#上場
「ライフスタイル&テクノロジー」を事業領域として、創業20年余りでグループ売上1,300億円超まで成長し続けるストライプインターナショナル。2016年10月には創業2年目のベビー・キッズアパレルEC「smarby(スマービー)」を買収し、さらなる多様化を推し進めている。今回はそんなM&Aを実施したストライプインターナショナル石川社長とスマービー遠藤社長に、その舞台裏とM&A成功の秘訣を聞いた。(全5話)
「M&Aのシナジー」の実態
——遠藤社長、ストライプインターナショナルにジョインしてみて事業面での変化はありましたか?
遠藤:事業面でいうと、様々なシナジーがありましたね。
通販ビジネスでは、どういう商材を集めるか、どんなブランドが入ってくるかが非常に大事です。ストライプインターナショナルのグループに入ったことで、入ってくれるブランドが格段に増えたということは事業に大きな影響を与えています。
また、ストライプインターナショナルの知見やネットワークから得られる情報も大きいです。そうした情報をもとに、事業の舵取りを変えるといったチューニングも増えたように思います。
目に見えるハード面のシナジーだけでなく、情報といったソフトの面でもかなりプラスのシナジーがあり、実際に売上は伸びています。
——事業面以外でプラスになったことはありますか?
遠藤:大組織のグループになったことで、組織面での整備が加速したように思います。人事評価するとか、勤怠管理するとか、そうした当たり前のことをきちんとやることが求められます。
また、私自身が、石川さんと話ができるおかげで経営者としての目線が上がっているなと感じています。ちょっとしたことでも、石川さんや身近な誰かに相談できる環境は非常にありがたいです。特に石川さんは常に「わからないことがあれば聞きにこい」とおっしゃっています。
石川:何かあったらすぐにLINEやチャットで相談してきますからね。
遠藤:石川さんと話していると、「自分は子供だったな」と痛感させられることが多いです。自分より高い視座から「こうしたほうがいいんじゃないの」と言ってくださり、フォローしてくださる。とても心強い存在です。
「3年で卒業してくれ」に込められた想い
——ベンチャー企業をジョインさせても、あまりうまくいかないケースはあると思います。石川社長は、M&Aの際にベンチャーの社長にどのようなコミュニケーションをとられていますでしょうか?
石川:私は、ジョインしたベンチャー企業の社長には「3年で卒業してくれ」と伝えています。3年経ったら次のステージに行ってほしい、起業家として新たなステージにいってくれと後押ししているんです。
グループになったからといって、ずっと居てもらおうという気はさらさらありません。結果的に、ストライプインターナショナルに骨を埋めたいという思いをもったならば良いのですが、私は彼らにそういうことをしてほしいのではありません。
私は、1億円、2億円の運用しか経験したことがない若い起業家に、1,000億円企業のサプライチェーンやマーケティングを見せたりしたいのです。スケールの大きな企業のマネジメントを見たうえで、次のステージに進んでほしいと考えています。
——すごいメッセージですね。買収した会社の社長には、社内にいる際にはどのような存在でいてほしいとお考えでしょうか?
石川:ストライプインターナショナルにいる間は、その能力をフルに社内に還元してほしいですね。サラリーマン化してしまっているような社員にも刺激を与え、目線を上げてくれるような存在でいてほしい。
さらに、経営の課題を何か1つでも2つでも解決してほしいと思っています。スケールの大きな組織での成功体験で自信をつけて、次は初年度の売上が10億円、20億円となるようなスタートアップ企業を作ってもらいたいと思っています。
成功するM&Aに不可欠な、トップ同士の信頼関係
——M&Aを成功させるためにはどんなポイントがあるのでしょうか?遠藤社長はベンチャー企業の視点からどのように思われますか?
遠藤:周囲を見ていると、M&A後に上手くいっている起業家は、買収先のトップや幹部と直でやり取りをしながら事業を進めています。一方で、上手くいっていない起業家は、買収先の幹部と関係性が希薄であることが多いです。
そういう意味では、買われるベンチャー視点では買収先のキーマンと一緒に事業をつくっていけるかどうかが重要な見極めポイントなのでしょうね。膝を詰めて細かいやりとりをしなくても、一緒に事業をつくっていける関係性を築けることが重要だと思います。
——続いて、石川社長が考えるM&Aを成功させるための買収する側としてのポイントはどのようなことでしょうか。
石川:私はグローバルでこれまで何回もM&Aをしてきましたが、7〜8割は成功しています。理論値では10%〜15%しか成功しないと言われていますので、かなり高確率だと自負しています。その秘訣は、「良いものはいじらない、無いものと困っていることだけを助ける」と決めていることです。
例えば、スマービーには優秀なエンジニアが大勢います。そのままで良いので、私たちがエンジニアに関して何かを言ったことは一度もありません。一方で、スマービーには、百貨店アパレルブランドやセレクトショップが出店してくれないといった課題がありました。そうした課題には、私が直接交渉して百貨店のキッズブランドの社長との話をまとめるなどして助けています。
他にも、D to C(Direct-to-Consumer)で、スマービー内の自社ブランドをつくっています。とはいえITベンチャーでは、なかなかモノを作ることができません。そこで1年間我々のデザイナーを入れて力をつけてもらい、2年目からはスマービーで自走していくということをしました。
困っていることやできないことだけを私たちがサポートしていくという関係性なんです。
——買収した会社の個性を大切にされているんですね。
石川:大手企業がM&A時にやりがちなのは、良いところも悪いところも親会社流に染めてしまうということです。私たちは、各グループ会社それぞれ個性があっていいと思っていますから、強みは活かし、弱みだけサポートするようにしています。
※本記事は配信日現在の内容です
>第5話「起業家に必要な高い視座」に続く
>第3話「人間力の磨き方」に戻る
>ストライプインターナショナル公式HPはこちら
>スマービー公式HPはこちら
DIMENSION 編集長
「人・事業・組織に向き合い、まっすぐな志が報われる社会を創る」をミッションに、真摯に経営に向き合う起業家に創業期から出資し、事業拡大・上場を支援する国内ベンチャーキャピタル。
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