
#マーケティング
「データによって人の価値を最大化する」というミッションを掲げ、顧客理解からパーソナライズまでを一気通貫で実装できる、CX(顧客体験)プラットフォーム『KARTE』を提供する株式会社プレイド。同社代表取締役 CEO 倉橋 健太氏に、起業家の素養や、CXの今後についてDIMENSIONビジネスプロデューサーの巻口 賢司が聞いた。(全4話)
ーー御社は大変順調な資金調達のストーリーで調達を重ね、上場直前にはGoogleの本社からも協業・調達を行うなど、成功例と言っても差し支えないと思います。資金調達で、特に意識されていたポイントがあれば教えていただけますか。
調達環境にもよると思いますが。一番重要なのは、基本的にステークホルダー(VCも、上場後は株主や機関投資家も含めて)に対して、常に理想から会話をすることです。
結局、我々に対する期待値をどこに設定してもらうかが肝心で、資金調達は自分たちが望ましい形でステークホルダーに認識してもらわないと、後々不幸になると思うんです。
調達環境が厳しい時は、本来は手段のはずの調達が目的化してしまい、望まない資金や期待値を背負ってしまう会社も多いと思います。
しかし、どんなに苦しくても自分たちの理想とするところ、それを語ることが重要です。
もちろん、理想を語ることには責任が伴います。それでも、最初に理想を掲げて努力できるかどうかは、最初の資金調達から上場時のロードショーまで、全て同じだと強く感じています。
ーーそのためにも、自社のサービスのコンセプトの位置付けや、フィットしているかという点が重要になってくるわけですね。
そうですね。
もし「振り向いてくれるVCがいないかもしれない」とリスクに感じるのであれば、おそらくその人自身が確信を持てていないということです。
確信が持てているなら、「どこかに理解してくれる相手がいるはずだ」と思わなければなりません。
現実的な解決策を求めてしまうと、後々全ての制約になってしまうので、絶対に妥協するべきでない部分だと思います。
ーー実際、ファイナンスの際にご苦労されたことは多いと思いますが、思い通りにいかなかった調達のラウンドはありましたか。
一番厳しかったのは最初の調達ですね。
私たちは2014年にフェムトグロースキャピタルからファイナンスを受け、プロダクトローンチは1年後の2015年でした。
起業経験もない私たちが、何も実績がない状態で理想だけを語って資金調達するのは、かなり厳しい状況でした。
そのため、プロダクトのアルファ版のようなものを作り、顧客にパフォーマンスを証明するなど、当然ながら全員総出で、全力で取り組みました。
実績が何もない段階で未来を信じてもらうのは本当に難しいことです。
しかし、私たちはフェムトパートナーズと出会えたことが大きく、自分たちの理想に合った期待値で最初に投資して頂けたので、その後はそれほど苦労しませんでした。
最初に妥協していたら、次回以降の調達でも、自信や交渉力など、全てが低いレベルになってしまうと思います。
私自身、この最初の成功体験があったからこそ「もっと上のレベルに行ける」と常に確信を持てましたし、Googleとの取り組みの際も同様でした。
当時、Googleとプレイドの現場レベルでの対話から自然に生まれた構想が、本社にまで展開され、ファイナンスにつながりました。
企業の規模を考えると、多くの場合、最初から選択肢として除外してしまうかと思います。しかし、私だけでなく、現場のメンバーたち全員が常に可能性を探り「上手くいくかもしれない」と同じ想いを持っていたからこそ実現できたのだと思います。
ーーコンセプトの改善余地を検討することは大前提ですが、投資家との対話では確かにリジェクションの方が多いかもしれません。
そんな中でも、自分の軸を持ち、ブレずに信じ続ける力が必要不可欠です。
なぜなら、投資家も「この人たちなら実現できる」と確信が持てなければリスクを取れないからです。弱気な姿勢では、投資家からの信頼は得られません。
ーー御社は数名の創業メンバーから始まり、現在では500名規模まで成長されています。以前、組織でつまづかれたというお話がありましたが、その失敗体験や苦労から、上場後の組織づくりで特に意識されたポイントや大切にされてきたことがあれば、教えていただけますでしょうか。
上手くいった点としては、2020年12月の上場後、21年、22年と新規プロダクトや新規サービスを次々とローンチできたことが挙げられます。
こういったサービスは半年程度では準備が難しいので、上場前から構想を練っていました。上場後は必然的にパブリックマーケットのことを学ぶ必要があり、初めての経験も増えるため、経営陣の目線がそちらに向きがちです。
放っておくと会社の勢いが一時的に落ちると予想していたので、上場前から攻めの姿勢を保つため、意識的に新しいものを仕込んでおき、それを1、2年かけて形にしてきました。
一度出してしまえば、やらざるを得なくなりますから(笑)。
事前に仕込んでおいて、自分たちのペースで上場後も走り続けられたというのは、非常に良い取り組みだったと思います。
これは一見、組織的な話に聞こえないかもしれませんが、組織の勢いには大きく影響する要素だと感じています。
