日本を投資・転職・起業大国にしていく。佐々木紀彦CEOが語る『PIVOT』の今後の展望とは(第4話)

20代は知的筋力を育てよ

ーー変化の激しい時代において、個人として継続的に能力開発をすることは非常に重要だと思います。ビジネスパーソンとして能力を継続的に開発するために意識すべきことなどはあるでしょうか。

学びのための学びになってしまうケースが多いので、小さい成功体験を積むことが大事だと思います。

子供の行動を見ても、最初に嫌いになってしまうとやる気が出ないことが多いですよね。

例えば、水泳を嫌がる子供は多いと思いますが、「こんな風に泳げたら楽しいよ」という小さな成功体験を提供すると、「ああ、こんなことができるんだ!」と好きになり、どんどん上達する可能性が高くなります。

まずはさまざまなことを少しずつ経験し、「成功できそうだな」という手応えを得ることが重要です。また、少しでも成功した分野は自分に向いているかもしれません。

頑張って練習してから挑戦するのではなく、最初に小さな成功を掴む方が学びが楽しくなり、続けやすくなると思います。

また、若い人に対しては、知的筋力を育てることが重要だと私は考えています。

私が最初に書いた『米国製エリートは本当にすごいのか?』という本で述べていますが、アメリカの教育が一番よくできているのは、たくさんの読書、文章の執筆、プレゼンテーションを経験させることです。

18歳から大学院に至るまで、知の1000本ノックを受ける。この6年間や4年間で、脳の筋肉が変わるのです。

現代の急速な変化やAIの進化があっても、基礎となる筋力が身についていれば対応できます。さらに、基礎的な教養や知識があれば様々なことを吸収できる。

一方で、その基礎がないままAIを学ぼうとしても、根を張る知識にはなりません。「少し学んでもすぐに忘れてしまう」という状況になってしまいます。

ですから、まだ時間がある若い人は、例えば大学院に進むなど知的筋力を鍛えることに投資することをおすすめします。

その方が30代になった時、より強くなることができます。

目の前のハウツーに飛び込むよりも、知的筋力を高めるために「自分が何のために勉強しているのか」という問いを大切にしてください。自己探求のようなもので、「自分が何のために生きるのか」といった哲学について考えることも10代や20代から行っても十分良いと思います。

「自分が何のために勉強しているのか」「自分が何のために生きるのか」という2つの問いを持ち続けていると、自分の道に迷うことはありません。

しかし、日本はまだこの両方が弱いため、根無し草のような状態になってふわふわしてしまう人も多いですね。

 

ーー著書の中でも外資系出身者の優れたパフォーマンスに触れられていると思いますが、そのような環境で経験を積むことも一つの選択肢になるでしょうか。

もし興味がある分野やその分野で勝負したいという意志があるならば良いと思います。しかし、そこで頑張るためには、内から湧き出るような興味や願望がなければなりません。

私自身、就活時に失敗した経験があります。

最初は当時ブームだったという理由で外資系金融に行こうと思い、サマーインターンにも参加したりしていました。

アナリストの仕事だったのですが、一見かっこいいけれどエクセルや分析にほとんど時間を費やす仕事で、「これ自分に全く向いていないな」と感じ、辞退したのです。

その後、約3ヶ月間ロンドンなど旅行に行きながら読書をしたり、様々な経験をしたり、自分自身を見つめ直しました。

やはり本が好きだったので、数字だけでなく本のような世の中に残る知を深掘りする仕事をしたいと思いました。

一度競争のレールから降りて、フラットに自分の興味・願望を考え尽くしたことは自分にとって大きかったです。

 

ーー今回の起業の前も、そのような時間を作られたのでしょうか。

半年くらい探求する時間を持ちました。本を読んだり、調べ物をしたり、子育てをしたり。そこもまた良い思考の時間になりました。起業家に限らず転職する際にでも、一度頭を空っぽにして人生を考えたりする時間のような余白を持つことは重要です。

日本はレールが出来すぎていると感じます。中学受験があり、大学受験があり、就活があり、それからまた古い企業に就職すると年功序列がある。そのまま思考停止してしまって気付いたら30歳、40歳になっている人々も多いです。

どこかで意図的にレールから外れて、強制的に自分で考える時間を持たなければ、ベルトコンベヤーのように人生が進んでいきます。人生を盲目的に突き進んで競争に勝ったと思っても、それは枠にはめられた競争だったりします。

高校や大学、20代の時期に考え抜いてチャレンジをすることが大切です。その時期はリスクも少ないですからね。とりあえず安定した企業に入って、ワークライフバランスが良いところで何となく働くのが一番危険だと思います。

