「大きな変化の震源地に立っている」株式会社プレイドの今後の展望 / 倉橋 健太代表(第4話)

「データによって人の価値を最大化する」というミッションを掲げ、顧客理解からパーソナライズまでを一気通貫で実装できる、CX(顧客体験)プラットフォーム『KARTE』を提供する株式会社プレイド。同社代表取締役 CEO 倉橋 健太氏に、起業家の素養や、CXの今後についてDIMENSIONビジネスプロデューサーの巻口 賢司が聞いた。(全4話)

上場は会社の目的における“一つのイベント”に過ぎない。

ーー御社は上場前から様々な施策を仕込まれ、上場後も次々と事業を展開されています。特に若手経営者の中には、上場後の姿を描かないまま上場に進まれるケースも見受けられます。上場後も継続的な成長を実現する、倉橋さんの行動力の源泉についてお聞かせください。

上場というものを純粋に「一つのイベント」としてしか捉えていなかったというのが大きいと思います。

もちろん様々な変化が起こる節目ではありますが、目的に向け活動する中で起きる一つのイベントに過ぎないと考えています。

もちろんそれがどんな変化をもたらし、何を得て、何を失う可能性があるのかは重要です。ただ、それ以上でも以下でもないという認識があったので、特に強く意識することはありませんでした。

上場を機に何かを変えようとは全く考えていません。

ただ、先ほどお話ししたようなリスクへの対応として、必要な準備は進めてきました。

上場という出来事は、投資家の方々や社員への還元という意味で確かに重要です。

しかし、それは会社が目的に向かう中で自然に発生するものであって、私としては会社の目的や理想の姿に向かってどう進んでいくかということにだけ集中していました。ですから、特に意識はしていませんでした。

ただ、上場から1、2年が経った時に気づいたことがあります。

上場ほど誰にとっても分かりやすいマイルストーンは、その後にはないんですよね。

この先は、私たちの成長や社会への影響をどう自分たちで評価し、納得するかという話になっていきます。

振り返ってみると、凄く良いイベントだったなと思います。

 

上場後に得られる機会は「世の中から託された責任」

ーー今後上場を目指される、もしくは現在目指されている起業家に対して、倉橋さんならではのアドバイスや想いがありましたら、ぜひお聞かせください。

事業ドメインにもよるとは思いますが、私たちの事業の場合、成長していったり新しいプロダクトが成功していくと、その先に次のラウンドが待っています。

次のビジネスチャンスが現れ、そこでまた成功すると、さらに大きなチャンスが待っている。

進めば進むほど、機会の拡大スピードの方が早くなっていきます。

そのため、自分たちが成長しているという実感よりも、与えられる機会の総量の成長の方が大きく、やりがいと同時に常に“無力感がある”んです。

大きな市場が存在することは皆知っているわけですが、実際にその機会が次々と手の届くところまで来るようになるんです。

そこを突破していくことで、徐々に先が見えてくるような感覚があります。

この話は上場とは関係ありません。

事業に邁進し、センターピンを捉えることができていれば機会は自然と集まってきます。それは誰か他の人が得るかもしれなかった機会が自分たちに託されているということです。

つまり、それは「世の中から託された責任」でもあるわけです。

このように捉えることで、長期的にぶれることなく、大きなチャレンジを続けられるのではないでしょうか。

 

ーー物事の捉え方が重要になる、ということですね。

そうですね。

これは一人の戦いではなく、組織としての戦いです。会社は成長するほどに世の中の変化により深く結びついていくので、社会の動きと会社に対する視点を適切にアップデートしていくことができれば、更に面白く、ブレずに大きく進むことが可能になります。

 

企業活動の「大きな変化の震源地」

ーー御社の今後のチャレンジとその思いに至ったプロセス、背景などをぜひ教えてください。

一つ前の回答とも繋がるのですが、企業活動や世の中はすべて繋がっていると強く感じています。

重要な変化に貢献できると、その変化が影響する範囲が私たちにとっての新たな機会となっていきます。

今私たちが体感しているのは、プレイドがこの先しっかりと活動を続けていけば、企業活動を根本的に変革できるだろうということです。

それは、企業がどのような目的とプロセスを持って価値を創出するのか、その全体像を大きくアップデートできる段階に来ているということです。

企業のあり方が変われば、必然的に生活者体験も、就業者体験も変わっていきます。

つまり、企業の変革を通じて、生活者、従業員、など関わる全ての方々の体験が変わっていくのです。

私たちは、そうした大きな変化の震源地に立っています。

だからこそ、理想の姿に向かってチャレンジを続けられるのです。SaaSだけでなく、プロフェッショナルサービスも始めましたが、それだけにとどまらず、まだまだ取り組むべき事業機会が広がっていると感じています。

 

CX(顧客体験)という概念自体を変えていかなければならない。

ーー御社はCX(顧客体験)を大きく掲げられて、それに基づいたサービスや事業を展開されていると思います。一方、世の中のCXに対する認識はまだ発展途上だと個人的に感じています。社長から見て、CXの企業成長や企業に対する重要性は、どういったところにあるとお考えでしょうか。

カスタマーエクスペリエンス(顧客体験)という言葉を見ると、まだ理解がぶれる言葉だと思っています。

「お客様の満足度を上げるために全てを行う」という考え方と、「お客様を中心に据えて価値をデザインする」という考え方は、全く別物だと思うんです。

価値を享受する側は、本当に欲しいものを理解していないという話もありますよね。

本来、それぞれの企業が異なるオリジンや特性を持っているはずです。それなのに、全く異なる資本を持ちながら、同じものを作っているという構造になっているんです。生活者の本当のニーズが見えていないこともその一因です。

私は、デジタル上で顧客理解を可能にしていくことで、企業のオリジンが関係を結ぶべき顧客としっかり繋がることができる、というサイクルが生まれると思っています。

そのため、CXとは企業のオリジンを持って顧客を選択し、それをもって価値をデザインすることだと考えています。そういった活動ができている企業はまだまだ極めて少ない。

つまり、今言われているCXという概念自体を変えていかなければならないと思っています。

価値を提供する側と受ける側がしっかりと繋がってサイクルを作らないと、持続性が欠けてしまう。
今は新しいものを生み出すことよりも、届けるべき人にしっかりと届けていくことで、世の中の持続性を実現することが重要なテーマになってきています。

相手が見えなければ持続性は実現できません。このサイクルを見つけることこそが、顧客中心経営なのだと思います。

 

ーーありがとうございます。CXは確かにバズワード的に取り上げられてきて、ある種追い風になってきているところもありますが、改めてそのような観点でお話を伺いできて良かったと思います。

AI時代における重要なテーマの一つがまさにそこです。

AIにおける高度なユーザー理解とそれに基づく企業活動の実現が重要なテーマであり、私たちが“大本命”だと考えています。

 

 

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巻口 賢司

巻口 賢司

早稲田大学政治経済学部卒業後、日本マイクロソフトに法人営業として入社。国内の大手企業におけるデジタル化の促進に携わる。その後、ウォルト・ディズニー・カンパニーにて、スタジオ部門での映画の配給・マーケティングからコーポレート戦略部での新規事業開発など、幅広い業務に従事。2023年、DIMENSIONにビジネスプロデューサーとして参画。日台ハーフ・日英バイリンガルというバックグラウンドを活かし、グローバルな目線でのスタートアップ支援を志す。

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