「売上2万円」学生起業失敗から学んだ事業アイディアの見つけ方  ナイル 高橋飛翔社長(第2話)

「まずやってみよう」の落とし穴

ーー高橋さんは東大在学中に起業されています。学生起業を振り返って良かったこと、良くなかったことをお聞かせください。

良かった点は、早いうちからさまざまなビジネス経験ができたこと。21歳で数千万円のお金を使ってビジネスのやり方を学ぶことができたのは、起業ならではの体験だったように思います。

しかし、良くなかった点もたくさんあります。

「まずやってみよう」という格言が起業本に書いてあったのを曲解してしまい、家庭教師の派遣事業や東大生による授業動画配信サービスをとにかく手当たり次第に「やってみた」のですが、結果的にそれが全くうまくいきませんでした。

東大生による授業動画配信サービスは2000万円以上投じて、売上はたったの「2万円」。

安易に「まずやってみよう」ではなく、徹底的に市場をリサーチし、様々な人に会い、自分なりの勝ち筋を見つけてから取り組むこと。いま思えば当たり前なのですが、それを当時から実践できていたら、結果は全く変わっていたと思います。

 

ーー人脈や経験が無い学生にとって、業界のコアな情報を獲得する難易度は高いのではないでしょうか?

そんなことはないと思います。

10万円の市場レポートを買うくらいなら学生でもできると思いますし、人へのインタビューについても、学生から「起業を考えていて、プランについてお話を聞きたいので会ってください」とメールがくれば、どれほど著名なビジネスマンでも悪い気はしないでしょう。学生だからこそ、会える人もいるはずです。

さらに最近ですとスタートアップ支援のイベントなども多くあり、情報収集手段は枚挙にいとまがありません。

人脈や経験の有無のせいにするではなく、情報リサーチの大切さを真に理解し、実践できるか否か。これが特に学生起業においては、成功の分かれ道のように思います。

 

勝負は起業前準備で決まる

ーー高橋さんのように学生起業を目指す人にメッセージをお願いします。

自分がやっておいてなんですが、私は学生起業を強くはお勧めしておりません。

確率論をフラットに見たときに、学生起業はこじんまりした成功になったり、シード資金調達後にリビングデッドになってしまったりするリスクが高い。多くの学生にとっては、どこかで働いてから起業する方が成功率は高いでしょう。

「学生はとにかく起業しろ」みたいな煽り文句も時折見受けられますが、学生のみなさんは起業にどんな能力が必要で、どんな経験を積むことで成功確率が上がるかを冷静に見極めてください。

一方で、この話はあくまで確率論にすぎません。学生起業で大成功する起業家もたくさんいます。私が21歳の時に投資家から同じ話をされていたとしても、「それはあなたの考えですよね」と無視していたようにも思います(笑)。

そのような自我の強さも大事ですので、「俺ならできる!」という気持ちもあってよいでしょう。しかし、一度立ち止まって、様々なリスクを加味した上で、起業という選択肢を取れると良いのかなと思います。

 

ーーそして起業すると決めても、しっかりビジネスアイディアの準備に時間をかけるべき、と。

はい。繰り返しになりますが、起業前の準備で、5割以上勝負は決まってしまいます。

学生と社会人を比べた時に、このプランニングの重要性に対する感覚に大きな差があるように思います。学生は意識的に、この差分を埋めにいくことが大切です。

昨今でいうとお勧めの方法がベンチャー企業でのインターンシップです。バイト代をもらいながら、実務経験を積むことができる。こんなに美味しい話があるのは学生ならではです。

そういう世の中のあらゆる機会を活用して、徹底的に自分の能力を高め、情報収集をし、自分の起業プランをブラッシュアップし続ける。

そういう泥臭い事前準備が、起業の成否を決める最も重要なプロセスです。

 

 

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著者 伊藤紀行

著者 伊藤紀行

DIMENSION Business Producer:早稲田大学政治経済学部卒業、グロービス経営大学院経営学修士課程(MBA, 英語)修了。 株式会社ドリームインキュベータからDIMENSIONファンドMBOに参画、国内のスタートアップへの投資・分析、上場に向けた経営支援等に従事。主な出資支援先はカバー、スローガン、BABY JOB、バイオフィリア、RiceWine、SISI、400F、グローバ、Brandit、他 全十数社。 ビジネススクールにて、「ベンチャー戦略プラン二ング」「ビジネス・アナリティクス」等も担当。 著書に、「スタートアップ―起業の実践論 ~ベンチャーキャピタリストが紐解く 成功の原則」

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