#インタビュー
企業向けの空間シェアリングビジネスの先駆けとして、2005年の創業以来、遊休不動産を保有することなく借り受け、貸会議室・宴会場として展開することで、新たな空間活用ビジネス市場を創出してきた株式会社ティーケーピー。同社代表取締役社長 河野 貴輝氏に起業家の素養、組織作りなどについてDIMENSION代表取締役社長の宮宗 孝光が聞いた。(全4話)
めげない心・挑戦する心・人徳
ーー河野社長にとって、起業家として重要な素養を3つ挙げるとすると何でしょうか。
1つ目はめげない心が大切です。常に戦闘態勢を保ち、逆境を好む人が良いでしょう。
2つ目は挑戦する心、つまりチャレンジスピリットです。挑戦する心を持ち続けられるかどうかが重要です。
ただ下請け業をするだけで、世の中に革命を起こさないのであれば、わざわざ起業する必要はありません。
社会の価値を変えたい、変革したいという想いを持つことが大切です。
河野 貴輝/1972年生まれ
1996年慶應義塾大学商学部卒業後、伊藤忠商事株式会社為替証券部を経て、日本オンライン証券株式会社(現auカブコム証券株式会社)設立に参画、イーバンク銀行株式会社(現楽天銀行株式会社)執行役員営業本部長等を歴任。2005年8月株式会社ティーケーピー設立、代表取締役社長就任、2017年東証マザーズ上場。現在に至る。
3つ目は人徳です。
会社は人と人が作るものなので、他人の気持ちが理解できるかどうかが重要です。
また、柔軟性やバランス感覚など、マネジメントにおいて重要なスキルを持つことも大切です。人間性がなければ、ただ上から命令するだけのリーダーになってしまいますから。
会社が大きくなるかどうかは、社長の器の大きさによるところが大きいです。
人徳がしっかりとあるかどうかが、結果を左右する大きなポイントになるでしょう。
祖父の背中を追いかけた幼少期
ーー挫けずに挑戦し続ける心を持ち続けるために、もともと何か習慣があったのでしょうか。
私は祖父を見て育ちました。
祖父は元々農協で働いていましたが、その職を辞めて事業を始めました。その祖父が大分の別府で困難に直面しながらもめげずに事業を運営している姿を見て、挑戦し続ける姿勢を学びました。
祖父の大変な様子を見ていたからか、親からは「絶対に起業なんかするな」と言われていました。
それでも起業したのは、祖父の影響は確かに大きかったのですが、それ以上に学生時代から事業をすることを楽しんでいたからかもしれません。
子供の頃から、夏休みになると祖父の店に行って手伝いをしていましたし、お客さんと接するのが楽しくて、店長のようなこともしていました。
大学時代も、いつか起業をしたいと思っていましたから、完全にお金を稼ぐためのアルバイトと経験を積むためのアルバイトを区別して、後者を3ヶ月毎に転々と変えながら色々な経験を積みました。
当時は株式会社を作るのに1,000万円が必要という時代でしたので、起業資金を作るために、稼いだお金は全て株につぎ込みました。
ただちょうどその頃は、バブル経済が崩壊し、日経平均が3万7000円から1万4000円まで下がる局面で、株を買っても買っても損をするという状態でした。(笑)
私は負けず嫌いなので、株の勉強を重ね、一流のディーラーやファンドマネージャーになることを目指していた時期もありました。
結果的に、それら全てが糧になっています。
もちろん事業をしているとうまくいかないことは多いけれど、何か「このまま終わりたくない」というハングリー精神が私を突き動かし続けているように思います。
大目標・中目標・小目標を立てよ
ーー事業を始める予定の方や、20代の若手社会人に向けて、今から何を磨いた方が良いか、どのような経験を積んでおくべきかといったメッセージがあればお願いします。
私は全く会社に頼っていなかったですね。
会社の仕事が終わった後や週末などは、自己研鑽のためにさまざまな場所に顔を出していました。同世代の集まりには興味がなく、私が参加していたのは、上場企業の社長や経営陣の集まる会合だけでした。
ーーどのようにしてそのような場所に参加していたのですか?
その頃、私は証券会社に務めておりましたので、証券会社の集まりには良く足を運んでおりました。ある時、大和証券の渋谷支店に集まりがあると知り、偶然にもその場に参加することができたのです。
当時は、東証マザーズが新設された直後のネットバブルの中で事業を推進していたインターネット関連企業の社長達、そして上場を目指していた企業の人々が集まっていました。私もそこに混ざって、若い頃から刺激を大いに受けたように思います。
ーー現在はSNSもありますが、やはり対面で会った方がいいものですか。
リアルじゃないと難しいと思います。
通り一遍の話はSNSでもできますが、雰囲気や迫力というのは分からないですよね。上場するクラスの経営者の皆さんは活力やパワー、迫力が違います。
こうなるためにはどうしたらいいか。憧れや目標があって初めて、それに向かって進むためにはどうすればいいかを考えることができます。
ーー逆にギャップを感じて自分ではできないと思い込んでしまうような若手もいるかもしれません。
自分ではできないと思い込むことはあります。
だから「大目標・中目標・小目標」を立てることが重要です。
私の場合、大目標は、社会に影響力を及ぼす事業を展開している人です。
中目標はそのような事業を展開する企業を作ること。
小目標はその企業を作るための資金、知識、経験を得ることです。
起業前は、まず企業を作るために揃えるべきものを因数分解して、その上で日々行動していたように思います。
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宮宗 孝光
ビジョンは「正しい起業家と事業の創出」。真摯に経営に向き合う起業家に出資し、事業拡大・上場を支援する国内ベンチャー投資ファンドDIMENSIONの代表取締役社長。出資先9社の上場、12社のExitを経験。直近の出資・支援先はSHOWROOM、五常・アンド・カンパニー、AnyMind Group 、LegalOn Technologies 、カバーなど。 東京工業大学・大学院を卒業後(飛び級)、シャープ株式会社を経て、2002年からDIにて20年間、大企業とスタートアップの戦略策定、幹部採用、M&A、提携、出資・上場支援に従事。2019年DIMENSIONファンドを立ち上げ、2021年MBO・独立。 2022年、産業革新投資機構・海外機関投資家・11名の上場創業社長などがLP出資する101.5億円のDIMENSION2号ファンドを設立。
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