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「個のためのインフラになる」というミッションを掲げ、フリーランス業界No.1のクラウドソーシングサービス「クラウドワークス」を運営している株式会社クラウドワークス。同社代表取締役社長 兼 CEO 吉田 浩一郎氏に、経営者の素養や、上場後の心構えなどについてDIMENSIONビジネスプロデューサーの巻口 賢司が聞いた。(全4話)
ーー上場当初はIT人材向けのプラットフォームに1点集中していたと思いますが、その後エージェント領域や複数のSaaS事業にも参入され、上場以降、事業の多角化に積極的に取り組まれてきました。事業展開を検討する際の着眼点や実行のタイミングについて、アドバイスをいただけますか。
ベンチャーは大抵ニッチな領域から始めて、薄利多売で何かを作っていきます。
そして、継続的に成長する会社というのは、そこから高付加価値への転換点を作れるかどうかが重要になる。その高付加価値は自社の商材や強みに立脚したものですが、ここに大きな壁があると私は考えています。
多くの起業家は「自分はメルカリになる」「ビズリーチになる」と考えます。
ただ、メルカリやビズリーチは稀有な例で、マスマーケットでブランド認知を変え、顧客獲得単価の構造を変えることで大きく成長できました。ほとんどのビジネスは、現実的には5億から20億円ぐらいで収まっていくと思います。
この5億から20億円という規模からどう継続的に成長させていくか。祖業の壁をどう乗り越えるかが、ベンチャーの8〜9割が直面する課題です。
この壁の乗り越え方について、当社の場合はサイバーエージェントの藤田さんのアドバイスが非常に参考になりました。
当時、弊社は1本足打法のプラットフォーム事業1つで上場しました。藤田さんに今後の方向性を相談したところ、「とにかくめちゃくちゃやれ」と言われたのです。
つまり、「大胆に勝負した方がいい。上場後は投資家からの期待が高まるので、小さくまとまると堅実な会社というレッテルが貼られ、新しいことができなくなる。」ということです。
そこで一気に新しいことに挑戦することにしました。
29名という非常にスリムな形で3年でスピード上場したのですが、その後1年間で100名採用し、上場時29名だった組織が1年で130名規模まで成長しました。
多くのスタートアップは祖業への思い入れが強く、祖業が「もう少しで伸びるはず」というサンクコストの罠に陥ります。「これだけ投資したのだから」と言い続けて、結局成長できないというジレンマに陥ることが多いですね。
私の場合、藤田さんのアドバイスのおかげで、当時は認識していませんでしたが、大胆な挑戦ができました。
その過程で様々な失敗を経験しましたが、この時期に立ち上げた事業が現在の売上総利益の6割を占めており、さらに、2015年の上場翌年に採用した100名の中から現在の経営幹部の多くが育っているのです。
ーー御社の中期経営目標の一つに、既存事業とシナジーが見込める企業への積極的なM&Aによる成長戦略を掲げていらっしゃいます。これまでも多様なM&Aを実施されてきましたが、M&Aを成功に導くために特に心がけていることをお聞かせください。
M&Aは営業のアポイントメントと似ています。
事前に仮説を立てて臨まないと成功は難しく、仮説の範囲内でしか良い結果は生まれません。
私も経験があるのですが、解像度が低い段階で「とりあえず買収する」というケースをよく見かけます。
例えば、2018年に電縁という会社を「SIerでエンジニアがいるので何かできるだろう」という漠然とした考えで買収しました。
しかし実際には、金融業界向けSIerで、基本的にオンサイトワークが求められ、リモートワークは禁止。さらにフリーランス起用も禁止で、リモートワークもフリーランス活用もできない。結果的に、シナジーを生み出せず売却することになりました。
この経験から、M&Aの際は自社の強みを棚卸しし、シナジーについて具体的な仮説が立てられる企業のみをグループに迎え入れるようにしています。
事前に「この組織は大丈夫かな」と感じた案件は実際にはそれ以上に悪い状況であることが多いですし、シナジーがないと思った案件からシナジーが生まれることはありません。
ただし、電縁の例でも、その中の新規事業として立ち上げたクラウドLOGは現在ARR6億円を超える規模に成長しました。
このように、計画外の副次的な成功はありえますが、それをメインの成果として期待すべきではないと考えています。
ーーM&Aにおける数値や金額的な判断基準についてお聞かせください。
基本的にはEV/EBITDAマルチプルを見ることが鉄則です。ただ、最近特に感じるのは、売り手は常に高値での売却を望んでいるということです。
そこで私たちは、社員への愛着がある売り手に対して、高値売却後のPMI(経営統合)計画を詳しく共有するようにしています。
高値での買収は営業利益を圧迫するため、年間1億円の営業利益を確保するために何を削減しなければならないかというリストを作成して、売り手に提示します。
創業者にこのリストを見せることで、「確かにその価格で売却できるかもしれませんが、その後の経営はこういう現実に直面することになります」という事実を示すことができます。
このように、身の丈以上の売却価格は社員の幸せにつながらないということを具体的に示すと、そこまでして売却を望む方は少なくなります。もしそれでも高値売却を望むのであれば、私たちではなくPEファンドへの売却をお勧めしています。
ーーPMIや価格面での課題に対して、そこまで踏み込んだ提示をするのは珍しいですね。
私たちの会社は対話重視のカルチャーを持っています。また、動物園のように、様々な個性を持った人材が集まっています。
私とは異なる人間性の人材が数多くいるからこそ、その多様性を認め、各社のカルチャーを尊重しながら、業績の成長は私たちが実現するという姿勢で臨んでいます。そのため、価格面で差があっても、私たちを選んでいただけることが多いのです。
つまり、単純な金額勝負ではなく、個人とインターネットを通じて、国や会社の枠を超えた新しい仕組みを作っていくという私たちのビジョンに共感していただける方々と、M&Aを行っています。
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巻口 賢司
早稲田大学政治経済学部卒業後、日本マイクロソフトに法人営業として入社。国内の大手企業におけるデジタル化の促進に携わる。その後、ウォルト・ディズニー・カンパニーにて、スタジオ部門での映画の配給・マーケティングからコーポレート戦略部での新規事業開発など、幅広い業務に従事。2023年、DIMENSIONにビジネスプロデューサーとして参画。日台ハーフ・日英バイリンガルというバックグラウンドを活かし、グローバルな目線でのスタートアップ支援を志す。
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