「社会基盤の最適化」を目指し、SaaS化、そして海外へ。株式会社ALGO ARTIS 永田 健太郎社長(第4話)

「社会基盤の最適化」を目指し、生産や配船といった極めて複雑な運用計画に特化した計画最適化ソリューション『Optium(オプティウム)』を開発・提供している株式会社 ALGO ARTIS。株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)の中で AI を活用する新規事業としてスタートし、2021年7月にスピンオフし設立された。同社代表取締役社長 永田 健太郎氏に起業家の素養、スピンオフなどについてDIMENSIONビジネスプロデューサーの家弓 昌也が聞いた。(全4話)

”具体的な課題を解決する”AIサービスであるか

ーー昨今、AI関係のサービスが無数に立ち上がっていますが、真に社会に認められるAIサービスを立ち上げる、或いは見極めるために、どういったポイントに注目すべきでしょうか?

それは、「具体的な課題を解決するAIサービスであるか」だと思います。

”具体的な課題を解決する”ということは、つまりは「顧客への価値提供」に向き合っている証だと思うんですね。

ここで気をつけなければいけないのが、技術やAIというのはあくまで手段であるということ。

解決したい課題が先にあって、それに対して、世の中に存在する様々な手段の中から「この技術が必要だよね」という、この順番が大切だと思っています。

逆に言うと「技術ありきで考える」のではないのがポイントです。これは意外と難しく、大企業でも翻弄されているところだと思います。

現在、Generative AIや量子コンピューターなど、多くの流行りの技術があります。しかし、それらは適切に使えば有用ですが、適切に使わなければ無意味です。ただ流行に飛びつくと、3年後には何も価値を生むことができず、貴重な時間を無駄に過ごすことになります。

だからこそ、自ら具体的な課題解決や価値創出を最初に考え、それに最も合った技術を選んだり、創り出すことが重要です。

 

ーー「課題解決できるか」をベースに、どの技術が将来的に必要とされるかを考えることが重要なのですね。

そうですね。

生き残る技術と生き残らない技術の違いは、結果として「どれだけ価値貢献できたか」だと思うんです。そのため、私はマクロレベルで技術の将来を予想することはそれほど重要視していません。

私は技術を見極めるには、具体的な課題をベースに考えることが最も有効だと感じています。

具体的な課題に向き合う中で、それを解決する手段として技術を考える。その時に初めてその技術について深く学び、「これは違った」とか「これならうまくいく」という発見が生まれ、身になっていくのだと思います。

その前半部分がなければ、ただの学問になってしまうので、ビジネスとしては適切ではないと感じます。

ビジネスというのは何よりも課題解決を中心に考えなければ進まないものだと思っていて、「特定の技術を使いたい」という不自然な考えから始めると、事業を進める上で「頑張って使ってみたけれど上手くいかない」と後々苦労することになると思うんですね。

具体的な課題をベースに考えていけば、自ずと価値ある技術と向き合うことになるのだと思います。

”主人公”からブレないこと

ーー顧客のニーズをいかにプロダクトに反映できるかという時に、色々な立場の方からの要望にどのようにして優先順位をつけるかは難しいところだと思います。顧客ニーズの効果的な拾い方についてお伺いできますでしょうか。

まず、最優先に考えるべきは、顧客にとっての投資対効果の最大化だと思います。

我々の事業の場合、プロジェクトのスコープが広範囲になればなるほど、自由度と価値提供の可能性が広がりますが、一方で、ものづくりとしてはコストが膨らんでしまいます。

このトレードオフの関係を見つめ、どこで区切るのが顧客にとっての投資対効果が最大化されるかを考えることが重要だと思います。

そこさえうまく決まってしまえば、後はどのように問題を解決するかに集中できます。

考え方としてはそういう順番ですね。

 

ーー顧客と合意を得ながら進めていく中で、相手側にも沢山の意思決定者がいらっしゃいます。

大企業では意思決定プロセスが多くの場合存在しているので、そのプロセスを理解し、顧客をサポートする必要があります。

ただし、忘れてはならないのは、「誰が使用するのか」という点。

誰が使い、誰がその製品によって助けられるのかを考えるとき、その主人公(中心となる人物)が常にいるはずです。

ともすると主人公ではない意思決定者を中心に考えてしまって、それが主人公にとって何のメリットにもなってなかった、みたいなことになりがちだと思います。

そこがブレないように顧客とのコミュニケーションをしっかりと行い、「この人が使うんですね、だからこの人が助かる製品を考えて作りましょう。」という考え方は、我々側でも注意深く行う必要があると思っています。

SaaS化、そして海外へ

ーー御社の今後の展望について教えていただけますか。

大きく2つのチャレンジがあります。

1つ目は、現在のソリューションビジネスから、プロダクトベースのビジネスへと展開すること。

我々のミッションである「社会基盤の最適化」というのは、世の中全体がより最適な形で回るようにしたいという意味なんですね。

しかし、現状のプロダクトでは、導入のプロセスにかなり時間がかかるため、結果的に費用もかさんでしまう傾向にある。それでも十分な価値提供はできますし、ビジネスとしては良いのですが、一部の大企業にしか導入できないというもどかしさがあります。

ただ、我々のこのビジネスを展開していく中で、技術が磨かれ、ノウハウも蓄積され、信用も確立されてきました。これにより、顧客に共通するニーズにフォーカスした形で、プロダクトベースのビジネスが展開でき、SaaSとしてより迅速かつ安価にソリューションを提供できると思っています。

これがうまくいけば、より多くの会社に展開でき、世の中全体の生産性向上に貢献できると思います。

2つ目は海外展開です。我々は発電所や化学プラント、物流などを対象に事業を行っていますが、これらは日本国内だけの話ではありませんよね。

グローバルにも同じ課題が存在し、実際、海外企業からの問い合わせも来ています。そのため、海外展開は今後確実に進めていきたいと考えています。

我々は、このSaaS化と海外展開の2軸で成長戦略を描いています。最終的には、海外でのSaaSビジネスが我々の事業の大部分を占めることが成功のイメージです。

ニーズがあることは分かっているので、それこそ、ここからどうやっていくか一緒に考えて、走ってくれるメンバーを募集しています。

 

 

 

>前のページ「優秀なAIエンジニアが集う株式会社ALGO ARTISの「採用と組織づくり」とは/ 永田 健太郎社長(第3話)」

 

>ALGO ARTISの採用情報はこちら

>ALGO ARTISの公式HPはこちら

家弓 昌也

家弓 昌也

名古屋大学大学院航空宇宙工学修了。三菱重工の総合研究所にて、大型ガスタービンエンジンの研究開発に従事。数億円規模の国家研究プロジェクトを複数リードした後、新機種のタービン翼設計を担当。並行して、社内の新規事業創出ワーキンググループに参加し、事業化に向けた研究の立ち上げを経験。 2022年、DIMENSIONにビジネスプロデューサーとして参画。趣味は、国内/海外旅行、漫画、お笑い、サーフィン。

Others 関連記事

DIMENSION NOTEについてのご意見・ご感想や
資金調達等のご相談がありましたらこちらからご連絡ください

E-MAIL MAGAZINE 起業家の皆様のお役に立つ情報を定期配信中、ぜひご登録ください!*は必須項目です。

This site is protected by reCAPTCHA
and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.