
#ビジョン
起業家の実例に学ぶ「事業成長のノウハウ」ー第12回 ビジョン策定の実践例②ー

本コラムを担当している下平です。DIMENSIONチームでは高校生~大学生のみなさんにも積極的に出資をしていますが、若い皆さんにとって、株式、融資、資本政策等の用語は、とっつきづらく分かりづらいことが多いのではないでしょうか。本稿では、複数回にわたって、以下のような資本政策、資金調達の基本的な知識や考え方についてお伝えします。
若い方でも理解が進むように、基本的な用語の定義やお薦めの書籍についても紹介しながら、お伝えしていきます。
前回はVCが出資する際の出資判断の視点について解説を行いました。今回は、バリュエーション(時価総額の算定)について解説をしていきます。
バリュエーションは最終的には需要と供給によって決定されます。具体的には、当該資金調達ラウンドをリードするリード投資家が投資できると考えるバリュエーションのレンジと起業家として受け入れることができるバリュエーションのレンジ(=当該調達金額が確保できるのであれば放出して構わないと考える放出比率のレンジ)について、交渉、協議により重なった範囲内でバリュエーションが決まります。
過去の経験からラウンドごとのバリュエーションのレンジ、相場観を示します。バリュエーションについては個社ごとの個別性が非常に高いため、あくまで参考値として捉えられてください。
それでは、リード投資家はバリュエーションを提示するうえで、どのようにバリュエーションのロジックをつけているのでしょうか。
企業価値の算定方法は様々存在し、その代表的な手法は将来のキャッシュフローの現在価値を算出することで企業価値を算定するDCF法となりますが、VC投資の実務でほとんど使われることがありません。ここでは実務上参照されることが多いと考えられる「VC-method」というバリュエーション手法を紹介します。当該出資によって得られる想定IRRが、当該資金調達ラウンドのリスクに見合ったハードルレートを超えるかどうかを確認する手法となります。
■VC methodによるバリエーションの手順
計算のロジックを上記のとおりまとめたのでご参考ください。
当該出資のIRRを算出するためには、大きく以下の4つの数値を出す必要があります。
①~④を算出することができれば、エクセルの「XIRR」などの表計算により、年間の利回り=IRRを計算することができます。ざっくり申し上げると、早いステージでは60%以上、ミドル以降のステージでは3~40%以上のIRRは求めたいところで、当該出資案件がこのようなハードルレートを上回ってくるか、上回るための適切なバリエーションを算定、見立てることが可能となります。
VC-methodは、簡易に4つの変数で調達ラウンドのバリエーションの妥当性を判断できるため、実務上多く使われている印象です。
ご覧いただいたとおり、VC-methodを利用するにあたり、少なくともエグジット時のタイミングと時価総額を予測する必要があります。またエグジット時の時価総額を予測するためには、エグジット時までの事業計画を作る必要があります。
将来キャッシュフローの現在価値を算出することで企業価値を算定するDCF法について、変数の置き方が主観的にやりやすいため算定が恣意的とはいわれていますが、VC-methodにおいてもそれは同様だと思います。将来の成長シナリオには相当な振れ幅が出てくるため、エグジットの時期や時価総額には幅間を持たせて感応度分析を行い、アグレッシブシナリオ~ワーストシナリオでどのようにIRRが上下するか、ワーストシナリオでもハードルレートを超えることができそうか、という観点で、今回のバリュエーションを正当化できそうか参考材料としてみていきます。多くのVCは事業のヒアリングを行い、過去の経験や実際の類似モデルの上場企業の成長ペースも参考にしながら、投資家としての事業シナリオを予測、策定し、IRRを算定して、本ラウンドのバリエーションレンジを決められているように思います。
いかがでしたでしょうか。今回は、バリエーションについて説明をしました。DIMENSIONではシード、アーリ―ステージを中心に積極出資中なのでお気軽にご相談ください。
次回からは「資金調達の契約や手続き面」について解説を行っていきます。第1回、第2回、第3回、第4回、第5回、第6回、第7回、第8回、第9回、第10回を参考にしてみてください。
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