9社のM&Aから見えてきた“成長”と“相性”の見極め 株式会社チェンジホールディングス 福留 大士社長(第3話)

「Change People, Change Business, Change Japan.」というミッションを掲げ、デジタル人材の育成支援や業務プロセスの革新及びデジタル化などを担うNEW-IT トランスフォーメーション事業とDXによる地方創生の推進をミッションとするパブリテック事業の2つの事業を柱とする株式会社チェンジホールディングス。同社代表取締役兼執行役員社長 福留大士氏に起業家や経営者に必要な素養や、今後の事業展開についてDIMENSIONビジネスプロデューサーの巻口 賢司が聞いた。(全4話)

「単独よりも成長が加速するか?」

ーーM&Aについてお伺いします。これまで9社の企業をグループに迎え入れ、事業領域も着実に拡大されています。実際にM&Aの判断を行う際に、どのような基準を重視されているのでしょうか?

私たちのミッションである「Change People, Change Business, Change Japan.」に向けた様々なサービスを揃えていく、というのがM&Aのひとつの趣旨なわけですが、その中でも最も重視しているのは「単独でやるよりも、グループに入っていただくことで成長が加速するかどうか」という点です。

言い換えると、私たちはさまざまなソリューションやサービスを展開していますが、M&Aによって単に規模を広げるのではなく、互いのリソースを補完し合い、機能として強くなるかどうかが鍵です。

単独では超えられなかった成長の壁やボトルネックが、グループになることで取り除かれ、飛躍的な発展が見込めるか。この可能性が感じられるかどうかを、私は最初に見極めています。

 

経営者同士の“相性”が左右する成否

ーーこの「成長の加速」に加え、経営者同士の相性も重視されていると伺いました。具体的にはどういった点を見ているのでしょうか?

M&Aは人がやるものです。ですから「人の相性」は極めて大切です。

実際、M&Aを進めていくと、想像以上に困難な場面や逆風に直面します。新たなことを取り入れるわけですから、悩むことや苦しいことももちろん多い。そうした状況でも、真正面から一緒に向き合い、乗り越えていける関係性が築けるかが成功の分かれ道になります。

グループインを検討する際は、その経営者の方としっかり対話を重ね、こちらの価値観やビジョンと共鳴してくれるかどうかを見ています。逆に言えば、どれだけ数字や実績が魅力的でも、人としての信頼関係が築けない場合には、無理に進めることはありません。

9社のM&Aを経て強く感じたのは、「最終的には人」だということです。困難な場面においても「この人となら一緒にやれる」と思える関係性が何より重要です。

 

ーー9社のM&Aを進める中で、判断基準や評価軸に変化はありましたか?

判断基準や会社の評価、あるいはPMIのシナリオなどは非常に細かくなってきています。つまり、細かいことまでよく分かるようになってきました。

例えば「顧客基盤の獲得」をM&Aのメリットとして捉えたとしても、顧客の部署によっては、シナジーが作れるかどうかの難易度が大きく変わったりします。

例えば「トラストバンクを買収して、自治体向けのDX推進事業を展開する」とします。これは一見簡単そうに聞こえますが、視点を部署に当ててみると、トラストバンクが展開する「ふるさと納税」の担当部署は、企画財政・観光・商工部署などが当てはまることが多い。一方、「DX推進」は別の部門が担っているんですよね。

同じ顧客に対してアプローチをする場合も、実は部署の壁が立ちはだかる。

そうした壁を事前にどこまで予測して、どう乗り越えるか。こうした粒度の細かいシナリオ設計が、今では当たり前になっています。

今後はAI領域など、これからの成長に不可欠な技術や機能を持った企業を迎え入れ、それをグループ全体に展開していく。今後もそのような「機能強化型M&A」を積極的に進めていく方針です。

 

ーー上場後も継続的に事業成長を追求されている姿勢が非常に印象的ですが、福留さんご自身の原動力はどこにあるのでしょうか?

私の原動力は、「Change Japan」というミッションを本気で実現したいという強い思いです。

上場企業として成長し続けることは、当然の責任であり、義務だと思っています。

ただそれ以上に、ミッションを実現するために、社会を変えるためには、もっと大きなインパクトが必要で、この程度の影響力ではまだまだダメだと常に認識しています。

ミッションと現状のギャップを埋めるために、ひたすら突き進む。その覚悟が、行動の原点となっています。

 

 

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巻口 賢司

巻口 賢司

早稲田大学政治経済学部卒業後、日本マイクロソフトに法人営業として入社。国内の大手企業におけるデジタル化の促進に携わる。その後、ウォルト・ディズニー・カンパニーにて、スタジオ部門での映画の配給・マーケティングからコーポレート戦略部での新規事業開発など、幅広い業務に従事。2023年、DIMENSIONにビジネスプロデューサーとして参画。日台ハーフ・日英バイリンガルというバックグラウンドを活かし、グローバルな目線でのスタートアップ支援を志す。

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