#ビジョン
「お金を前へ。人生をもっと前へ。」をミッションに、個人向け自動家計簿・資産管理サービスやビジネス向けクラウドサービスなどを展開し、昨年東証マザーズに上場した”国内Fin Techの雄”であるマネーフォワード代表取締役社長 辻庸介氏に起業家に必要な素養や人事・組織論等について聞いた。(全6話)
営利企業として社会の前進にコミットする
――マネーフォワードは、官公庁とのつながりが強いという印象があります。どのような意図をもって官公庁の方との付き合いを始められたのか、またスタートアップがパブリックセクターと付き合っていく意義はどのような点にあるとお考えでしょうか。
私がMBAの留学でアメリカにいたとき、「日本は、世界が思っているよりもずっと実力がある」と思っていました。実力通りに評価されていたらいいですが、実力以下に評価されるのは納得できなくて。
どうして実力以下に見られてしまうんだろうなと突き詰めて考えてみたんです。そのときに思ったことは、2つありました。
1つ目は、会社として社会的課題を解決するという目線での情報発信が足りていないこと。2つ目は、日本のどこか1つのプレーヤーが活躍するだけではなく、官公庁等のパブリックセクターとも一緒になってルールを作り、日本経済を良くしていくという意識の欠如です。
会社として、しっかりと社会的に有益な情報発信を行いつつ、日本経済を良くしようと志高く頑張っている官公庁の方を巻き込んでいければ、より大きな成果を出していけるのではないかと思っています。
――なるほど。MBAでアメリカ留学されていた際に考えられたことを、起業された後、実際に実行されていったのですね。
はい。例えば先日、マネーフォワードFintech研究所長である取締役の瀧と面談しているときに「この1カ月ほとんどマネーフォワードのためというより、日本のFintechのために時間を使っているのですが、これでいいのでしょうか?」と相談されました。
もちろん、マネーフォワードは会社として売上を伸ばし、利益を上げる必要があります。なので、経営陣の限られたリソースをどのように使うべきかは、経営判断としてとても大切です。ただ、今はまだ業界の過渡期であり、自社だけではなく業界全体を動かしていくような発信力や巻き込み力も大切だと考えています。
社会を前進させていくことができれば、おもしろいじゃないですか。瞬間的には全く合理的じゃない意思決定をしているかもしれませんが、瀧の活動は理解してサポートしていきたいですね。
個人の不安を解消し、社会をよくするお金の運用
――事業展開において、多くのステークホルダーを巻き込みながら議論を進められているようにお見受けします。
最近の新たなFintechサービスは、法的に「グレーゾーン」だと言われることもありますが、テクノロジーの進化に法律がついていっていないケースが多いと思います。ただ、「テクノロジーをこんな風に使えば、こんなユーザーメリットがあるんですよ」という話をすれば、当然、パブリックセクタ―の方も日本をよくしたいと思っているので、理解し、協力してくれるはずです。
そうした動きもあって、日本のFintechは、今すごくいいシステムができつつあります。官公庁や金融機関、ベンチャー企業、弁護士さんなどとの協力体制を構築できつつあるのです。私たちの構想に賛同してくれて、起業したての頃から全然お金にならない中で顧問をしてくれた先生もいます。志の高さを感じ、同じ道を歩むということが瞬間的に見えました。こんな時に、合理的な意思決定なんて必要ないんですよ。
他にも日銀から入社してくれた社員がいるなど、本当にみんなの志に支えられて、思いを実現する方向へ進んでいます。
――金融庁の森長官のレポートを拝見し、官民のベクトルが顧客目線ですごく揃ってきていると感じました。今後、マネーフォワードで達成したい未来はどういったものでしょうか。
高田馬場のワンルームマンションから起業したとき、個人・法人のお金の課題をテクノロジーで解消したいという思いでスタートしました。お金の流れが簡単に把握できる『マネーフォワード』がスタートし、続いてビジネス向けクラウドサービス『MFクラウドシリーズ』を開始しました。
個人向けには、2017年9月に自動貯金アプリ『しらたま』をリリースしました。今後は、『マネーフォワード』での現状把握に加え、『しらたま』のように「貯金ができない」といった課題に対するソリューションの提供を目指しています。個人がお金の悩みから解放され、やりたいことにチャレンジできる社会作りに貢献したいと考えています。
また、企業のバックオフィス領域では、クラウド会計やPOSレジ、勤怠管理ソフトなどが、クラウド上でつながる世界になるでしょう。クラウド会計で企業の財務状況が分かり、さらにキャッシュフローが把握できるため、経営判断が早くできる。そのデータをもとにして、銀行による融資もオンラインで完結できるようになります。
そうすると、お金の流れが変わり、流れるスピードも速くなります。企業の業績が上がれば日本経済全体がよくなります。そういう世界を目指し、既にさまざまな取り組みを開始しています。
チャレンジのないところに成功はない
――御社の構想が実現すれば、法人も個人もお金の不安なく暮らせる社会になりそうですね。
はい、現代社会はお金の管理の部分に大きな課題がありますよね。そこを解消していくことが私たちのミッションです。さらに裏側のシステムでいうと、個人の預貯金を企業の成長資金、つまり投資にまわしていくこともできますよね。法人にとっては、このシステムで経営を改善していくことができ、中小企業は活性化します。結果、日本経済をよくすることにつながるはずです。
こうした仕組みを整備し、日本ナンバー1のプラットフォームになり、アジアに出ていきたいなと考えています。
――最後に起業家のみなさんへのメッセージをお願いします。
我々マネーフォワードはFintech、SaaS領域で社会の課題を解決して日本経済をよくしていくこうと考えています。
今、社会ではいろいろな社会課題があったり、不安があったりすると思いますが、そうしたものを解消していくのがベンチャーの役割だと思います。
「チャレンジのないところに成功はない」と思うので、ぜひいろいろなチャレンジを通して素晴らしいビジネスが生まれ、素晴らしい起業家が誕生し、経営者に成長していければ、日本経済が前進していくようなエコシステムをみんなでつくっていけるはずです。ぜひ一緒に頑張っていければと思います。
>第5話「投資家の事業への巻き込み方」に戻る
>マネーフォワードのホームページはこちら
DIMENSION 編集長
「人・事業・組織に向き合い、まっすぐな志が報われる社会を創る」をミッションに、真摯に経営に向き合う起業家に創業期から出資し、事業拡大・上場を支援する国内ベンチャーキャピタル。
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