#起業家の素養
2016年4月にシンガポールで設立された広告テクノロジー会社・AnyMind Group。同社は、シリーズAラウンドで1200万ドルの資金を調達した後、設立後1年でタイやインドネシア、そして日本にまで続々と拠点を広げている注目株のベンチャー企業。今回は、そんなグローバル若手起業家の雄、AnyMind Group CEOの十河宏輔氏に急成長のポイントなどを聞いた。(全6話)
どんな状況でも揺るがない「自信」を持ち続けられるか
――起業家にとって大切なことを3つ挙げるとしたら、何だとお考えでしょうか?
まずは、「根拠のない自信」を持っていること。
2つ目は周囲の人を巻き込んでいく「巻き込み力」、3つ目が「ハングリー精神」ですね。
まず「根拠のない自信」がなぜ大事かというと、起業は自分の考えたビジネスモデルが100%上手くいくか分からない状態から始めなくてはいけないので、それをやり切るための強い気持ちが必要です。
最初は我々もハリボテのような状態からのスタートだったんですが、私を中心として、メンバー全員「絶対イケるよね」という「根拠のない自信」があったのが今の事業成長に繋がっていると思います。
リーダーである起業家が、どんな状況においても自信を持ち続ける事。これはベンチャーにおいては必要不可欠だと思います。
十河 宏輔/1987年生まれ。AnyMind Group CEOとしてグローバルでのビジネス拡大を牽引。 前職、マイクロアドでは東南アジアのCEOとしてAPAC全域のビジネス拡大に従事。 「Asia’s Most Influential Digital Marketing Professional」を受賞、2016年に 「Most Influential Global Marketing Leaders 2016」、2017年にはMumbrella Asia Awardにて「Under-30 Achiever of the Year」等、数々のAwardsを受賞。
――「根拠のない自信」をお持ちなのは十河さんご自身の性格に由来するものですか? それとも何かの原体験から身についたものでしょうか?
私の家は、両親とも経営者の家系なんですよ。
そのため、小さい頃から社長だった2人の祖父の姿を間近で見てきたというのはあるかもしれませんね。祖父が経営をしている姿は自信に満ち溢れていた。その影響は少なからずあると思います。
それに、祖父や両親が褒め上手だったので、子供の頃から自分のことを「天才だろうな」と思っていたんです(笑)。何しろ、小学生の時の口癖が「僕、天才ですから!」でしたからね。(笑)
高校生になった頃には、孫正義さんや三木谷浩史さんといった有名な起業家が世に続々出始めました。彼らを見て、「やっぱり、僕もこの業界でいつか起業家になりたい」という気持ちを自然と抱くようになりました。
新卒で入社したのは国内最大級のネット広告配信事業者であるマイクロアドでしたが、その時も入社時から「やれる!」という気持ちが強かったですね。その自信が結果として営業成績にも繋がっていったように思います。
本気で信じ、本気で伝えれば、周囲はおのずとついてくる
――2つ目の「巻き込み力」が大事とは、具体的にどのようなことを指すのでしょうか?
起業して強く思ったんですが、会社を応援してくれる「応援団」、つまり会社のファンをどんどん作っていくことが重要なんですよね。
一番間近なところでいうと、幹部層や社員全体を巻き込んで、我々の信じることを彼らにも信じてもらわないといけない。もちろん、投資家やクライアントの方々に関してもそうです。
結局、会社を大きくするために自分ひとりでやれることは限られているので、色んな人を巻き込みながら味方につけて、事業を拡大していかなくてはいけないなと考えています。
――どうやってそこまで人を巻き込んでいけるのでしょうか?
もともと人の期待値を上げるのが得意なタイプではあります。
私自身は結構ダイレクトな人間なので、「いいものはいい、悪いものは悪い」というのがきっぱりはっきりしています。なので、そんな私が真剣に「これをやりたい!」と思っていることについて話をした時、その本気度がしっかり伝わっているのではないでしょうか。
やりたいことを本気で信じ、本気で伝える。人を巻き込む方法はこれに尽きると思います。
――「根拠のない自信」を持っているからこそ、人を巻き込んでいけるという部分もあるということですね。巻き込もうとしていく中での失敗などはありましたか?
基本的にポジティブで、失敗してもあまり失敗だと思わないんですよね(笑)。
もちろん、気づいていない失敗はたくさんあると思うのですが、何か問題が起こっても「これはさらに成長できるポイントなんじゃないか」と考えるようにしています。
失敗した時でも常に上を向いてポジティブに生きていることも、人を巻き込むポイントかもしれませんね。
――3つ目の「ハングリー精神」について、伺ってもよいでしょうか?
AnyMind Groupがここまで成長し続けられているのは、周囲からどれだけ褒められても満足しない、「ハングリー精神」を持ち続けているからだと思います。
一定の利益が出た段階で、その状態のままキープしようと思えば、いくらでもサボることは可能な訳ですよね。特にチャレンジしなくたって、ある程度の生活はできます。
でも、我々の中には「自分達に満足したくない」「成長し続けたい」という気持ちがあります。それがスピードを落とさず、事業を加速させる重要なポイントだと思うんです。
私が考える「起業家」というのは、そういうハングリー精神を持ったアグレッシブな人です。私自身も、「AnyMind Groupをアジアで一番大きい会社にする」という理想を本気で目指して事業を進めています。
本気で高い志を持ち、「ハングリー精神」を持ち続ける。そういう素養があれば「結果を出してて凄いよね」と言われても、「いえいえ、まだまだこれからですから」という謙虚な気持ちを持ち続け、成長し続けることができると思います。
>第2話「どこの国でも勝負できる起業家になるまでの道のり」に続く
>AnyMind Group公式HPはこちら
著者 小縣 拓馬
起業家向けメディア「ベンチャーナビ」 編集長。玩具会社のタカラトミーを経てDIに参画。ビジネスプロデューサーとして、主に国内ベンチャーへの投資・事業支援・戦略立案を担当。 ~「More than Meets the Eye」 これは玩具会社時代に担当していたトランスフォーマーというシリーズの代表的なコピーです。見た目だけではわからない、物事の本質に焦点を当てること。そんな想いで記事を提供していきたいと思っています。~
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