会社の成長ステージごとに異なる人材採用のポイント WAmazing 加藤史子CEO(第4話)

"日本中を楽しみ尽くす、Amazingな人生に" のビジョンのもと、訪日外国人旅行者向けサービス「WAmazing」を提供するWAmazing株式会社。空港で無料のSIMカードを貸与する斬新なビジネスモデルで注目を集め、端末機の設置は国内20空港を突破した。急成長を続ける同社の代表取締役CEOの加藤史子氏に、起業家の素養や事業立ち上げのポイントなどについて聞いた。(全6話)

創業メンバーはあえて口説かず「覚悟」を問う

――創業期の仲間集めについてお聞かせください。加藤さんはどのように創業メンバーを集めていかれましたか?

創業メンバーは前職のリクルート時代に少なくとも2年くらいは一緒に働いたことのあるメンバーが数名参加してくれました。

というのも、私の前職のリクルートは、社員の多くが採用に関わるので、私もたくさん採用面接をやっていましたが、とにかく面接で人を見極めることに苦手意識を持っていました。みんな良い人材に見えてしまうので、結局は、人は一緒に働いてみないとわからない、と思っていたんです。

なので、私自身が一緒に働いたことがあって自分と違う魅力を持っていて尊敬できる人に参加してもらいたいと思ってました。

 

――どのような軸で声をかける人を決められたのですか?

まずはビジョンフィットの部分で、地域のために、日本のために何かしたいという「志」を共有できる人。

あとは「利他的に考えられる人」。自分の利益はまず自分が他者に貢献するところから生まれてくると本質的に理解している人は、得意領域やスキルがなんであろうと良い仕事をします。

創業メンバーはキャラクターもスタイルもバラバラで、ぶつかることも少なくありませんが、一緒に働いていてお互いを尊敬し合うことができるメンバーが集まっています。

 

――とはいえ、そういったメンバーを口説くのは大変だったのではないでしょうか?

私はあえて「口説く」ということを創業メンバーに対してはやりませんでした。共同創業者でありシェアホルダーだからこそ、「私に強く言われたから決めた」という意思決定をさせたくなかったんです。

起業も、スタートアップのその後の道のりも、決して楽な道ではありません。しんどい時もふんばる礎として最後は自分で決めたという覚悟が絶対に必要です。

どれだけ欲しい人材だったとしても、決断をあえて本人に委ねるように意識しましたし、もしそれで来てくれなかったとしても仕方ないと割り切っていました。

一方で、今こうして会社が成長しているフェーズでは、幹部候補人材は徹底的に口説いています。一緒に船を漕ぎ出す共同創業メンバーと、動いている船をさらに加速させる幹部では、相手に求める覚悟は変わってくるものだと思います。

シニア人材採用時に気をつけるべき意外なポイントとは

――リクルート出身ではないCTOの舘野さん(元クックパッド株式会社CTO)に関しては、どのように声をかけられたのでしょうか?

リクルート内には自らコードを書くエンジニアが少ないので、エンジニアだけは絶対にリクルート以外から探してこないといけないと最初から考えていました。なので、舘野に関しては元リクルートの面々とは違い、一生懸命口説きました。

 

――舘野さんのようなエース人材を口説くことができた理由はどこにあったのでしょうか?

ある程度のシニア人材を採用するには「自分が入ることで事業がどうレバレッジするか」を理解してもらうことが重要です。

舘野のWAmazingに対する第一印象は、「この人たちプラットフォーム作ると言ってるけど、エンジニア一人もいなくて大丈夫なのかな?」だったそうです。(笑)でも、その「大丈夫かな?」が最大のリクルーティングだったと感じています。

逆に舘野がCTOとして入ってエンジニアチームが組成された後に、何人かリードエンジニアクラスの人たちを口説いたのですが、「舘野さんがいるから、自分がいなくても大丈夫だろう」と思われたのか、なかなか口説くことができませんでした。

 

――相手が入ってくれることでどういう成長が見込めるかを明示することが重要なのですね。

これは、シニア人材の採用のみならず、資金調達においても同様です。

「あなたが株主になったら、こうレバレッジがかかって成長できます」と具体的に言えるかどうかで、投資家の反応は全然変わってきます。

「自分が入ることで事業がどうレバレッジするか」を明示すること。あまり着飾らず、素直に自分たちの不足箇所を見せるほうが、相手の熱量は上がると思います。

即戦力が欲しい時こそ「急がば回れ」

――次に、現在の採用について意識されていることをお聞かせください。

人事はとてもプロフェッショナルな仕事です。なぜなら、心の底から人や組織に向き合い続けることができる「人間愛」を持つような人でないと、真の意味で人事という仕事は務まらないからです。

現在の採用活動は、小島という人事のキャリアを持つメンバーを総責任者として、彼にかなり任せる形をとっています。当然ながら創業者である私の意見は伝えますし、常にすり合わせはしていますが、彼のポリシーを尊重することで安定した採用活動ができるようになりました。

なので、まずは人事にプロフェッショナルな人材を配置できるかどうかが、ベンチャーの採用においては鍵になると思います。

 

――小島さんが入る前と後とでは、なにか採用方針に明確な変化があったのでしょうか?

以前は即戦力が欲しいという焦りからスキルを重視した採用をしてしまい、ときおりミスマッチングが発生していました。立ち上げ初期のベンチャーは、特定のポジションに対して人材を採用したとしても、求められる業務範囲は刻々と変化してしまうものです。

今はスキルよりもカルチャーフィットを重視していて、おかげで人材の定着率もかなり安定しました。振り返ると採用に関しては「急がば回れ」だったなと感じています。

 

 

>第5話「徹底的な他者研究から生まれる事業成長の方程式」に続く

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DIMENSION 編集長

DIMENSION 編集長

「人・事業・組織に向き合い、まっすぐな志が報われる社会を創る」をミッションに、真摯に経営に向き合う起業家に創業期から出資し、事業拡大・上場を支援する国内ベンチャーキャピタル。

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