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ベンチャー経営者が常に頭を悩ませる「採用」。昨今の売り手市場で適切な人材を見つけ、仲間にしていくのは簡単なことではない。そんな中、経営者は採用にどう向き合い、何をすべきなのか。そのヒントを探るべく、ベンチャー人事に長年携わり深い見識を持つキープレイヤーズ高野氏(写真右)、働き方ファーム石倉氏(写真左)の2人にベンチャー採用のあるべき姿を聞いた。(全4回)
エンジニア特有の「壁」を崩す
――続いて、採用の中でもネット系ベンチャー企業の課題として挙がりやすいエンジニア採用についてお伺いしたいと思います。エンジニア採用で留意すべき点は何でしょうか?
石倉:まずエンジニア職の人材で独特なのは、「自分のことを分かってくれないな」と感じると心を開いてくれなくなる方が多いことですね。
営業職の人だと、自分のことを理解してもらえるまで努力してコミュニケーションし続けるんですけど、エンジニアは「分かってくれないならもう大丈夫です」となりがちです。そういう人材特性を理解したうえで採用活動をすることが重要です。
にもかかわらず、採用する側がエンジニアのことを分かろうとする努力をしていない場合がすごく多いように感じます。非エンジニアの採用担当者でも努力次第で心を開いてもらうことは可能で、技術に精通している必要はありません。自分が当たり前だと思っている用語が通じる、大事にしているものが共有できる、というレベルで十分なんです。
高野:用語を理解してあげられるかどうか、というのはエンジニア採用においては大事ですよね。なので、社長やCTOの技術力が高い会社は問題なくエンジニアを採れている印象があります。
石倉:そうですね。そういう会社はむしろビジネスサイドの採用に困るパターンが多いと感じます。やはり、社長の得意不得意に応じて、採用の得意不得意も変わってきますね。
最初からフルコミットしてもらう必要はない
高野:社長が非エンジニアなのにエンジニア採用を上手く行なった例として、ビズリーチの南さんは凄いと思いますね。創業当時、別の会社を起業していた竹内さん(後にCTO)にサービス立ち上げを一部手伝ってもらったところから、最終的に採用にこぎつけています。自分で会社をやっている人はジョインしてくれないと思ってしまいがちですが、そこを超えたというのは凄い。
石倉:それは南さんの作戦勝ちですね(笑)。
高野:竹内さんも最初から全リソースを割いていたわけじゃないはずで、事業の伸びに合わせて、「ビズリーチは面白い」と気持ちが変化していったのだと思います。そうやって関係を少しでも築いておけば、事業が伸びたり資金を調達した段階でフルコミットに舵を切ってもらうこともできます。
石倉:一旦接点を持って少しずつ一緒に仕事をして面白いと思ってもらうというのは、ことエンジニア採用では有効だと思います。
――非エンジニアの社長が、最初のエンジニア人材を見つけるには、どうすれば良いでしょうか?
石倉:自身が技術を分からない場合は困ることはありますよね。例えば人材業界で営業を5年経験した後に独立してwebサービスを立ち上げる、と言った場合です。
高野:人材を探す方法はいろいろあると思いますが、あらゆることをして、自社に人材を巻き込んでいく必要があります。それ自体が社長の力の見せどころだと思います。
一方で、webサービスの企業なのに1人もエンジニアを雇っていないベンチャーも存在します。良い外注先がいて、社長が非エンジニア出身でもディレクションさえできれば、売上も利益もついてくる。採用すべきか外注で良いのかはサービスによって状況は異なりますが、エンジニアとどのように関係を持つべきかの判断は重要だと思います。
石倉:私も非エンジニアですが、自分の会社でサービス開発をしていて、外部の方2人にお願いしています。2人ともyenta(アトラエ社が運営するビジネスマッチングアプリ)などで様々な方に会って面接した中から選びました。結果的に有名ベンチャー出身の優秀な方を雇えています。私も細かい技術は分からないですが、単発の発注関係から始まって、今は1年以上継続してお願いしていますね。
エンジニアの見極めは、技術力の深掘り<フィット感
――細かい技術が分からない中で、エンジニアの技術力の見極めをするにはどうすればいいでしょうか?
石倉:技術的に凄く難しいことをしてもらうわけではない事業の場合は、「この会社のこのプロダクト開発していた人なら大丈夫」と前例に基づいた判断をするのが一般的かもしれません。出身会社名で一定の目利きをするイメージです。
高野:逆に、本当にエンジニアの技術力が高くないと勝負にならない事業を、技術が何も分からない社長がやるのはそもそも難しいということかもしれません。
――そう考えると、殆どのベンチャー経営者にとっての役割は、技術の目利きよりも自社を魅力に感じてもらうところに集約されるのかもしれません。
高野:そうですね。先ほど(第1回リンク)もあったとおり、社長自ら採用の前線にたって、自社の魅力やビジョンを発信し続けることが重要です。
最初は興味本位で協力してくれているエンジニアが、最後入社を決める時にはやはり会社の目指すサービスやプロダクトのビジョンが決め手になります。これはエンジニアであろうと、営業職であろうと同じ。
高い給料や安定した環境を約束することができないベンチャーだからこそ、採用において社長が大切にすべきはビジョン・カルチャーの徹底発信だと思います。
■バックナンバー■
第1回 「ここまでやる!採用に強いベンチャー経営者の共通点」
DIMENSION 編集長
「人・事業・組織に向き合い、まっすぐな志が報われる社会を創る」をミッションに、真摯に経営に向き合う起業家に創業期から出資し、事業拡大・上場を支援する国内ベンチャーキャピタル。
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