“変われる組織”だけが生き残る──株式会社チェンジホールディングス 福留 大士社長(第2話)

「Change People, Change Business, Change Japan.」というミッションを掲げ、デジタル人材の育成支援や業務プロセスの革新及びデジタル化などを担うNEW-IT トランスフォーメーション事業とDXによる地方創生の推進をミッションとするパブリテック事業の2つの事業を柱とする株式会社チェンジホールディングス。同社代表取締役兼執行役員社長 福留大士氏に起業家や経営者に必要な素養や、今後の事業展開についてDIMENSIONビジネスプロデューサーの巻口 賢司が聞いた。(全4話)

社長も社員も“成長途中” 変化し続ける組織をつくるために必要なこと

ーー成長を見据えた組織づくりという点で、福留社長がこれまでの経験から得た採用や組織構築のポイントがあれば教えてください。

大前提として、私自身もまだまだ成長途上にあります。若くして起業し、20年以上経ちますが、大企業でいえば課長か部長くらいの年齢です。つまり、人間としても経営者としても、まだ成長の途中にいるという認識を持っています。

その中でも採用や組織を構築し、率いるうえで大切にしているのは、人と組織が「成長し続けようとする意欲」です。

私たちの社名である「チェンジ」にも通じていますが、成長し続けるためには「自分が変われるかどうか」が非常に重要だと思っています。

たとえば、優秀な営業マンがそのままのやり方で優秀な営業マネージャーになれるかというと、そうではありません。担当者からマネージャー、本部長と立場が変われば、求められるスタンスや役割も変わります。

営業担当であれば、自分の営業のパフォーマンスを最大化することが求められます。一方、それがマネージャーとなれば、数人とはいえ部下の育成をしていくマネジメント力が必要になるでしょうし、本部長になると組織をどうマネジメントしていくか、インセンティブなど報酬の仕組みをどう設計するか、などの責任を担うでしょう。

これまでの成功体験を一度アンラーンして手放し、新しいやり方にアップデートする。この変化に柔軟に対応できるかどうかが、成長の原動力になります。

私自身も含めて、全員が「いま自分が置かれているステージで何が求められているのか」を常に考え、実行すること。それが“変われる組織”づくりの核心だと考えています。

 

“チェンジ”を体現した「トラストバンク買収」の背景と決断

ーー2016年の上場時にはDX・研修事業が主軸であった中、2018年に「ふるさとチョイス」を運営するトラストバンクを子会社化され、地方創生領域に舵を切られました。自社の売上を上回る企業の買収という大きな決断の背景には、どのような想いがあったのでしょうか?

トラストバンクは、もともとは私たちのお客様であり、志を共有するパートナーでした。

私たちのデータサイエンティストが、トラストバンクに対して「ふるさと納税」の経済効果を分析したり、BPR(業務改革)の支援を行ったりと、さまざまなコンサルティングサービスを提供してきました。そのような形で、お客様でもあり、仲間でもある、といった関係でした。

そのトラストバンクには大変素晴らしい創業者が二人いました。その一人が別事業に挑戦すると引退を決意したことで、事業承継の話が浮上しました。

私自身も元々「ふるさと納税」のプラットフォームに非常に可能性を感じていて、自治体向けITサービスやDXの良い事例になりうると考えていました。

というのも、「ふるさと納税」のプラットフォームは、全ての自治体に対して標準化された同じシステムを展開し、複雑な手続きがないスピーディーな契約形態、成功報酬ベースの報酬体系といった特徴を備えていて、非常にシンプルで自治体DXの理想形に近い存在だと感じていました。

このような考えを持っていたからこそ、グループに迎え入れることでより多くの自治体に価値を届けられると確信しました。

現在では、買収前に1,400だった自治体との取引も1,700以上に増え、さらには自治体との取引基盤、いわゆる顧客基盤を私たちが活用することで自治体向けSaaS事業の展開にもつながっています。

この買収は、私たちにとって大きな成長シナリオであり、「Change Japan」のミッション実現に向けた大きな一歩でした。

 

全員にとっての「良い未来」を描く──M&Aの着地点

ーー買収の際、交渉において意識されたポイントや、グループイン後に描いた未来像について教えてください。

M&A、いわゆる交渉の場面では「合意形成」がすべてです。買い手、売り手、経営陣、従業員、顧客といったすべてのステークホルダーにとって“ちょうどいい”着地点を見つけることが重要です。

買い手側もしくは売り手側だけの利益や、経営者や従業員側だけに好都合なことなど、「誰かにとってだけ都合が良い形」で合意してしまうと、必ず歪みが生じます。だからこそ、一番バランスのとれた「ちょうどいいポイント」を探っていく。

「勝ち過ぎない」という言葉を使う人も多いですが、要するにみんなが満足できる合意ポイントを模索することが非常に重要です。

その中で私が特に意識していたのは、M&Aのあとに「より良い未来」が描けているかどうかです。

オーナーが変わることで、顧客や従業員のデメリットに繋がらないようにする。むしろ、M&A後に、お客様へのサービスレベルが上がり、従業員の給与が上がる、といった「より良い未来」を実現する。そういったシナジーを本気で考え抜いたうえでの買収でなければ意味がありません。

 

 

ーートラストバンクが御社にとって初めての買収だったのでしょうか?

はい、2018年の11月に買収を行いました。

当時の私たちは2016年の9月に上場した後の約2年間、オーガニックな成長を遂げていましたが、さらに飛躍するためにはインオーガニック、つまり非連続な成長が不可欠だと感じていました。

「3年間で営業利益を10倍にする」と掲げ、M&Aがまさにその目標を実現する最も適切な手段だと考え、実行に移していきました。

先ほど「変化こそが成長の源泉」と申しましたが、自己変革だけではどうしても飛躍できる先が「自領域の隣」などに限定されがちです。

その点、M&Aであれば自分たちだけでは全く届かない場所へ一気に踏み出すことができます。これまでの成功体験や成功モデルは一旦置いておいて、全く別のステージにジャンプするための手段なのです。

トラストバンクの買収は、当時の東証マザーズから東証一部へ市場変更をしたタイミングで行い、まさに私たちにとって組織とビジネスのステージを押し上げる重要なトランスフォーメーションでした。

 

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巻口 賢司

巻口 賢司

早稲田大学政治経済学部卒業後、日本マイクロソフトに法人営業として入社。国内の大手企業におけるデジタル化の促進に携わる。その後、ウォルト・ディズニー・カンパニーにて、スタジオ部門での映画の配給・マーケティングからコーポレート戦略部での新規事業開発など、幅広い業務に従事。2023年、DIMENSIONにビジネスプロデューサーとして参画。日台ハーフ・日英バイリンガルというバックグラウンドを活かし、グローバルな目線でのスタートアップ支援を志す。

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