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学生でも分かる資金調達・資本政策のポイントー第9回 エクイティ調達①(調達先の種類)ー

連載している内容

本コラムを担当している下平です。DIMENSIONチームでは高校生~大学生のみなさんにも積極的に出資をしていますが、若い皆さんにとって、株式、融資、資本政策等の用語は、とっつきづらく分かりづらいことが多いのではないでしょうか。本稿では、複数回にわたって、以下のような資本政策、資金調達の基本的な知識や考え方についてお伝えします。

  • 創業期の資金調達にはどのような種類、オプションがあるのか ⇒第1回
  • 創業者の持分が希釈化していくことの意味、リアル ⇒第2回
  • 融資と株式でハイブリッドで調達し希釈化を避けることの重要性 ⇒第3回
  • 自社のビジョン、ビジネスモデルにあった最適な資金調達の手段の考え方 ⇒第4回第5回
  • 資金調達の計画の立て方、作り方 ⇒第6回第7回
  • 預金管理のポイント 第8回
  • エクイティ調達 ⇒今回と次回
  • 資本政策表の読み方、作り方
  • 初回調達の適切な契約スキームとは(J-KISS、みなし優先株、転換社債型新株予約権、普通株式、優先株式)
  • 資金調達の手続と契約
  • 金融機関、株主との継続的なコミュニケーションの方法

 

若い方でも理解が進むように、基本的な用語の定義やお薦めの書籍についても紹介しながら、お伝えしていきます。

今回は、エクイティ調達先の種類と留意点について解説をしていきます。

 

エクイティ調達先の種類と留意点

エクイティでの資金調達を行うことを起業家として決断した場合、調達先の投資家の属性としては、エンジェル投資家、独立系ベンチャーキャピタル、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)の3つが存在するかと思います。それぞれから調達する場合の留意点や探し方、選び方について解説をします。

 

エンジェル投資家

エンジェル投資家とは、個人の資産でスタートアップに投資を行う人のことです(お金の財布は、資産管理会社になるケースも)。上場またはM&Aでエグジットした上場企業の創業者や役員の方、資産家の方、また近年では上場時にストックオプションで利益を得た役職員の方もエンジェル投資をされています。

エンジェル投資を行う理由は人によって様々であり、本業の事業としてエンジェル投資を行っている方もいれば、純投資というよりも後輩や社会に対して還元していこうという気概で寄付的に行っている方もいらっしゃいます。

エンジェル投資の場合、個人での投資判断、意思決定となるため、早い意思決定が期待でき、起業家にとっては特に創業期の不確実性の高いステージにおいて、有力な資金調達先となります。

エンジェル投資家からの調達方法としては、実務上、普通株式での調達とJ-KISS(有償新株予約権)での調達の半々くらいの印象です。

自社の事業領域における知見や自社のチームにないノウハウなどをもっているエンジェル投資家を選ぶことが重要で、エンジェル投資家を探すためのプラットフォーム(AngelPortなど)を活用して、どのようなエンジェル投資家がいるか検討することも有益です。

是非コンタクトを取りたいエンジェル投資家がいる場合には、当該エンジェル投資家の知人経由で紹介を依頼したり、SNSでダイレクトメッセージを送ってコンタクトを取ることも考えられます。著名なエンジェル投資家は日々大量のメッセージを得ていることから、相手にとって会ってみたいと思える、会うメリットがあると思える、メッセージを送付できるかがポイントです。

近年、エンジェル投資家と称した反社会的勢力が存在するとも聞きますので、いざ調達を行う場合には、特に事前に反社チェックを行うようにしましょう。投資契約上、反社条項を入れることも必須です。

 

独立系VCとCVC

次に、独立系のベンチャーキャピタル(独立系VC)とコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)の基本的な違いについて説明をします。両者の違いは目的です。

独立系VCの目的は純投資です。独立系VCに出資するLP投資家としては事業会社から機関投資家まで存在しますが、独立系VCの基本的な使命は有望なスタートアップに出資し投資リターンを最大化し社会におけるイノベーション創出をしていく点になります。

一方、CVCの目的は純投資の点も見ながら、主として戦略的なリターンの創出にあります。既存事業の提携先の探索、社内における新規事業開発、また将来のM&A候補の探索が目的となります。多くのケースではファンドに出資する最大のLP投資家は本業を行う親会社であり、投資意思決定をする無限責任組合員となる投資子会社を創り、親会社と子会社の二人組合でファンドを組成するケースが多い印象です(その他、近年では、独立系のVCの投資会社が、事業会社からファンド運営を受託するケースがあったり、より純投資の側面を強化し中小機構などから資金調達を行うCVCも存在します)。

独立系VCとCVCそれぞれからの資金調達方法、プロセスの違いについて以下を参照ください。

起業家としては、今後の事業戦略や当該資金調達ラウンドの位置づけ、目的に照らして、独立系VC主体で調達を行っていくのか、それともCVCを中心として調達を行っていくのか検討し、計画を作ったうえで、投資家に接触していく必要があります。

投資活動がアクティブなVC、CVCを探す方法は様々ですが、参考になりそうなサイトのリンクを掲載します。
 ・日本ベンチャーキャピタル協会 
 ・スタタイDB
 ・Twitter:ベンチャーキャピタル/VCなどで検索 

なお、投資活動がアクティブかどうか、見るべきポイントは最新のファンド設立年数で、多くの独立系VCはファンド設立後、3年前後で新規投資を行い、後はフォローオンでの追加投資の枠として予算を残します。そのため、独立系VCに関しては最新のファンドレイズ後、数年以内かどうかが新規投資に関してアクティブかどうか見極める指標になります。もちろん、継続的にファンドレイズを行っていきますので、年数が経過していても最新のファンドレイズに動いているかもしれませんので、実際に面談のうえ、新規投資の状況や次のファンドレイズの進捗について確認することをおすすめします。

一方、CVCは一度ファンドレイズをした場合、より長い期間にわたって継続的に新規投資をしていくケースが多いため設立年数はあまり考慮する必要はないでしょう。

いかがでしたでしょうか。次回はベンチャーキャピタルの投資検討の実際として、どのような点として見ているのか、ステージごとの基本的な投資検討要素について解説をします。第1回第2回第3回第4回第5回第6回第7回第8回も参考にしてみてください。

 

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