#レジェンドに聞く
"Trade is NO BORDER!!"を掲げ、国内最大級のショッピング・オークション相場検索サイト等を展開する株式会社オークファン。 学生時代に起業し、2社の上場企業の創業者でもある 同社の代表取締役 武永修一氏に起業家に必要な素養や失敗談、そこから導き出された組織論等について聞いた。(全6話)
感動的な原体験が事業を動かす原動力となる
──第1話(リンク)では、起業家に必要な素養として志が非常に重要とお伺いしました。志を立てられたきっかけが、大学時代にネットオークションでノートパソコンを販売されたことだと伺いましたが、その時の体験をもう少し詳しく聞かせてください。
そのとき大きく2つの感動がありました。
1つは、「儲かるな」という感動です。
最初にインターネットオークションを通して物を売ったのは2000年頃です。20万円で購入して2年間経過したノートパソコンが15万円で売れたのです。中古買取専門店では5万円の値段しかつかなかったので、自分で出品したら3倍になるということにとても驚きました。そして、小学校の頃にお小遣い稼ぎでビックリマンシールの交換やゲームの売買をしていたことを思い出したのです(笑)。「リアルな大人の世界でも基本は同じなんだ」ということに興奮しました。
2つ目は、私のパソコンをネットで買っていただいた方がとても喜んでくれたという感動です。
そのノートパソコンを購入してくれたのは、北海道の地方にお住まいの方でした。近くにパソコンショップがなかったので、手に入ったことをすごく喜んでくれました。「綺麗に使っていただきありがとうございます。うちの妻がパソコンを覚えたいというので、2台目のパソコンとして大切にします。」といった内容の長文の感謝のメールをいただきました。
私も「今、寒くないですか? これからはインターネットの時代ですよね。」といったことを返信しました。その方とのやり取りはそこで終わってしまいましたが、とても喜んでいただけたことがとにかく嬉しかったのです。
その経験から、どんな場所にいても、24時間365日ネットで欲しい物を手に入れることができる、ということに可能性を感じました。ゲームソフトを売り買いしていた小中学生の体験と、初めてオークションで物を売ったときの体験が、今のオークファンの礎となっています。その当時の感動と、今のビジネスは確かに地続きのものです。
起業家に欠かせない直観を磨くには?
──第1話(リンク)では、起業家に必要な素養として、「志」「キャラクター」「直観」と伺いました。3つ目の「直観力」は後天的に磨くことができるものなのでしょうか。
「経営者は後天的なもの」と言われているのと同じで後天的に磨いていけるものだと思います。ただ、残念ながら生まれつき直観に自信がない人もいるとは思います。その場合には、意識して磨いていく必要がありますね。
──どうしたら磨いていくことができるのでしょうか。
私が思う直観の磨き方は2つあります。
1つ目は、直観力を磨く、と常に意識をすることです。
勉強もそうですよね。なんとなく授業を聞いていても、なかなか覚えられずテストで100点を取ることはできません。「自分はこの問題を解くぞ。この分野に強くなるぞ。」と意識することが大切です。ボケーッとしていると情報が流れてしまいますから、「直観を磨くぞ。」と日々意識をすることです。物事の見方が変わってきます。
2つ目は、具体的に意思決定をする機会を増やすことです。
できる限り、ビジネスの意思決定の場に多く参加すると良いでしょう。まだ経営者でない方や若い方の場合は、意思決定自体はしなくても、社長や決裁者の横で意思決定の場に立ち会う機会を増やしていくのです。その結果、うまく行ったか、いかない場合はどう修正したか、トライ&エラーを繰り返してみてください。それが経験則となり直観力が養われていきます。
──磨いた直観をうまく働かせるコツのようなものはあるのでしょうか。
あると思います。できるだけフラットな状態で判断するよう意識すること。これがすごく重要です。
