「経営者になるには経営者から学べ」 伝説的営業マンMS-Japan 有本隆浩社長を生んだ原体験とは(第2話)

生まれた時から「商売人」だった

ーー先ほどおっしゃった「経営の3原則」( 第1話リンク)を有本さんはどのようにして身につけられたのでしょうか?

それは簡潔明瞭です。「経営者になるには経営者から学ぶ」しかありません。

私は365日年中無休で商売を営む家の長男として生まれました。両親は駅前の小さな店で本やタバコを売っていたのですが、朝6時の搬入から23時の閉店まで、年中働きづめでした。

そんな商売人の家に生まれたので、サラリーマンというものを知りません。幼心に「年中無休の親の小売業は継ぎたくない」「自分はどんな商売を将来しようか」と想像しているような少年でした。

 

ーー「値決めは経営」の意識も幼少期が原体験となって身についたのでしょうか。

両親の店は本当に丼のなかにお金を入れる、まさに「どんぶり勘定」の店でした。

それを間近で見ていたので、算数も知らないような頃から「200円の本を売れば2割が利益だから40円儲かる」「200円のタバコを売れば1割が利益だから20円儲かる」というのをすぐに計算する癖がついていました。

どんな事業や場所に行っても売上と経費、利益を瞬時に計算する癖が身につくと、次第にあらゆる商売の「適正価格帯」がわかるようになります。適正価格帯がわかれば、市場における「上限価格」が瞬時にわかるようになります。

「勉強は商売の役に立たないから」と、全く勉強をせずに赤点ばかりとるようなやんちゃ坊主だった私ですが、おかげさまで数学だけはいつも学年で1番でした。

商売を営む両親のもとに生まれ、生まれながらにして「商売人魂」が染み付いている。これが私の経営者としての素養を形作った原体験です。

 

「夢」を売りさばいた伝説的営業マン時代

ーー幼少期から事業家を志されていた有本さんが大学卒業後、なぜリクルートへ入社されたのでしょうか?

私がリクルートに入った理由もシンプルです。将来は自分で事業をやると決めていたので、「社長と仕事ができる」かどうかで会社を選びました。

ろくに就職活動もしていなかった私ですが、就職情報誌で書かれていた「社長に営業できる仕事」という言葉にピンと来ました。そしてそれがリクルートだったのです。

実際、入社後は「リクルートブック」というリクナビの前身となる就職情報誌の営業担当だったのですが、徹底的に「社長アポ」しか取りませんでしたね。

 

ーー普通に考えれば人事部などに対して営業するイメージです。いきなり社長に会うことも難しそうですが。

私はとにかく「社長に会う」ことにしか興味が無かった。

なので、22歳の若造がいきなり会社にやってきて「社長を出してください」と言うわけです(笑)。当然ながらほとんどの会社は社長にいきなり会うことができませんが、とにかく徹底的に社長アポだけを取り続けると、時折会うことができる社長が出てきます。

そして実際に社長に会えると、私は本当にワクワクしながら「社長の夢はなんですか?」「社長はこの会社をどうしたいんですか?」と質問責めにします。全然リクルートブックの話をしてないですよね。

 

ーーたしかに。これもまた普通の営業発想とは異なりますね。

会社の経営者は、「夢はなんですか?」なんて普段は聞かれないですが、本心では何かしら想いをそれぞれ持っているものです。ですので、私に夢を聞かれると、みんな快く語ってくれるのです。私も興味があってどんどん質問するので、平均して2時間くらいはいつも夢について聞いていましたね。

そして、最後に「社長、その夢を共有できている社員さんはいらっしゃいますか?」「社長の夢を実現しませんか?」と聞くわけです。

そうすると決まって「何かいい方法があるのか?」と返してくる。そこでようやく商品のリクルートブックが登場するんです。「この本で、先ほど社長が私に語ってくれた夢を世間に向けて語りましょう」、と。

先ほど付加価値の創出はわらしべ長者だと言いましたが( 第1話リンク)、まさにこれもその一例ですね。営業時に一切商品を見せていないし、企画書すら見せていない。やったのは聞き役に徹し、「夢」を売ることだったのです。

 

社内ギネスを塗り替えた「新規・即決・大型」の流儀

ーー営業の本質がすべて詰まっているようなエピソードですね。一方で、話は面白がってくれても、現実的には財布の紐は固いという経営者が多かったのではないかと思います。

たしかに、社長に値段を聞かれて「いま言ったことを全てやるには1,000万円はくだりません」なんて言うと、決まって「そんな額は出せない」と言われます。

しかし、本気で商品に自信があれば、そこで引き下がるようなことはしません。

「1人採用するということは、生涯賃金にすれば2億3億の買い物です。そして会社の夢を背負ってくれるような人と、会社にぶら下がるような人、どちらを採用したとしても同じような給料を払わないといけない。それなのに、どうして1,000万円をケチるのですか?夢を実現すれば、この額はすぐに元がとれるでしょう?」と熱く伝えるわけです。

 

ーー商品を売りたいのではなく、本気で社長の夢をサポートしたいという熱意を伝えるわけですね。

そうは言っても高額商品ですから、たいがいの経営者は「わかった。君の言う通りだ。検討する。」と言うだけにとどまります。

ここで最後のひと押しです。

「社長、ちょっと待ってください。きっと今日寝たら私と話したことを忘れているでしょう。経営者なら、今ここで決断してください。」、と。

「決断できない経営者は成功しない」、というのは経営者ならみんなわかっていますから、「決断」という言葉は社長にとって急所なのです。そこを突くことで、「お前には負けた」と、ほとんどの社長がその場で申込書を書いてくれました。

社長に直接アポイントをとり、夢を語ってもらい、即決させる。この「新規・即決・大型受注」が私のリクルート時代の営業スタイルで、結果的に入社1年にして社内ギネスを塗り替える売上記録をつくりました。

 

ーー「夢」を売る。まさに、有本さんらしい営業スタイルです。

私が異動で別担当者に仕事を引き継ごうとしたら「私はリクルートブックを買ったわけではない、有本に夢を託したんだ」と、社長たちが口を揃えて言ってくださりました。

会社にとってはかなり扱いづらい営業マンだったと思いますが(笑)、リクルート時代に多くの経営者と会い、夢を語り合ったことが、私の経営者としての思想を形作っています。

 

 

>第3話「「わらしべ長者」たれ。創業期の起業家が真似るべき、0からの付加価値創出方法」に続く

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DIMENSION 編集長

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「人・事業・組織に向き合い、まっすぐな志が報われる社会を創る」をミッションに、真摯に経営に向き合う起業家に創業期から出資し、事業拡大・上場を支援する国内ベンチャーキャピタル。

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