「愛」深く、「志」高く、「器」大きく リンクアンドモチベーション 麻野耕司取締役(第1話)

企業組織の変革を支援するコンサルティング会社「リンクアンドモチベーション」。組織改善クラウド「モチベーションクラウド」の立ち上げなどで、スタートアップ界でも大きな存在感を放っているのが、同社取締役の麻野耕司氏だ。2019年4月に発売された著書「THE TEAM〜5つの法則〜」(幻冬社)は発売2週で5万部突破のヒットを記録している。そんな同氏が語る、成功する経営者の素養、成長する組織・事業の生み出し方とは。(全5話)※本記事は2019年4月18日に実施したインタビュー内容を基に作成しております。

苦境で磨かれた経営者としての素養

ーー麻野さんが考える、優れた経営者の素養を3つ挙げるとすると何でしょうか?

私が考える経営者にとって重要な素養は「愛」、「志」、「器」の3つです。経営者の「愛」の深さと「志」の高さ、そして「器」の大きさが最終的な事業の大きさや組織の強さを決めます。

新規事業やスタートアップ投資をやっている割には古風と思われるかもしれませんが、私が尊敬する経営者は稲盛和夫さんや本田宗一郎さん。彼らも同様のことを言っているので、綺麗事ではなく素でこれらの素養が大切だと信じています。

 

麻野耕司◎モチベーションエンジニア。リンクアンドモチベーション取締役、オープンワーク取締役副社長。1979年兵庫県生まれ。2003年、慶應義塾大学法学部卒業。株式会社リンクアンドモチベーション入社。2010年、中小ベンチャー企業向け組織人事コンサルティング部門の執行役員に当時最年少で着任。気鋭のコンサルタントとして、名だたる成長企業の組織変革を手掛ける。2013年、成長ベンチャー企業向け投資事業立ち上げ。全く新しい投資スタイルで複数の投資先を上場に導く。2016年、国内初の組織改善クラウド「モチベーションクラウド」立ち上げ。国内HRTechの牽引役として注目を集める。2018年、同社取締役に着任。同年株式会社オープンワーク取締役副社長を兼任。国内最大級の社員クチコミサイト「Vorkers」を展開。著書に「THE TEAM 〜 5つの法則 〜」 (NewsPicksBook)

 

ーー「志」「愛」「器」が大切だと思われたきっかけは何かあったのでしょうか?

私はもともとはそういった抽象的な概念は好きではありませんでした。どちらかというと「戦略」や「戦術」といった具体的なことが好きで、リンクアンドモチベーションの中でも管理部門で全社戦略を作っていました。

考えが変わったきっかけは、業績も組織もボロボロになったリーマンショックの頃の体験です。

弊社は2000年の創業以来、2008年に東証一部上場するまでは増収増益の右肩成長を続けていて、会社の雰囲気も良く、社外からも高い評価をいただいていました。しかしリーマンショックで一転、2009年から減収減益に転じると、手のひらを返したように周りの人たちが弊社の批判をし始めたのです。

私は当時、社長室でIRや全社管理などを担当していたので、投資家だけでなく社員までもが会社や経営陣の悪口を言う状況を身をもって体感しました。

そんな最悪の状況下で、事業立て直しのために中小ベンチャー企業向け組織人事コンサルティング部門を任されたのが2010年のこと。正しい戦略さえ持ち込めば状況は好転すると考えていた私の考えは、そこで打ち砕かれます。

着任して2年間経っても業績は落ち続け、当初は15名ほどいたメンバーも退職者が相次いで5名まで減ってしまいました。当時はあまりに結果が出ないことが申し訳なくて、責任をとって会社を辞めようと本気で考えるほど追い込まれていましたね。

「愛」で組織が変わった

ーーそんな崖っぷちの状況から、どのように立ち直られたのでしょうか。

部下からのとある一言が、私を変えるきっかけとなりました。

「麻野さんはクライアントの経営者には『組織はこうすべき』とセオリーに基づいてアドバイスしているのに、自分のチームに対して全然実践していないですよね。」

恥ずかしながら、彼が言った通りでした。当時の私は戦略や売上・利益といったことを語るばかりで、部下の話に耳を傾けることもなかった。だからこそ、どれだけこちらが語りかけても誰も聞いてくれないし、成果も上がらない負のスパイラルに陥っていたのです。

そこでようやく気づいたのが、「自分が相手を大切にしていないから、自分の考えていることも大切にされない」ということ。

相手を本当に理解して共感することを「愛」と私は呼んでいますが、まず「愛」を持った上で何かを語りかけること。それを実践すると、徐々に話を聞いてもらえるようになったのです。

 

ーー「愛」が組織を一つにしたのですね。

加えて、自分が何をしたくてこの会社に入ったのか立ち返って考えてみると、売上や利益の前に、組織を通じて人々を幸せにしたいという「志」があったから入社したのだと思い直しました。それはメンバーも同様で、みんな社会を変えたいとか、誰かを救いたいという思いで入社してくれている。

そうやって「志」に立ち返って事業や組織を考え直すと、次第にメンバーも付いてきてくれるようになっただけでなく、サービスも飛躍的に進化していきました。

そして、事業や組織をどれだけ大きくしていけるかは、どこまでの範囲の人を自分の手で本気で幸せにしようと思えるか、すなわち「器」の大きさで決まります。

「愛」の深さが人を動かし、「志」の高さが商品や事業を生み出し、「器」の大きさで事業や組織が拡大していく。この3軸の大きさが、経営者が成し遂げられることの大きさだと信じています。

 

 

>第2話「ヒット作『THE TEAM 〜5つの法則〜』誕生秘話」に続く

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著者 伊藤紀行

著者 伊藤紀行

DIMENSION Business Producer:早稲田大学政治経済学部卒業、グロービス経営大学院経営学修士課程(MBA, 英語)修了。 株式会社ドリームインキュベータからDIMENSIONファンドMBOに参画、国内のスタートアップへの投資・分析、上場に向けた経営支援等に従事。主な出資支援先はカバー、スローガン、BABY JOB、バイオフィリア、RiceWine、SISI、400F、グローバ、Brandit、他 全十数社。 ビジネススクールにて、「ベンチャー戦略プラン二ング」「ビジネス・アナリティクス」等も担当。 著書に、「スタートアップ―起業の実践論 ~ベンチャーキャピタリストが紐解く 成功の原則」

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