フラットな状態で浮かんでくる答えこそが直観です。煮詰まっている時や苦手な人に気を使っている時、仕事が忙しい時は、その時の心境や状況に引きずられるので意思決定はしない方が良いと思います。
対して、飛行機に乗っている時や歯磨きをしている時などにフッと浮かぶ考えは、暗黙知が頭の中で整理されてポンっと出てきたものなので、腹落ちする正しい答えの場合が多い。
そういったフラットな環境を意図的に作っていく必要があります。自分にとってのフラットな環境は必ずあります。私の知人では、枕元にメモを置いて寝る方もいます。
「最近、お母さん元気かな?」と思ってスマートフォンを見ると、母親からLINEが届いていたということってありますよね。不思議な話ですが人間には、昔から引き継がれた独特の感覚が備わっていると思うのです。
──武永さんの場合は、どういう時がフラットな状態なのでしょうか。
朝起きてシャワーを浴びる時や猫に餌をあげている時、移動をしている時におりてくるケースもあります。
あえて普段はやらないこと、違うことに取り組むこともおすすめです。
たとえば、ビジネスと真逆の歴史書を読む、宇宙の本や科学雑誌の『Newton』を読むなどです。漫画等でも良いでしょう。ディスカバリーチャンネルで、UFOは存在するのか、ロケットエンジンで自動車はどこまで速く走られるのかといった実験をよく見たりもしています。
また、リッツカールトンのような高級ホテルのロビーで打ち合わせをした後に、ごちゃごちゃしたアメ横にあえて行ってみる、といったことも行っていました。
体験や行動の振れ幅を広げるように意識をすると、よりフラットな状態で直観を働かせられるようになると思います。
難しい意思決定をするためのコツ
──逆に、直観を磨くためにあまりオススメしないことはありますか。
意識高く『ハーバード・ビジネス・レビュー』などの本を読んだり、数字を分析したりすることも重要です。それだけではうまくいきません。会議室で長々議論している時より、ハワイでサーフィンをしている時にひらめいたことの方が、会社や世の中をガラリと変えてしまうようなすごいアウトプットがある、という先輩経営者がいます。こういうケースは多いと私も感じています。
会社が大きくなればなるほど、従業員の人生や社会に対する責任を背負うような大きな意思決定をしなければならない場面が増えていきます。
そんな時は、一旦、会社、事業、メンバーから離れて、誰もいない所に行ってたっぷり睡眠をとってボーッとしてみる。そのようなありのままの自分に近いフラットな状態の時に出た答えがその時の正解です。ですので、しっかり考えつくした後は、フッと肩の力を抜いて意思決定するということは非常に重要だと思います。
──フラットな意思決定をできるようにするために、組織的な仕組みづくりとして意識していることはありますか。
重要な意思決定は、会社を左右する大きな判断ですからアイデアレベルであってはなりません。そのため、経営者自身が向き合い、決断すべきことだといえるでしょう。
しかし、自分の仕事やサービスにおけるヒントを探す努力は、全社員に必要なものだと思っています。ビジネスのヒントは、多くのインプットとアウトプットができる環境によって生み出されるものです。そういう意味で弊社は、会議スペースや作業スペースを脳が刺激を受けるようなつくりにしています。
アイデアを出したい時はソファにゆっくり腰を掛けたほうが良いですし、何人かとお弁当を食べながら話したい時は共有スペースを使えます。就業後はカウンターでゆっくり考えるなどです。場が与える影響は、非常に大きいと思うのでその環境整備を意識しています。
>第3話「困難なときこそ成功に続く糸を手繰り寄せる」に続く
>第1話「学生起業から18年。見えてきた起業家にとって重要な”素養”」に戻る
>オークファンの公式ホームページはこちら
DIMENSION 編集長
「人・事業・組織に向き合い、まっすぐな志が報われる社会を創る」をミッションに、真摯に経営に向き合う起業家に創業期から出資し、事業拡大・上場を支援する国内ベンチャーキャピタル。
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