一方で、上手くいかなかった点として挙げられるのは、プレイドが組織の仕組み化をほとんど行わないまま成長と規模拡大を続けたことです。
現在ではリカバリーできていますが、組織体制や人事評価制度といった組織面での整備を、極端に言えば何もしないまま進んできました。
現在グループ全体で500人程度になっていますが、250人規模の時点で組織を一度解体して作り直すという作業を行ったんです。
具体的には、「ダンバー数(150人)の壁」に直面したのです。
人が効果的に協働できる範囲は約150人と言われていますが、200〜250人になると、その範囲を明らかに超えてしまいます。
社員全員が組織構造を理解し、何とか業務をこなしてはいましたが、やがて限界が訪れ、様々な問題が浮上し始めました。
組織設計や、組織全体における各部門の役割分担も、かなりラフな状態でした。
このような体制でも上手くいけば理想的だと考えていましたが、振り返ってみると、どんなに優秀なメンバーを揃えても150人が限界だったのです。
その規模を超えると急に見通しが悪くなり、それまで外を向いていた意識が組織の内部に向き始め、組織内に異なる力学が生まれ始めました。
この経験から学び、組織の規模が拡大していく中で、目的に沿って生産的に機能する仕組みをどう作るべきかを考え始めました。
現在は様々な修正を加えながら、比較的軌道に乗ってきていますが、これが上手くいかなかったことです。
ーー先ほどの組織を解体して作り直されたという点について、具体的にどのようなエピソードやポイントがありましたか。
150人規模までの組織では、メンバー全員が何となく全体像を把握できていたんです。
ところが、知らない活動や状況が出てくると、メンバーは不安を感じ始めます。そして、不安になると、自分の基本的な役割の範囲を超えて行動することを躊躇するようになるんです。
「これは他のチームがやっているかも」とか「何かの妨げになるかも」といった思考が生まれ、人の行動の幅がどんどん狭まっていく。これは、見える範囲から見えない範囲へとフェーズが移行した時に起こる現象だと考えています。
「他の部署の関与が足りないのでは」といった懸念が出てきたり、問題を一緒に解決するのではなく、責任の所在を探そうとする傾向が出てきたりします。
それまでは問題が発生した瞬間に全社で対応できていたのに、問題の存在すら認識されにくくなり、できる範囲での対処に留まってしまう。こういった状況が出てきた時、根本的な問題は「組織としての活動に移行できていない」ということだと気づきました。
ダンバー数の150という閾値を超えると何が起きるのか、なぜそうなるのかということは、実際に経験してみたからこそ言語化できたと思います。
だからこそ、本当に必要な仕組みとは何か、どのようなアプローチで組織を変革すべきかについて、より確実な理解を得ることができました。結果的には良かったものの、非常にタフな経験でした。
成功体験を手放さなければならない。「今まで上手くいっていた」という意識を変える必要があったんです。
このアンラーニングのプロセスは、組織が大きくなればなるほど難しくなります。数字が悪化する前に手を打たないと、回復までの時間が長くなってしまう。
本当に大きな学びを得た時期だったと思います。
ーーメンバーの入社したタイミングや事業フェーズによって、それぞれ目的や会社へのロイヤリティ、目指す方向性が異なってきますよね。その中で統一感を持たせるために、今お話しされたような組織の考え方が有効なのでしょうか。
難しい問題ですよね。
組織課題におけるベストプラクティスは、起業や経営だけでなく、あらゆる仕事やスポーツなど世の中に溢れているので、予め勉強して問題を防ぐことは、ある程度可能かもしれません。しかし、その必要性を本質的に理解している人は少ないように感じます。
一方で、問題が起きてからの対応は非常に厳しく、致命的なダメージを受けるリスクも高まりますから、どちらのアプローチが良いのか、私も悩ましく感じています。
耐える力があれば、問題が起きた時に全力で対応する方が良いのかもしれません。
ただし、全員がそういった対応はできないでしょうから、適切なタイミングというのはあるはずです。
ある方と話をした時に、「問題の芽を検知してから全速力で対応する」と話したところ、「それは基礎運動能力が高いから乗り越えられるのであって、ビジネス経験の浅い起業家にその環境を与えると致命的な結果になりかねない」とお話されました。
つまり、経営者それぞれに合わせて、経営で取るべきゲームプランは違ってくるのだと思います。
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巻口 賢司
早稲田大学政治経済学部卒業後、日本マイクロソフトに法人営業として入社。国内の大手企業におけるデジタル化の促進に携わる。その後、ウォルト・ディズニー・カンパニーにて、スタジオ部門での映画の配給・マーケティングからコーポレート戦略部での新規事業開発など、幅広い業務に従事。2023年、DIMENSIONにビジネスプロデューサーとして参画。日台ハーフ・日英バイリンガルというバックグラウンドを活かし、グローバルな目線でのスタートアップ支援を志す。
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