ビジネス映像メディア『PIVOT』佐々木紀彦CEOの「起業家に重要な素養」とは(第1話)

武将力・冷酷力・”セレーノ”

ーー佐々木CEOにとって、起業家として重要な素養とは何でしょうか。

1つ目は戦国武将力。

遅ればせながらキングダムを見ていて、起業家には「何かを切り開いていく武将のような力」が必要だと思いました。

たとえば、単に優れたマネジメントスキルや軍師としての力だけでは経営者としてやっていけません。特に起業の場合は、前線で戦う武力がなければ厳しいです。

佐々木 紀彦/1979年生まれ
慶應義塾大学卒業、スタンフォード大学大学院で修士号取得。東洋経済新報社で自動車、IT業界などを担当した後、2012年「東洋経済オンライン」編集長に就任。2014年株式会社ユーザベース「NewsPicks」編集長 執行役員に就任、2018年NewsPicks Studios CEOを経て、2021年6月にPIVOT株式会社を創業。現在に至る。

 

ーー武力というのは突破力のようなものですか。

そうですね、ある分野での突出した力だと思います。起業家にはある領域での圧倒的な専門知識や力がないといけない。
私自身、今の年齢になってからの起業は遅いかもしれないと思っていましたが、それはそれで良かったと思います。なぜなら、メディアの領域やコンテンツの作り方などの分野で、他の誰にも負けないほどの武将力、つまり戦う力を身に付けてきたからです。
時にはプレーヤーとして行動し、時には引いて他の人に助けを求めたり、多くの人を巻き込んで進んでいく。両方できるプレーが必要だと思います。

成功している日本の起業家や大きな成果を上げた人々を見ると、例えば三木谷さんの先祖が本多忠勝だったり、ユニクロの柳井さんやサイバーエージェントの藤田さんもプレーヤーとしても活躍していますよね。
プレーヤーばかりになりすぎると組織は大きくなれないと思いますが、プレーヤーとしての力とマネージャーとしての力、両方の武将としての力がないと、大きく成長することは難しいのではないかと思います。

一般的にはエンパワメントを高めるべきみたいな話があると思うんですが、そうではなくて
一定のところまでは特にスタートアップは起業家自らが前線に立つ。早すぎる段階でプレーヤー的な立場を離れると、大きくなることは難しいですから。

 

2つ目は冷酷力。広範な意味でのピボット力とも言えます。

事業のピボットだけでなく、チームや組織もフェーズに応じてしっかりと変化していくことが重要です。
日本は義理人情という考え方が人気ですよね。もちろん義理人情も大事ですしそれが欠けると問題ですが、逆に強すぎると変革ができません。成功を収めているチームですら、常に変化し続けていますから。私がそういったヒントを得たのは海外のサッカーでした。
例えば、最近三冠を達成したマンチェスター・シティFCというチームの監督であるグアルディオラは、優勝した後にそこで活躍した選手を移籍させることがあります。
毎年、チームの1〜2割が徐々に変わっていきますし、彼の使う戦術も前年の成功を基に微調整して変化させている。
常にアップデートを続けながら、新しい血を入れていく手法は絶妙で、自分の方針に逆らう人は容赦なく移籍させるのです。それがすごい。
過去に囚われず、その時々の最適解を追求する力が大切です。たとえそれが少し嫌われることでも、やっていく姿勢を持つ。

日本では、政治、企業経営、社会においても、このような力が不足していると感じます。だらだらと同じやり方を続けてきた結果が今に繋がってしまっている。

ですから、無理にやり過ぎるのは良くありませんが、冷酷さを上手く出していく必要があります。全員が満足する調整なんてしていたら、立ち行かなくなってしまいますからね。

 

ーー冷酷さと優しさのバランスはどうとられているのでしょうか。

冷酷さをいきなり発揮しないことだと思います。

判断は冷酷でもその過程はあまり冷酷にせずに丁寧に行うとか、そこのバランスかなと思いますね。

そして勝つこともポイント。勝っておけば冷酷な判断も後々正当化される部分もありますから。

「あの時あの方を傷つけてしまったかもしれないけど、結局それはその方にとっても組織にとっても良かった」という風に、後々になって和らげることができる。

これは結果が全てを許すということだと思うんです。また、短期と中長期で結果は異なると思いますので、結果がすぐに出るかは分かりませんが、嫌われてでもやるという力が必要だと思います。

 

ーーそれでは、戦国武将力、冷酷力と来て最後のピースはどのようなものになるのでしょうか。

それは「セレーノ」です。

塩野七生さんのエッセイで、成功する人の条件としてイタリア語で「SERENO(セレーノ)」という言葉が出てくるんですけど、これはどういう意味かというと「澄みきった空」みたいな明るさを指す言葉なんですね。

戦国武将的でちょっと冷酷なところもあって、その人が暗かったりしたら単なる陰険な人になってしまう。

厳しいところもあったり激しいところもあるんだけど、基本的には明るい人で、一緒にいると何か良いことがありそうみたいな、この3つ目があるからこそ1つ目と2つ目が中和されると思っています。

セレーノは船着場によって高まる

彼女は様々な歴史の人物を調べた結果、現在成功しているリーダーにはセレーノがあると結論付けています。

先天的な要素と育ちによる要素が強いかもしれませんね。私自身も元々ある程度備わっていましたが、徐々に高まっているように感じます。

 

ーー“高めて”いるのではなくて“高まって”いるのですか?

そうですね、努力によって高めるものじゃない。

環境や様々な要素によって育まれていくものだと思います。

その要素としては起業はあまり関係無くて、例えばシリコンバレーやカリフォルニアのような天気の良い場所はセレーノのような雰囲気があるように、周りにセレーノがある人が多ければ高まりやすいです。

他には家族との関係や親からの愛情など、基本的には愛情に満ちた環境であればセレーノになりやすいでしょうね。家庭が明るければ明るい人になることがほとんど。

私自身も家族から愛情をたくさん受け取ったと思いますし、船着場のようなしっかりとした基盤があるのは大事な要素ですよね。言い換えると、どのような環境に自分の身を置くか、ということです。

戦国武将のような力や冷徹さも持ちながら、最後にはセレーノもあることが起業家の素養だと思います。

 

 

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著者 伊藤紀行

著者 伊藤紀行

DIMENSION Business Producer:早稲田大学政治経済学部卒業、グロービス経営大学院経営学修士課程(MBA, 英語)修了。 株式会社ドリームインキュベータからDIMENSIONファンドMBOに参画、国内のスタートアップへの投資・分析、上場に向けた経営支援等に従事。主な出資支援先はカバー、スローガン、BABY JOB、バイオフィリア、RiceWine、SISI、400F、グローバ、Brandit、他 全十数社。 ビジネススクールにて、「ベンチャー戦略プラン二ング」「ビジネス・アナリティクス」等も担当。 著書に、「スタートアップ―起業の実践論 ~ベンチャーキャピタリストが紐解く 成功の原則」

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