海外では実現されているのに、日本にまだない事業がみつかるかもしれません。さらに、日本にまだないのであれば、それはなぜか調べてみてはいかがでしょう。
上記にこたえうる良い仮説があれば、取り組んでみる価値があるかもしれません。もちろん、壁打ち相手が必要な時は、ぜひ気軽にご相談ください。
他の課題発見のパターンについて、また別のコラムでみていきたいと思います。また第1回、第2回、第3回、第4回、第5回も参考にしてみてください。
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