bitFlyerの描く未来図と、日本のスタートアップ社会への提言 株式会社bitFlyer 加納 裕三 代表取締役(第4話)

「ブロックチェーンで世界を簡単に。」というミッションのもと、日本国内で最大級の暗号資産取引所を運営し、創業から11年を迎えた今もなお業界の最前線で挑戦を続けている株式会社bitFlyer。今回は、同社代表取締役 加納 裕三氏に、起業家に求められる素養やWeb3業界の現在、さらにはグローバル展開を見据えた今後の展望について聞いた。(全4話)

停滞からの再出発。グローバル市場で再び世界一を目指す

ーー御社の今後の展望について教えていただけますでしょうか。

2023年に私が経営に復帰した際の最初のミッションは、混乱期に生じた経営上の負債をリカバリーすることでした。現在はその整理もひと段落し、未来に向けた新しいステージに入っています。

今後は、新しいサービスの開発とリリースに注力していきたいと考えています。プロダクト面でも積極的に展開していきたいですし、特にユーザーサポートについては全面的に改善し、お客様により信頼されるサービス体制を整えていきます。

元々は国内シェア約90%というポジションを築いていたのですが、そこから約4〜5年の停滞によってシェアは1/3まで落ち込んでしまいました。今は、ここを取り返していきたいという強い想いがあります。

また、海外展開にも力を入れていて、アメリカとルクセンブルクに子会社があります。特に海外市場は規模が大きく、日本から海外に挑戦している暗号資産取引所はbitFlyerグループしかないため、日本発のブロックチェーンスタートアップとして、グローバルに存在感を示していくことを目指しています。

2016年から2017年にかけて、当社は取引高において世界一の暗号資産取引所でした。その後順位は下がってしまいましたが、再び世界のトップを狙うべく、今も挑戦を続けています。

 

全方位的な採用で、事業をさらに前に

ーー目標の達成に向けて、御社が求めている人材について教えてください。

基本的には全方位的に人材を求めています。まずは経営企画のファンクション、いわゆる社長室と呼んでいるポジションです。私や他の取締役をサポートしていただける方を求めています。

エンジニアも、ブロックチェーンやインフラなど、あらゆる領域で募集しています。AIの進化によってコードを書く作業は減っていくと思いますので、より上流工程を担えるようなエンジニアの方に来ていただきたいと考えています。

さらに、コンプライアンスやリスク管理、人事・採用など、バックオフィス系の人材も積極的に採用中です。ルクセンブルクやアメリカの子会社で活躍していただける方も歓迎しています。

ただ、アメリカは今ビザのハードルが高いので、現実的にはルクセンブルクの方が行きやすいかもしれません。ルクセンブルクは非常に美しい国で、実は平均年収が世界トップレベルの豊かな国です。物価は高いですが、バスは無料など、快適な環境が整っています。

bitFlyer EUROPE S.A.設立当時はブレグジット(Brexit)が起こった時期だったため、イギリス以外の英語話者が多いヨーロッパの国を候補に考え、マーケット環境も鑑みてルクセンブルクでの子会社設立を決めました。

 

ーーエンジニア採用のお話が出ましたが、開発にはAIを積極的に使われていらっしゃるのでしょうか?

社内では全社員に「Copilot」や「ChatGPT」アカウントを付与しており、開発にもAIを積極的に活用しています。特にクラウドベースのAI活用においては、セキュリティ面を最も重視して検討したうえで導入を進め、安全かつ効率的な開発体制の整備を進めています。

 

創業者を支える社会を──VCとスタートアップエコシステムへのメッセージ

ーーVC(ベンチャーキャピタル)に期待することや、スタートアップエコシステムに対するメッセージがあれば教えてください。

VCの本質は、リスクマネーを提供することです。リスクを取って、その見返りとしてリターンを得る、これがVCの存在意義だと思っています。

私自身アメリカでも資金調達の経験がありますが、その際に資金調達環境の大きな違いを感じました。

日本のVCでは、創業者に連帯保証を求めたり、拘束するような契約を求めるケースも少なくありません。私自身もそういった契約で縛られている部分があり、そこがアメリカのVCとの大きな違いだと感じています。

アメリカでは、時価総額1兆円、10兆円規模の上場を狙えるためアップサイドが大きいのですが、日本ではせいぜい300億円規模です。だからこそダウンサイドを過度に気にして創業者を縛る傾向があるのかもしれません。

 

 

もちろん一定の拘束は必要だと思いますが、理不尽な形での拘束は、結局誰にとっても良くない結果を生むと思います。創業者とVCが健全な関係を築き、投資家がしっかりとリスクを取ることが重要です。また、シードやシリーズAの場合は特に、一緒に事業を考え、伴走してくれるようなVCが更に増えることを願っています。

最近は日本でもレイトステージ向けのファンドが立ち上がっており、10億〜20億円単位で投資をする動きが出てきているのは良い傾向だと思います。

日本全体を見ると、リスクマネーと起業家が圧倒的に足りていません。日本のベンチャーキャピタルの運用額は、アメリカに比べて1/30ほど。「ここぞ」という時に、アメリカでは1兆円規模の投資が可能ですが、日本ではせいぜい10億円、多くても100億円です。まずこのスケール感の差があります。

さらに、起業家に対する社会の目も厳しい。少し変わったことをすれば「出る杭を打つ」ような文化がいまだに根強く、せっかくの「頭のネジが飛んだ」イノベーターが潰されてしまうのは本当に残念です。40年にわたる経済の停滞は、そうした土壌が生み出した結果かもしれません。

起業に挑戦する人自体が貴重なので、そういった起業家を社会全体で支え合い、盛り上げていく空気がもっと広がっていけばいいなと強く思っています。

 

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DIMENSION NOTE編集長

DIMENSION NOTE編集長

「人・事業・組織に向き合い、まっすぐな志が報われる社会を創る」をミッションに、真摯に経営に向き合う起業家に創業期から出資し、事業拡大・上場を支援する国内ベンチャーキャピタル。

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