
#レジェンドに聞く
千本倖生氏。第二電電(現KDDI)、イー・アクセス(現ワイモバイル)を創業し、いずれも巨大企業へと成長させた、いわずと知れた日本を代表する連続起業家だ。現在も代表取締役会長として株式会社レノバで再生可能エネルギー事業に心血を注ぐ一方、後進起業家の育成にも注力されている。今回はベンチャーナビがそんな千本氏に特別取材を実施。起業家にとって重要な素養、日本の若手起業家に対するアドバイスなどについて聞いた(全4話)
千本倖生/京都大学工学部電子工学科卒業、フロリダ大学Ph.D。日本電信電話公社(現在の NTT)入社後、1984年に第二電電株式会社(現在の KDDI)を稲盛和夫氏らと共同創業し、専務取締役、取締役副社長を歴任。1995年に慶應義塾大学、大学院教授に就任。その後カリフォルニア大学バークレー、カーネギーメロン大学の客員教授などを経て、1999年にイー・アクセス株式会社を創業。代表取締役社長、代表取締役会長などを歴任。2005年イー・モバイル株式会社を設立し、代表取締役会長CEOに就任。2014年4月に株式会社レノバ社外取締役に就任。2015年8月より代表取締役会長に就任。
ーー千本さんが考える、起業家にとって重要な素養をお教えください。
まずは「Sensitivity(感度)」が高いこと。鳥瞰をもって時代の大きな流れを見ることです。
今の時代でいうとAIが大きなトレンドになっているけれど、それが世界にとってどういう潮流をもたらしているのか。いま起きている事象に感度を高く持ち、それを大きな流れの中で捉えて観察することが重要です。
2つめは、「高い志」。
大きな潮流の中での矛盾や機会を見つけた時に、世のため社会のために「自分がやってやろう。戦おう。」という心です。
機会を見つけたときに、動き出せるかどうかは自分の中にしっかり芯、志を持っているかどうかにかかっているのです。
3つめは、「周到に準備すること」。
なんでもいいからとりあえずやればいいというわけではなく、人の3倍努力して、とことん準備をする。その上で最後にリスクをとることが大切です。
起業家にはすぐにリスクだけをとろうとする人が多いですが、それはダメ。ある意味で、起業家は「怖がり」でいいのです。怖がりで怖がりで、ものすごく準備をして、最後はリスクをとってジャンプをする。
そのような「慎重さと勇敢さ」という、二律背反の素養を兼ね備えている必要があるということです。
起業家といえば勇敢な人ばかりなイメージがあるかもしれないけれど、私の経験上、成功する確率が高いベンチャー起業家というのは怖がりで慎重、かつ最後はリスクをとれる人が多いですね。
ーーどうしたらその二律背反した素養を身につけられるのでしょうか?
小さな失敗を繰り返していていくことでしょう。
これには4つめの素養として「Perseverance(継続的な忍耐心)」が必要です。
すぐ熱くなるが、すぐに冷めてしまうような人は起業家として大成しない。失敗しても、とことん食らいついて、しつこく継続できる忍耐心を持っていることが大切です。
ーー「Sensitivity(感度)」によって「高い志」を立て、「周到に準備すること」と「Perseverance(継続的な忍耐心)」で志を成し遂げていくということですね。
あと必要な素養があるとすると、「運がいいこと」でしょうね。
これは精神的なものになってしまうけれど、巡り合わせがぴたっとハマる、時代の波に合う、といった運を呼び込める人がいるものです。
ーー運を呼び込む秘訣はなにかあるのでしょうか?
運がいい人の共通項は「たくさんの人にサポートされる人」であることです。
たくさんの人にサポートされるには、心が綺麗であること、謙虚であること、人の話を傾聴できること。
起業家で割と多いのは、自分のことばかり話して相手の話を聞かない人。それでは良いプレゼンテーターとはいえません。
自分のことより相手のこと。相手が何を求めているかを相手の立場になって考えられる謙虚な心がある人が、たくさんの人にサポートされ、ひいては運を呼び寄せることができると思います。
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千本氏が考える「起業家の素養」5つ
1.「Sensitivity(感度)」が高い。鳥瞰をもって時代の大きな流れを見る。
2.「高い志」を持つ。実行する。
3.「周到に準備する」。「慎重さと勇敢さ」という、両極の素養を兼ね備えている。
4.「Perseverance(継続的な忍耐心)」でしつこく継続する。
5.「運がいい」。運をよびよせる、綺麗な心、謙虚さ、傾聴する姿勢を持つ。
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>第2話「チーム全体を「真っ赤に染める」組織術」に続く
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著者 伊藤紀行
DIMENSION Business Producer:早稲田大学政治経済学部卒業。楽天、EdTechスタートアップを経て、株式会社ドリームインキュベータにて国内のスタートアップへの出資・分析、上場に向けた経営支援等に従事。FinTech(金融 x IT)、D2C、メタバース、ドローンなど幅広い事業領域の企業への出資と並行して 、出資先の経営陣への経営支援を実施。 21年、株式会社ドリームインキュベータからのDIMENSIONファンドMBOに参画。 志高い起業家へのキャピタリストとしての支援を通じ、日本経済の活性化に取り組む。 出資支援先であるFinTechスタートアップ、株式会社400Fの社外取締役。ビジネススクールにて、「ベンチャー戦略プラン二ング」「ビジネス・アナリティクス」等も担当
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