 

日本を 投資大国・転職大国・起業大国 にしていく

ーーそれでは最後に、今後の展望をお伺いできますか。

弊社は「日本をPIVOTする」をMISSIONとして掲げています。

すると「どうPIVOTするのか」「出口はどのような感じになるのか」とよく聞かれますが、今私が考えているのは3つです。

一つは日本を投資大国にしていくこと。

2000兆円日本にはお金がある中で、今海外の資産運用会社とかが入ってきている。人口が減っていく中で、このお金をどううまく使って豊かになるか。

ある程度上までいった国家がその後も繁栄を築くためには、お金の力を使うってすごく大事だと思うんですよね。大英帝国は金融業の発展により植民地を含めて繁栄し、アメリカも強国となりました。

日本も同様に資金を効果的に活用できれば、人口減少にもかかわらず豊かさを維持できると思います。

我々のコンテンツを通じて、多くの方々の投資リテラシーやマネーリテラシーを向上させることで貢献したいと考えています。

2つ目は日本を転職大国にすることです。
人の脳が活性化して新しい好奇心が湧いたり、本当のリスキリングの一番の方法は、転職だと思うんです。同じ会社にいても部署異動で緊張感が生まれて変化することもあるかもしれませんが、同じ会社に居続けるとどう考えても対応力は弱くなる。

私はよく転職しますねと言われますが、実際東洋経済で12年、NewsPicksで7年働いていました。それほど短かったわけではないですが、日本のカルチャーだとそう言われてしまうわけですね。
ですから、もっと適切な転職をして、しかもその転職がフィットするような転職ができる人が増えれば増えるほど、日本の人々のポテンシャルが向上すると思っています。
したがって、我々は転職に関する情報や知識を広めていこうと思っています。

3つ目は起業大国にしていくこと。
起業家を増やすってことだけじゃなく、社内起業という形で新規事業を興すようなことも含みます。

“キギョウ”って起こすだけじゃなく、企てる方の企業家、ドラッカーさんもいっているのですが、私もそっちの方が正しいなと思っていて。

政府や地方自治体、大企業、中小企業など、そこで企てる企業家の人たち。そういったマインドとスキルを持った人がどんどん増えれば、日本は変わり、より活力に満ちた明るい未来が実現できると思います。

投資、転職、起業を広めていく。これらのコンテンツを子供たちにも知ってもらえたら嬉しいです。そうすれば、日本の力がさらに高まると思います。

「自分に合った起業をせよ」

 

ーー投資と転職は実現度が高いように感じますが、起業は周りに起業家がいる方のほうがしやすい傾向があると思います。ご家族はサラリーマンだったかと思いますが、何か転機があったのですか。

ユーザベースにいて、梅田さんのような起業家と一緒に仕事をしていたり、取材を通じてさまざまな起業家と関わる機会がありました。身近に感じることができましたね。

もし東洋経済にいたら、起業家との関わりはもっと薄かったと思います。

でも、それが濃かったことで、自分がいつの間にかすごく影響を受けたと感じています。

起業家になってみて楽しいです。もう絶対こちらの方がいいですね、もう勤め人には戻れません。

 

ーーそれは起業しようというメッセージですか。笑

誰にでも起業しろというのはちょっと無責任かなと思っているので、起業に向いている人は起業しろと言いたいですね。

起業にもいろんな種類がありますので、リスクが少ないものもやっている人もいますし、社内起業もあります。「自分に合った起業しろ」ということですね。

大事なのは、武将力と冷酷力とセレーノ。それがあれば起業はできると思います。

でも、起業しなくても別に問題ありませんし、それはそれでいいです。ただ、起業の精神を持って組織の中で働く人が増えると嬉しいです。

 

 

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著者 伊藤紀行

著者 伊藤紀行

DIMENSION Business Producer:早稲田大学政治経済学部卒業、グロービス経営大学院経営学修士課程(MBA, 英語)修了。 株式会社ドリームインキュベータからDIMENSIONファンドMBOに参画、国内のスタートアップへの投資・分析、上場に向けた経営支援等に従事。主な出資支援先はカバー、スローガン、BABY JOB、バイオフィリア、RiceWine、SISI、400F、グローバ、Brandit、他 全十数社。 ビジネススクールにて、「ベンチャー戦略プラン二ング」「ビジネス・アナリティクス」等も担当。 著書に、「スタートアップ―起業の実践論 ~ベンチャーキャピタリストが紐解く 成功の原則」

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