『データによって人の価値を最大化する』株式会社プレイド 倉橋 健太代表が語る「起業家に必要な3つの素養」(第1話)

「データによって人の価値を最大化する」というミッションを掲げ、顧客理解からパーソナライズまでを一気通貫で実装できる、CX(顧客体験)プラットフォーム『KARTE』を提供する株式会社プレイド。同社代表取締役 CEO 倉橋 健太氏に、起業家の素養や、CXの今後についてDIMENSIONビジネスプロデューサーの巻口 賢司が聞いた。(全4話)

組織が生み出す差分は「一貫性」である。

ーー倉橋さんにとって、 起業家として重要な素養は何でしょうか

1つ目は「始める力」ですね。

起業そのものが新しいスタートですが、スタートした後も全てが思い通りにいくわけではありません。修正が必要になったり、新しい挑戦が求められたり、時には一から始め直したりする機会が非常に多いのです。

つまり、最初の一歩を踏み出せるだけでなく、正しい方向に向かって「始め直す」「始め続ける」という力や、再現性を持って、誰よりも率先して物事を始められる力が必須だと考えています。

 

倉橋 健太/1983年生まれ
2011年10月に株式会社プレイドを創業。2015年、企業のカスタマーデータ活用を支援するクラウドソフトウェア「KARTE」を提供開始し、顧客戦略またはDX戦略の推進基盤として、EC、金融、不動産、人材他、幅広い業界で導入されている。2020年12月東証マザーズに上場し、同年のIPO of the Yearを受賞。

 

ーーそういったスキルは、ご自身が鍛えられて身についたものなのか、それとも幼少期からお持ちだったものなのでしょうか。

私は幼い頃から、言われるままに行動したり、理解や納得のないまま物事を進めたりすることが非常に苦手でした。

「なぜだろう」「もっとこうすれば良いのに」と、常に考えながら行動するタイプでしたから、そういう気質は元々持っていたのだと思います。

ただし、最初から今ほどの力があったわけではありません。

起業後や会社の成長過程で変革を進める際には、孤独や社内外からの逆風を感じることが往々にしてあります。

繰り返しの挑戦と、より大きなテーマへの取り組みを通じて、「始める力」が徐々に強くなってきたと感じています。

 

ーーその他に重要な素養を教えてください。

起業家として重要な素養の2つ目は、「一貫性」だと思います。

言い換えると、“貫いていく胆力”みたいなものですね。

会社というのは全ての活動が繋がっているため、どの側面の意思決定においても、一貫した目的や方向性を持ち、理想に忠実であることが非常に重要だと思っています。

個別の課題に対する妥協した意思決定は簡単にできますが、それらを同じ方向に向かわせていくのはとても難しい。

ただ、それを個人だけでなく周囲も含めて実現できるようになると、とても強いチームになっていきます。組織が生み出す価値の差は、この一貫性にあるんじゃないかと思います。

3つ目は、「小さな喜びを見つけること」です。

会社というのは、本質的に正しいことをやればやるほど、数字や売上といった最終的な結果が表れるまでに大きなタイムラグがあるんです。

そのため、理想的な取り組みをすればするほど、足元での成功体験を積みにくい構造になっています。

ですから、お客様の反応の変化や、チームの雰囲気が良くなったこと、お客様からの新しい相談など、小さな変化や成功の予兆を見つけて喜べるかどうかが、ブレずに進んでいく上でとても重要です。

喜びの粒度を小さく持ち、目の前の小さなことにも注目し、そこからポジティブなエネルギーを得られるかどうか。これは長い道のりを歩む上でとても重要な要素だと思います。

 

「たとえ失敗したとしても、社会に価値を示せる」という確信。

ーー倉橋さんは、プレイドを創業される前に「楽天」に入社され、そこで経験を積まれてから独立されたと伺っています。起業を志されたきっかけや、当時の想いを振り返ってお話しいただけますでしょうか。

当時は、楽天やサイバーエージェントなど、インターネットビジネスの第1世代と呼ばれる企業が次々と台頭してきた時期でした。

私自身、親が自営業を営んでいたことや、大学時代にサッカーサークルを立ち上げた経験から、新しいものを作り出し、始める、広げることに面白さや興味を持っていました。

この新しい時代の幕開けを肌で感じ、将来は自分も起業しなければ面白くないだろうと考えていました。

起業することは就職前から決めていましたが、経験も知識もない状態でしたので、それらを学ぶための第一歩として楽天を選びました。

 

ーー「楽天」という職場を選ばれたきっかけについて教えていただけますか。

就職活動自体を起業のための学びの場と位置付け、様々な業界の企業説明会に参加していました。

その中で自分の琴線に触れる企業をいくつか選び、楽天もその一つでした。

決め手となったのは、選考過程でお会いした方々から感じた圧倒的な熱量です。

新しいことを成し遂げるには、こういった強いエネルギーが必要だと実感し、それが楽天を選んだ最大の理由となりました。

 

 

ーー実際の独立のタイミングについて、入社後のどのようなフェーズで独立を決意されたのでしょうか。

自分でいうのも恐縮ですが、私は比較的出世頭だったと思います。

新卒を大切にする会社だったので、貴重な機会を多く与えていただき、とても良い環境で成長できました。

ただ、一定の経験を積み、役割が変わり、視野が広がってくると、成長が緩やかになってきている感覚がありました。もちろん会社のフェーズも変化していましたが、最も大きかったのは自分自身の成長カーブの変化でした。

非常に忙しく毎日を過ごしていたため、お盆と年末年始以外に立ち止まって考える時間を取れていませんでしたが、ある休暇中に「そうだ、自分は起業したかったんだ」と初心を思い出したんです。

そして、入社5年目頃から外部の動向にもアンテナを張り始めると、社会に大きな変化が起きていることに気がつきました。

デバイスの進化や通信速度の向上に加え、インターネットが単なる情報収集の場から、人々をつなぐプラットフォームへと変化している時期でした。これは明らかに、今後デジタルの世界が大きく変わり、実社会とも密接に結びついていく転換点だと感じました。

このような外部環境の大きな変化の中で、自分も次のステップを考えるフェーズに来ていました。そこで起業を決意したというわけです。

 

ーー決断に際して、不安や恐れはありませんでしたか。

起業は初めての経験でしたし、楽天という急成長企業で様々な経験をさせていただきましたが、一から何かを作り上げた経験があったわけではありません。

その点では、未経験な分野に飛び込む不安もありましたが、それ以上にこれまでの経験が自信になっていたとも思います。

「たとえ失敗したとしても、私は社会に価値を示せる」と確信していたので、最終的にはリスクを感じていませんでした。

 

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巻口 賢司

巻口 賢司

早稲田大学政治経済学部卒業後、日本マイクロソフトに法人営業として入社。国内の大手企業におけるデジタル化の促進に携わる。その後、ウォルト・ディズニー・カンパニーにて、スタジオ部門での映画の配給・マーケティングからコーポレート戦略部での新規事業開発など、幅広い業務に従事。2023年、DIMENSIONにビジネスプロデューサーとして参画。日台ハーフ・日英バイリンガルというバックグラウンドを活かし、グローバルな目線でのスタートアップ支援を志す。

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