起業家にとって大事な3要素とは? マイネット 上原 仁社長(第1話)

社会に対しての価値に、ただひたすら誠実に

――上原さんは松下幸之助さんに憧れて、小学生の頃から起業を志したとお聞きしています。10年以上会社を経営されている上原さんが考える起業家にとって大事な3つの要素とは何でしょうか?

「誠実さ」、「熱量」、「意志」、この3つだと思ってます。今回のインタビューもその「熱量」が伝わるようにお話ししますね。ベンチャー界のイベントでも最近は気合系のキャラクターになっていますので(笑)

 

上原 仁 Jin Uehara/1974年生まれ。神戸大学経営学部卒業後、1998年NTTに入社し同社のインターネット事業開発に従事。2006年7月株式会社マイネット・ジャパン(現マイネット)を創業し同社代表に就任。自社のモバイルCRM事業を国内3万店舗まで育成した後にヤフーへ事業売却しスマホゲーム事業に注力。現在はゲームタイトルを買取・協業により仕入れ、バリューアップさせるゲームサービス事業のリーディングカンパニーとしてスマホゲーム産業をリードする。

 

まずもって「誠実さ」です。誠実に、社会に対して真摯に向き合って価値を生み出すこと。底の底まで削り取られたとしても、最後まで誠実に社会に向き合い続ける姿勢が起業家には必要です。

私のいう「誠実さ」というのは、ドラッガーのいう「真摯さ」とも似ていると思います。最終的に利益を得るのはもちろん大事なんですが、私利私欲で構造を捻じ曲げてまで利益を取るという考え方をしていたら、まず物事はうまくいかない。

起業家だけでなく、社会人全てに言えることですが、基本的に「社会に対して価値を生む」ことが仕事をする人の存在意義です。その価値を自己定義し、とことん誠実に向き合うのが起業家だと思います。私はよく言いますが、「利益は社会からの通信簿」なのです。

率直に言って、起業して「とりあえずお金を儲けたい」と思っている人はやめておいたほうがいい。お金儲けの点でいうと、起業はリスクとリターンが全然合わないですから。

この世界を突き動かす、2つのもの

次に「熱量」の話ですが、起業家は超絶孤独です。そして、自分で設定した仮説は2割の確度でしか当たらない。要するに、頑張っても報われないことの方が多いんです。それなのに、頑張り続ける。起業というのは、相当に燃費の悪い活動ですよね。

だからこそ、それでも自分はやるんだという「熱量」を自分の中で沸き立たせ続けられることが大事です。いかに報われなくても、いかに折れそうになっても、自分が熱源となって、自分が定義した社会価値を作りきるんだと前に進み続ける熱量です。

同時に私の言う「熱量」は、リーダーシップにおいても全ての源泉になると思います。私は、この世界というのは2つの物事で動いていると思っていて、1つが論理、もう1つが気合です。気合のない論理は通じないし、論理のない気合、つまり熱量だけでも残念ながら想いは通じないのです。

しかも、2つの要素のうち、熱量はなくなってしまったらおしまいなのです。論理は外から持ってくることができる、補うことができるけれども、熱量は起業家が自分で持つしかないんですね。だからこそ起業家に大切なものの2つ目は「熱量」だと思っています。

 

――上原さんの中の熱量の変遷や、熱量を生み出したきっかけがあればお聞かせください。

私は比較的、元から熱量がある方だと思います。冷え切っている状態でも常に偏差値50以上は保っている、というイメージが私の熱量の状態ですね。

少し話は飛ぶかもしれないですが、この世の中で最も合理的な状態は「無」だと思っています。でも、この世界には揺らぎがありますよね。揺らぎが重なって様々な現象につながっているわけですよね。「無」を「理」、つまり整然とした状態だとすると、そうじゃない何かが重なれば重なるほど「熱源」になる。

私の場合、世代を超えて伝えられてきたもの、たとえば、親やその前の世代に積み重なってきたなんらかのストレスや悔しさみたいなものが、自分の中に「熱源」として注入されてきたように思います。

 

自分の「無」ではない「有」の側

私の父は、私生児に生まれ、不遇な育ちで希望の進学も出来なかったというコンプレックスを強く持っていました。そんな彼だからこそ持ちえた哲学、例えば「合理的であれ」とか、「3人息子を等価に育てる」といったものを私たち兄弟に徹底的に注入してくれました。

一方で、母も少し独特でした。いけばなの先生をやっているのですが、通常、県域の支部しかないところに、いつのまにか自分独自の「支部」みたいなものを作ってました。それくらいエネルギーのある人でした。いうならば、彼女も起業家なんです。

そんな母と父の教育を受けたからこそ、今の私がいます。

「無」の状態に対して、揺らぎ幅が大きいものを注入された状態、いわば先天的というより初期教育の中で熱源を詰め込まれた状態に置かれたおかげで、結果的にみんなからすると少し変わった熱量を持った性格に育ちました。

そんな性格なので、中学の頃には仲間はずれにされることもありました。「なにアイツ」「ようわからん」みたいな。そんな経験からきた「見返してやりたい」というコンプレックスのようなものも、創業するちょっと前までは自分の原動力になっていた面はありますね。

そんな様々な経験が、自分の中に「無」ではない何か、いうなれば「有」の側の揺らぎを作り、熱量を起こしているんだと思っています。起業した後でも、例えば自分と同じ時期に起業した仲間が突き抜けていく姿を見て「くそー」というのはありました。いまでも、良きライバル心が、熱量を生み出す熱源となってくれていますね。

 

――俺も負けていられないという思いが、熱量を生む種になっていくわけですね。

そうですね。もともと私は熱量が高い人間ですが、頑張って報われれば熱量は通常以上に、ハイパーに上昇します。笑

上場を挟んだここ数年、そのような状態が続いています。物事がうまくいかないストレスであったり、比較の中で感じるコンプレックスであったり、頑張ったら報われたという成功体験などが「揺らぎ」を生み出して、私の熱量をどんどん増幅させています。

 

 

>第2話「たとえ失敗しても事業が変わっても、ブレない理由」に続く

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DIMENSION 編集長

DIMENSION 編集長

「人・事業・組織に向き合い、まっすぐな志が報われる社会を創る」をミッションに、真摯に経営に向き合う起業家に創業期から出資し、事業拡大・上場を支援する国内ベンチャーキャピタル。

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