「わらしべ長者」たれ。創業期の起業家が真似るべき、0からの付加価値創出方法 MS-Japan 有本隆浩社長(第3話)

「社会経済の混乱」を体感し、覚悟を決めた

ーーリクルートを経て28歳で株式会社日本MSセンター(現社名:株式会社MS-Japan)を起業されました。起業の経緯をお聞かせください。

私は何をするか決めずにリクルートを辞めたのですが、退職直後に起こったリクルート事件を皮切りに、経済の裏社会が次々と明るみになり、時代は混乱期に突入していきました。

例えば、リクルート退職後に知人の誘いでとある不動産会社に入社したのですが、入社初日に遭遇したのは国税の強制捜査。本当に映画で見るような現場で、混沌とした社会を身を以て目の当たりにしたのです。

自分の身の回りに起こる事件の数々を見て痛感したのは、「まさに社会が変わろうとしている瞬間」であるということ。この時代に生きているからには、自分が社会を良くするために立ち上がらなければならないと決心し、起業しました。

30年前に私が肌で感じたことを、言葉にしたのが当社の理念です。これは30年変わらず、今も掲げ続けています。

 

ーー創業事業はどのようなことをされたのでしょうか?

当時の「会計事務所の採用」には大きな無駄、つまりビジネスチャンスが存在していることに注目しました。

どういうことかと言うと、会計事務所というのは専門資格を有する人しか採用しない非常に特殊な採用マーケットで、かつ、士業なので人材の定着率も低い業界です。にも関わらず、当時の採用方法は新聞広告や一般就職雑誌といった、不特定多数に発行される媒体での告知しかありませんでした。

無駄な投資を費やして人材採用に苦労している会計事務所に対して、ピンポイントに採用したい人たちへリーチできる方法を提供すればビジネスになると感じたのです。

 

ーー具体的にはどのようなことから始めたのでしょう?

会計事務所が採用したいような人材がどこに一番いるかというと、大手会計専門学校です。ですので、私は大手会計専門学校に提案し、共同で会計事務所の人材支援事業を立ち上げました。

具体的には、会計事務所専門の求人情報誌を発行し、専門学生に配布するというビジネスなのですが、最初は出版物の原稿作成や印刷をする資金がありません。

ここからまた私の「わらしべ長者」が始まります。

 

創業1年目から超高収益事業を生む

ーー今の時代だと資金調達を行なった軍資金で、事業をスタートする起業家も多いです。しかし有本さんはそこで知恵を絞り工夫されたのですね。

どうやったら「お金を先出しせずに情報誌を発行できるか」を考えました。そしてまず思いついたのが「年間会員」サービスです。

具体的には、情報誌への広告掲載だけを売り込むのではなく、合格者名簿作成やアドバイスも含めた年間トータルの採用支援パッケージを売り込みました。そうすると会員料という名目で先に入金してもらえますよね。

創業当時に販売していた年間会員費が75万円。1/3の分割払いプランも用意していましたので、申し込み時に最低25万円は入金してもらえます。この事業を1年目にして、76社に売りました。

 

ーーそれだけで売上数千万円となる計算ですね。何もないところから収益を生み出す、まさにわらしべ長者です。

私の工夫はさらに続きます。今度はいかに情報誌発行費の負担を減らすかを考えました。

提携先の大手会計専門学校が、普段から学内や試験場で配る広報誌として発行している雑誌を、私が「1ページ1万円で買います」と提案しました。学校にとっては、本来収入ゼロの誌面が何十万円かの価値になるのですから、それだけで大満足です。

原稿のレイアウトなどは、テーマ選定から写真の配置まで、全て私が1人で作りました。ですので、原稿制作料はほぼコストゼロです。

税理士試験後と合格発表後の年2回、就職相談イベントを開催した際も同様で、場所や機材は学校の講堂を借りることでコストゼロ。ブースを区切る用のついたてだけレンタルし、出展料として150,000円を各社から頂戴しました。

「最小経費で最大利益を生む」ことを徹底し、気づけば創業1年目、私1人で8,000万円以上の売上、粗利益率85%以上の高収益事業となりました。

 

爪楊枝1本でも価値に変える「経営の3原則」

ーー経営の3原則としておっしゃった( 第1話リンク)、「最小経費で最大利益を生む」有本さんの経営者としての真価を見た気がします。

それでいうと、残りの原則である「値決めは経営」「付加価値の創出」も創業期から実践しています。

まずこの事業のお客様である会計事務所の先生方からは、ものすごく感謝されていました。なぜなら、今までに比べて格段に採用力が向上したからです。年会費やイベント出展料に対して、圧倒的な「付加価値を創出」していたのです。

さらに「値決めは経営」なので、次年度からは付加価値に応じて値段を上げていきました。創業から1年後には、75万円だった年会費を100万円に上げています。それでも付加価値が紐づいているから、どんどんと売れていきました。

私はたとえ「爪楊枝1本」からだろうが、自分の身一つで必ず付加価値を創出して売る自信があります。「経営の3原則」を守り、何も無いところから付加価値を創造し、営業力を武器に売っていく。これが創業期から今も変わらぬ私の経営スタイルです。

 

 

>第4話「「逆境をビジネスチャンスに変える!時代の潮流を捉え、事業を創造せよ」に続く

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DIMENSION 編集長

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「人・事業・組織に向き合い、まっすぐな志が報われる社会を創る」をミッションに、真摯に経営に向き合う起業家に創業期から出資し、事業拡大・上場を支援する国内ベンチャーキャピタル。

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