#人事・組織
「日本の工場から、世界一流のブランドを作る」というビジョンに基づき、山田氏自らが直接足を運んで厳選した工場と顧客とを直接繋ぐファッションブランド「ファクトリエ」。同ブランドを生み出し、ものづくりのあり方を変えようとするライフスタイルアクセント株式会社代表取締役・山田敏夫氏に、社会的価値を生み出す起業について聞いた。(全6話)
100年続くブランドで、日本のものづくりを復興する
――山田さん自身の信念やこれから成し遂げたいことをお聞かせください。
ビジョンは「日本から世界ブランドを作る」というところから全くブレていません。そのための歩み方として、「日本のものづくりの復興」というミッション、「語れるもので日々を豊かに」という行動指針を掲げています。たとえば、服を買ったら月曜日がちょっと楽しみになったりしますよね。そういう風に、人々のライフスタイルにとって幸せなアクセントを与えられる存在になりたい。「ライフスタイルアクセント株式会社」という社名は、その想いが反映されたものです。
そのビジョンを実現するべく私は未だに工場をひたすら回っています。我々が提携している工場の情報はオープンにしているので、我々が提携すると他のアパレルメーカーから工場に連絡が来ることも多いのですが、そんな時は「他の企業から連絡が来たとしても、単純に安い下請けとして仕事を受けるのではなく、我々が払っている金額と同等の金額を請求してくださいね」とお願いしています。工場が儲からないと「ものづくりの復興」はありえないですから。(※ファクトリエでは、工場に出荷価格の決定権を委ね、それに従って販売価格が決められている。)
――チームを作るにあたって考えたことは、何かありますか?
我々の考える「ものづくりが儲からないといけない」という「四方よし」の考え(第3話リンク)は起業当初からずっとありましたから、売上が数百万円だった時代も、黒字には絶対しないといけないと思っていました。ですから創業当初は自分の給料なんて出してなかったですし、最初の2年半は社員1人でやっていました。たとえ人を採用しても黒字になるような試算を徹底的にしてから、ようやくチームを作るようにしましたね。
もうひとつ、チームを作るにあたって考えたことは、「100年続くブランド」を繋ぐ仲間が必要だということ。本物のブランドになれるかなれないかは100年ぐらい歴史が必要だと思っているんですが、「この100年やっていく」と腹を決めた時に、やっぱり組織がそれを繋いでいくんですよね。
大きな規模を目指している訳ではないんですが、社会的に大きな意味を持つブランドとして100年後も残っていくために、ちゃんとした組織にしていかなければならないと感じています。「ファクトリエ」の理念に共感してくれ、仕事と人生のwillがリンクしているメンバーたちがいて、大切なことを部下や周囲にきちんと伝えていける組織……。そんな組織が「日本から世界ブランドを作る」というビジョンを叶えるために必要だと思っています。
「やらないで後悔するリスク」は「やるリスク」の数百倍
――最後に、このVenture Naviの読者や、将来起業を目指す人たちへメッセージをお聞かせください。
思っていることが2つあって、ひとつは「ビジョンに魂が込もって、はっきりしていたら、『この指止まれ』で止まってくれる人は必ずいる」ということ。実際、私は創業から2年半の間は1人でやっていましたが、ビジョンに共感して手伝ってくれる8人のボランティアがいました。
いまは副業も徐々に解禁されているご時世ですから、市場がこうとか、戦略ありきではなくて、自分のやりたいことを純粋に目指してみたら、意外と「この指止まれ」で仲間は集まってくれるんじゃないでしょうか。
次に、「リスクを取らないことが人生最大のリスク」だということ。人生って借り物なので、死ぬのは来週かもしれないし、1ヶ月後かもしれないし、50年後かもしれない。そう考えたときに「後悔しない」ことこそが人生において一番大事だと思うんです。
リスクにも2つあって、ひとつは「目の前のことをやるリスク」、もうひとつは「やらないリスク」です。でも、2つを区別して考えている人はそう多くない。
私がよく言うことなんですけど、「目の前のことをやるリスク」は突き詰めて考えると金額で換算できるんです。「ああ、これだけ給料が減るな」とか「何百万借金しないといけないな」とか。でも、「やらないで後悔するリスク」はそれとは比べ物にならない。本当に数百倍だと思っています。お金では買えない、人生という借りている命をどう燃焼させるかということなのですから。
なので、腹の底から起業して何かやりたいと思っている人は「この指止まれ」から始めてほしいし、「リスクがあるから」とうじうじしているんだったら、「いやいや、やらないことの方がずっと大きなリスクでしょ!」と伝えたいですね。
>第5話「100年続く世界ブランドへの道のり」に戻る
>>ファクトリエ公式HPはこちら
著者 小縣 拓馬
起業家向けメディア「ベンチャーナビ」 編集長。玩具会社のタカラトミーを経てDIに参画。ビジネスプロデューサーとして、主に国内ベンチャーへの投資・事業支援・戦略立案を担当。 ~「More than Meets the Eye」 これは玩具会社時代に担当していたトランスフォーマーというシリーズの代表的なコピーです。見た目だけではわからない、物事の本質に焦点を当てること。そんな想いで記事を提供していきたいと思っています。~
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