新規事業開発のプロが語る、社内起業の要諦 アルファドライブ 麻生要一社長(第3話)

リクルートで社内事業開発プログラム「Recruit Ventures」や、スタートアップ支援プログラム「TECH LAB PAAK」などの新規事業を次々と立ち上げてきた麻生要一氏。2018年に起業し、企業内新規事業を支援するアルファドライブ立ち上げた。そんな同氏が考える起業家、そして社内起業家(イントラプレナー)に求められる素養とは?(全5話)

起業家と社内起業家、一番の違いとは

ーー社内起業も経験された麻生さんが考える、起業家とイントラプレナーの違いはなんでしょうか?

0から1を作るという意味では変わらないのですが、決定的に違うのが「説明・承認プロセス」の有無。起業家は誰に説明しなくても意思決定ができる。これが最大の違いです。

先ほどお話した「ユニークさ」にもつながりますが、説明責任がないからこそ、起業家は普通に見ると何をやっているかわからないくらいユニークなことが自由にできます。

 

ーー「説明・承認プロセス」がある社内起業家特有の困難にはどのようなものがありますか?

1から10が「売り方開発」、10から100が「事業グロース」のフェーズだと考えると、説明・承認プロセスという観点で社内起業家が壁によくぶつかるのが、ゼロイチもそうですが「1から10のフェーズ」です。

 

ーーどのような壁でしょうか?

売り方にはマス広告を投下するやり方もあれば、口コミマーケティングや営業部隊拡大というやり方もある。どのような配分や販売チャネルが自分たちのプロダクトに最適かを探索するのが「売り方開発」です。

この「売り方開発」をしていると、顧客からのフィードバックによりプロダクト自体の内容をピボットさせるべきタイミングが頻繁に起こります。ゼロイチフェーズを超えてようやく承認を得た事業計画なのに、次から次へと「ピボット」していく必要があるのです。

まだ実績が出ていない中で「事業モデルを変更すること」に対して会社の承認を得続けるのは容易ではありません。大きい会社の意思決定ロジックでは、「ピボット」の意義を許容してもらえないのです。

 

社内起業家に必須な「社内政治力」

ーー麻生さんはどのようにしてその壁を乗り越えられたのでしょうか?

重要なのは「社内政治力」です。この言葉はスタートアップ界隈の人がもっとも嫌う言葉かもしれませんが、大企業の中で新しい事業を立ち上げるためには社内調整は避けて通れません。

私もいろんな手札を使いながら、社内の調整をし続けました。

ちなみに私がよくやっていたのが「パワーポイントをいっぱい書く」ということ。顧客起点の話と全く真逆で本質的には意味がないかもしれませんが、社内の意思決定力学を理解した上でパワーポイントを大量に書いてキーマンを説得して回ると、安心して後押ししてくれるようになったりするのです。

 

ーー10から100の「事業グロース」フェーズについてはいかがでしょうか?

プロダクト価値や売り方の型がある程度見えて、あとは適切なタイミングで適切なリソースを投下し、競合にも対応していけば伸びるというフェーズです。

このフェーズでは、大企業の経営陣は驚くほど正しい意思決定をしてくれます。意思決定材料が揃っているため、大企業の意思決定ノウハウが力を発揮するのです。

このように、社内起業家は特に1から10の「売り方開発」を乗り越えること。そのために社内政治から目を背けないこと。

これが起業家にはない社内起業家特有の戦いだと思います。

 

 

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著者 伊藤紀行

著者 伊藤紀行

DIMENSION Business Producer:早稲田大学政治経済学部卒業、グロービス経営大学院経営学修士課程(MBA, 英語)修了。 株式会社ドリームインキュベータからDIMENSIONファンドMBOに参画、国内のスタートアップへの投資・分析、上場に向けた経営支援等に従事。主な出資支援先はカバー、スローガン、BABY JOB、バイオフィリア、RiceWine、SISI、400F、グローバ、Brandit、他 全十数社。 ビジネススクールにて、「ベンチャー戦略プラン二ング」「ビジネス・アナリティクス」等も担当。 著書に、「スタートアップ―起業の実践論 ~ベンチャーキャピタリストが紐解く 成功の原則」

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