戦場とルールを規定せよ『PIVOT』佐々木紀彦CEOの組織づくりの極意(第3話)

資金調達は“未来のワクワクと足元の説得力のバランス”で決まる

ーー資金調達を成功させるために大切なことは何でしょうか。

初期は経営チームを含む人によってほぼ100%決まります。

もちろん事業内容も非常に重要ですが、優秀な人材であれば事業の中身もどんどんピボットして良いものを作っていけるため、人が9割というのがシードラウンドですね。

しかし、シリーズAに進むと投資家の視点は9割が事業のポテンシャルがあるかどうかに移ります。ステージによって、重視される要素が全く異なります。

人の判断は、実績です。そして実績とは、中高時代の話から全て含まれると思っています。

それはどの大学を出てるかという話ではなくて、学校で何を学び、どういうことを考えてきたか。学歴ではなく「学習歴」と言った方がいいかもしれない。

また、大手の会社にもし入っていたとして、そこの部署でどんな事業をどのように手掛けていたか。そういったことを実績は全て含みます。

その実績を見て「この人がやるなら成功できそうだ」と思ってもらえれば、資金を出してくる可能性は十分あります。

ですので、自分が取り組もうとしている分野で、いま目の前の仕事や勉強で成果を出すことに集中することは非常に重要です。その実績が必ず起業時に役に立つと思います。

 

ーーシリーズA以降の資金調達において意識すべきポイントは何でしょうか。

シードの段階ではまだ実績がないため、未来のワクワク感と人が主要な要素ですが、シリーズAに進むと成長性や足元の数字が重要になります。足元の数字が伸び続けていることが、今後の戦略や成長の説得力に繋がります。

逆に言えば、足元の数カ月でぐんぐん伸びる数字が出せていないとダメということです。我々もシリーズAの資金調達まで長く時間を要しましたが、結果としてその9ヶ月の間にかなり成長できたので、戦略の説得力が増しました。

投資家向けによく見せる工夫をするより、事業の強さで勝負する意識が大事です。

 

組織作りは「先回りしない」

ーー組織のマネジメントにおいて、大事にされていることなどはあるでしょうか。

起業して「先回りして課題に対応する組織作りをすべきではない」ということを学びました。

一番大きかったのは最初からダイバーシティに気を遣いすぎたことです。例えば、女性比率についてもかなり気にしていました。

一般的にもよく言われていますし、最初にそれを考慮しないと後から修正するのが難しいと言われていましたので創業初期から意識していたのです。

しかし今思うと、ダイバーシティという概念の解像度が低かったと思っています。

ダイバーシティには年齢や性別や国籍だけでなく「どういう企業で育ってきたか」といったカルチャーの違いなど、さまざまな要素があります。そしてどちらかというとダイバーシティはある程度成長した企業がさらに伸びるために重要な要素だと思うのです。

理想論を先回りして考えすぎて、誰から見ても良い形にしようとしすぎたことが逆に良くなかった。

今でも気にしていないわけではありませんが、スタートアップの初期段階において一番重要なことではありません。まだPMFも達成できていないのに、組織の理想論やきれいごとに囚われすぎたことが最大の反省です。

 

ーー具体的に言うと採用面での反省ということでしょうか。

スキルフィットの見方が甘かったなと思っています。要は、組織が100人以上くらい大きくなった時に活きるスキルを持っている方を多く初期から採用していました。 

でも実際100人になるまでにはかなり時間がかかります。その過程でその方のスキルを活かせなかったら、その方も不満ですよね。

最初は数人の組織フェーズに合う人を採用して、その中で後のフェーズにも適応できる人が残っていくという考え方をしなければいけなかったのですが、将来の理想の組織から逆算して組織を考えすぎていました。

ある意味、「創業初期としてはスキルが高度すぎる人」を集めすぎてしまった。そのスキルフィットの見極めが甘かったと反省しています。

 

ーー創業初期に合う人というのは、どのような人なのでしょうか。

理想は、大企業で経験を積みつつも、スタートアップでも一定期間働いた経験がある方。大企業とスタートアップ、両方に精通した両利きのキャリアを持った方です。

実際に、我々は大企業の経験者を意図的に多く採用しています。なぜなら、スタートアップの経験だけでは、組織がどのように動くか分からず、成長に伴って合わなくなってしまうと感じているからです。

そういった方を採用するために頑張ったのは、最初から年収を高めにするということです。

スタートアップの場合、低い給与から始めて徐々に上げていくというケースが多いですが、私は給料はある程度高いところから始めてさらに上げていく方が中長期的に成功しやすいと思っています。

特に映像業界は給料が高い傾向がありますので、業界によって変わる部分もあると思いますが、報酬をケチらないことが重要だと考えています。そのためにも、最初からちゃんと資金調達できるかどうかは非常に重要だと感じます。

 

強い意見を持つ社員には戦場とルールを規定する

ーー共同創業者に木野下COOがいらっしゃいますが、共同創業者選びのポイントは何でしょうか。

これはよく言われることですが、自分に無いものを持ち、能力的にも補完関係がある人です。

私はマネジメントよりもプレーヤーとして進んで背中を見せるタイプで、言葉の力で引っ張っていくことが得意です。

木野下さんは広告やマネタイズの分野が上手く、組織作りやチームで働くことを好むタイプです。

価値観は似てるけれどスキルセットが違う、これが一番やりやすいなと思っています。

私は集団で行動することがあまり好きではないので、組織を作るのは難しいです。しかし、彼はその部分を埋めてくれる。自分が苦手だと思う部分は意識的に早めに補完するべきだと思います。

 

ーー優秀だけれど強い意見を持った方を、トップダウンで押さえつける会社もあれば活かす会社もあるかと思います。貴社の場合、そこのバランスはどう取られているでしょうか。

自律性を持たせた上で、責任もしっかり問うようにしています。

強い意見を持った人はトップダウンで「こういう風にやりなさい」って言われるのが一番嫌いなタイプです。

そのため、トップダウンマネジメントをできるだけ避け、その人の企画や、やりたいようにできるだけ自由度を与えるようにしています。

自由度を与える代わりに成果を問う。それがないと、単に自由にやって終わりになってしまいますから。

なので確固たるKPI設計をしたうえで自律性を与えることが大切です。戦場とルールを規定してあげて、そこがうまく握れていれば、強い意見を持った人材を活かすことができると思います。 

 

 

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著者 伊藤紀行

著者 伊藤紀行

DIMENSION Business Producer:早稲田大学政治経済学部卒業、グロービス経営大学院経営学修士課程(MBA, 英語)修了。 株式会社ドリームインキュベータからDIMENSIONファンドMBOに参画、国内のスタートアップへの投資・分析、上場に向けた経営支援等に従事。主な出資支援先はカバー、スローガン、BABY JOB、バイオフィリア、RiceWine、SISI、400F、グローバ、Brandit、他 全十数社。 ビジネススクールにて、「ベンチャー戦略プラン二ング」「ビジネス・アナリティクス」等も担当。 著書に、「スタートアップ―起業の実践論 ~ベンチャーキャピタリストが紐解く 成功の原則」

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