#ブランディング
「お金を前へ。人生をもっと前へ。」をミッションに、個人向け自動家計簿・資産管理サービスやビジネス向けクラウドサービスなどを展開し、昨年東証マザーズに上場した”国内Fin Techの雄”であるマネーフォワード代表取締役社長辻 庸介氏に起業家に必要な素養や人事・組織論等について聞いた。(全6話)
「世の中にないなら、自分で作ろう」
――マネーフォワードの事業を立ち上げようとされた原体験があれば教えてください。
私は、新卒でソニー株式会社に就職しました。その後、マネックス証券株式会社への出向、転籍やMBA留学を経て、2012年に株式会社マネーフォワードを設立しました。マネックス証券時代には、ネット証券が登場して「ユーザーにとってすごく便利なものが登場したな」と感じていました。
ネット証券の台頭によって、取引手数料も劇的に安くなったことや、それまではなかなか入手できなかったグローバルな金融商品も手に入るようになりました。このような変化により、「貯蓄から投資へ」という当時も掲げられていた社会的なスローガンを実現させる社会的なインフラが整備されてきたと思いました。
しかし、実際に証券を売り買いできていたのは国内でも数百万人のユーザーだけで、損を出している人も多く、一般の方が手を出すにはまだまだハードルが高かった。個人にとって投資するのにすごく良い「武器」ができたと思う一方、「武器」をどのように使ったらよいのかが分からないという方が多いのが実情だったのです。
私は、このような課題を知り、「武器」の使い方そのものや、個人の家計設計といった、より根本的な課題解決につながるサービスの必要性を感じるようになりました。
――そうした実情を知り、起業されたのですね。
はい。一般個人の方向けに、家計を管理できるようなサービスを提供したいと思うようになりました。
その当時ちょうど、インターネットテクノロジーの進化により、「食べログ」といった一般ユーザーが使いやすいサービスがどんどん登場していました。お金についての課題はみんな持っているもの。それをテクノロジーで解決できるようなサービスが世の中にあったほうがいいのではないかと考えました。
そして、「誰も作らないならば自分で作るかしかない!」と思い、サービスの開発に取り掛かったのです。
社内外から見計られる覚悟
――起業家に必要な3つの素養の中の「覚悟」が決まったわけですね。事業を推進する中で、やはり「覚悟」が重要だと感じたポイントや体験があれば教えてください。
私が起業して、1、2年目の頃に忘れられない出来事があります。会計事務所さんは我々の大事なパートナーなのですが、数千の顧問先をお持ちの著名な会計事務所の代表の方に、知人の紹介の縁からお話させていただく機会を頂戴しました。会計や基幹システムの中で間違いは許されませんよね。日々そのような緻密なビジネスをしている会計事務所の方に、ポッと出のベンチャー社長が必死に会計ソフトについて説明をするわけです。先方はソフトの内容を吟味してもいますが、私自身を見ているという感じもすごくしました。
さらに言うと、20~30分全然口をきいて下さいませんでした。こちらからひたすら力を込めて話しをしていましたが、私の覚悟を推し量られている、試されている感じがしました。ベンチャーキャピタルの方と向き合う時も同じような感覚を抱くことがあります。
第一線で活躍されている方は、サービスの有用性もさることながら、対面した相手の覚悟を見極めているのかもしれませんね。
スター起業家の存在が日本を強くする
――今後、日本の経済が縮小していくと言われる中で、経営についてどのような思いを抱いていますか。
よく「失われた20年」といわれます。しかし私は「失った20年」だと思っているんです。だって、意思決定を握っていた当時のリーダーは予測をある程度立てられたはずなのに、防がなかった。つまり、事故のように不意に起こったわけではなく「失った20年」なんです。
当時から少子高齢化が進み、人口減少が起こり、人口減少によって個人消費・GDPが下がることも把握できていましたから、いくら反対があっても大局的に見てすべきこともわかったはずです。私たちは「失った20年」を絶対に繰り返してはいけません。大局を見てから意思決定をしていかなければいけません。
私はソニーの盛田昭夫さんや本田技研工業の本田宗一郎さんのような日本を作った起業家を尊敬しています。私はまだまだ足元にも及びませんが、こうした起業家が増えていけば、日本はもっと強い国になり、「失った20年」を取り戻せるような成長をしていけると思います。
私たちは、前述の孫さんや柳井さん、楽天の三木谷さん(三木谷浩史さん)がいらっしゃる世界で戦えているという意味で非常にラッキーです。これらの方々のようなスター起業家がいらっしゃることが日本においてすごく大事。
今後の日本の成長のためにも、今度は私たちが、次の世代のそういうモデルになっていかなければいけないと思っています。
>>3話目「同じ船に乗る仲間の選び方」(第3話)に続く
>第1話「FinTechの雄が語る「起業家に必要な素養」」に戻る
>マネーフォワードのホームページはこちら
DIMENSION 編集長
「人・事業・組織に向き合い、まっすぐな志が報われる社会を創る」をミッションに、真摯に経営に向き合う起業家に創業期から出資し、事業拡大・上場を支援する国内ベンチャーキャピタル。
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