訪日外国人向け事業を通して「日本に恩返し」したい WAmazing 加藤史子CEO(第3話)

"日本中を楽しみ尽くす、Amazingな人生に" のビジョンのもと、訪日外国人旅行者向けサービス「WAmazing」を提供するWAmazing株式会社。空港で無料のSIMカードを貸与する斬新なビジネスモデルで注目を集め、端末機の設置は国内20空港を突破した。急成長を続ける同社の代表取締役CEOの加藤史子氏に、起業家の素養や事業立ち上げのポイントなどについて聞いた。(全6話)

観光産業を通して「日本に恩返し」したい

――加藤さんが訪日旅行客向けサービスで起業しようと思われたきっかけをお聞かせください。

まず「観光産業で地域活性に貢献する」というテーマは、前職のリクルート時代から携わってきたテーマです。

このテーマに私が取り組む理由の1つは「日本への恩返し」。

私は日本でずっと暮らしてきましたし、母が専業主婦で父は公務員。中学高校も公立に通ってきたので、いわば税金に育ててもらったようなものです。また、子供も二人いますが、これから子供たちの世代になっても、この国がいい国であって欲しいし、それに貢献できたらいいなというのが、仕事をする気持ちのベースにあります。

たとえどれだけビジネスモデルが変化しようとも、観光産業はぜったいに空洞化しません。自動車など製造業は海外でつくることができますが、日本の観光を日本以外ですることはできないからです。確実に「日本への恩返し」ができる仕事だと思って取り組んでいます。

このテーマに取り組む2つ目の理由は観光産業が「平和産業」であるからです。仮に国家同士に軋轢や政治的緊張関係があったとしても、個人で旅行に来る人とは平和な関係を構築できるのが観光の良いところです。

インターネットの出現により、国家や企業が強かった20世紀型の社会から、個人が力を持ち、自由につながれる21世紀型の社会へと変化していきました。そして観光産業には、そういった個人同士がネット内だけに閉じずに、リアルな場を通してつながれる暖かさと平和さがあります。

この魅力にどっぷりハマって、観光産業とインターネットを掛け合わせた事業をライフワークにしたいと思うようになりました。

 

 

――とはいえ、リクルートに残ってチャレンジする選択肢もあったのではないでしょうか?

おっしゃる通り、リクルートでも観光産業と地域活性を掛け合わせるような部署で仕事をしていました。

しかしながら、インバウンド市場は伸び盛りとはいえ、日本人による国内旅行市場が20兆円あるのに対し、かたやまだ4兆円強の市場。どうしても他のもっと大きな市場に人材もお金も優先的に割り振られていくのが当然です。

近年のベンチャー企業への投資資金が増加する流れを見て「これは大企業という乗り物からベンチャーという乗り物に変えた方が目指す場所に早く近づけるのでは」と思ったのが起業に至ったきっかけです。

今でもリクルートは大好きな会社ですが、私はこの「観光産業×地域活性」というテーマで仕事ができ目指す場所に到達できればきれば手段である乗り物は何でも良くて、結果的に起業という選択肢が最善だと思い選択しました。

 

事業の本質を見抜き、自分の業界に当てはめる

――WAmazingのビジネスモデルを着想された経緯についてもお聞かせください。

これも先ほどお話しした(第2話リンク)「事業の本質を抽象化して、自分の対峙している業界に当てはめて具象化する」というパターンで着想しました。

訪日外国人旅行客の日本旅行中に不便を感じているものの1つが「ネット通信環境」だというのが観光庁の調査からわかっていました。そしてちょうどその時、通信業界を俯瞰してみると新たな事業カテゴリーとして「MVNO事業」が盛り上がっていることを知りました。

しかし「MVNO事業」がなぜ盛り上がっているかの本質がわからなかったので、セミナーに行ったりして勉強し、腹落ちしたのが「電波は有限資源だから、やみくもに大元の通信事業者(MNO)を増やすことはできないが、消費者のために適切な競争環境と多様なサービス提供が必要だから、MVNO事業が求められているということでした。通信回線をMNOから借り受けて独自のサービスを付加し、消費者に価値を提供する」というのがMVNO事業の本質だということならば通信回線を借り受けて、どんなサービスに転換してもいいんだと思ったんです。

そこで、海外の先行事例を調べてみたら、ヨーロッパで移民労働者向けのMVNO事業が存在していることを知りました。移民労働者向けに格安で母国の人と通話できる通信環境を提供することでユーザーを囲い込み、彼らの仕事斡旋や不動産斡旋でマネタイズするというビジネスモデルです。

このビジネスモデルから着想を得て、訪日外国人にSIMを無料で配り、そこから旅行に付随する様々な場面のサービスを提供していくWAmazingの事業を組み立てました。

 

 

>第4話「会社の成長ステージごとに異なる人材採用のポイント」に続く

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DIMENSION 編集長

DIMENSION 編集長

「人・事業・組織に向き合い、まっすぐな志が報われる社会を創る」をミッションに、真摯に経営に向き合う起業家に創業期から出資し、事業拡大・上場を支援する国内ベンチャーキャピタル。

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