#ビジョン
「民間版の世界銀行」を目指す五常・アンド・カンパニー株式会社。2014年7月創業から急成長を遂げ、2019年9月末時点で顧客数47万人、グループ従業員数も2,700名を超え、DIMENSIONも含めた投資家から42.2億円のシリーズC資金調達も発表した。そんな同社・代表取締役の慎泰俊氏に起業家の素養、ビジョンなどについて聞いた(全6話)
自分の心を磨き続ける
ーー起業家の素養( 第1話リンク)として挙げられた2つめの「諦めないこと」についてお聞かせください。
これは生存者バイアスがかかっているのかもしれませんが、うまくいっている起業家はみんな「諦めていない」んです。辛いことばかりある起業家人生ですが、それでも続けられるストレス耐性が必要ということだと思います。
私はこの「諦めない力」は慣れで身につけられるものだと思っています。階段のようなもので、いきなり3段跳びは出来なくとも1段1段のぼっていくことはできる。今の自分のキャパシティに対して相対的に少しずつ「+α」し続けることで、ストレス耐性は高まってくるのです。
もう少し別の例えをするなら、10キロしか走ったことがない人が40キロ走るのはとても辛いと感じるでしょうが、100キロ走ったことある人にとって40キロは大したことがありませんよね。
私も20年くらいずっと、常に自分のキャパシティに少しだけ「+α」した負荷をかけ続けてきました。つぶれてしまわない程度の負荷をかけ続けていると、体が慣れて自然とストレス耐性が強くなってくるものです。
ーーなぜ常に自分に負荷をかけ続けることが出来たのでしょうか?
これは漠然とした話ですが、昔から歴史や人物伝が好きで、歴史的な偉業を成し遂げた人たちはみな人間としても立派な人たちばかりだなと感じていました。理想を語るにはそれだけの人格がいると、子供ながらに感じていたのです。
たとえば、革命家のチェ・ゲバラは「自分の心を芸術家のような気持ちで磨き続けてきた」という趣旨の言葉を残しています。コツコツと自分の心を鍛えていたのだなというのがすごくわかる言葉です。
なので、夢を語るに足る自分になるために、自然と自分に負荷をかけ続けてこられたのだと思います。
自分の「無力さ」を確信するが一歩目
ーー起業家の素養として挙げられた3つめの「自分より優秀な仲間を連れて来られること」についてもお聞かせください。
創業初期のスタートアップが潰れても、特に誰も困ることはありません。世界は変わらず回り続ける。そんなスタートアップが生き残るためには、夢見ている世界を、どれだけ多くの人が「一緒に見たい」と思ってくれているかどうかだと思っています。
時折、人に憎まれてでものし上がろうとする起業家がいますが、会社の調子がいい時はそれで良くても、悪くなると一気に周りは離れていきます。
そうではなくて、良い時も悪い時も、一緒に成功を願い、協力してくれる仲間がいるかどうか。これがスタートアップが存続する必須条件なのではないかと考えています。
ーーどうすれば自分より優秀な仲間を連れてくることができるのでしょうか?
「自分の無力さを心の底から確信すること」だと思います。言い換えると、自分1人で出来ることなんて本当にたかが知れていると心の底から思うことが私にとってはターニングポイントでした。
昔の私も含め、起業家にありがちなのが「4番バッターは俺、ピッチャー俺、監督も俺。そんなチームだけど来る?」といった態度で人を集めようとすること。これでは自分のファンはくるかもしれませんが、すごい人は集まってきません。
本当に恥ずかしいことですが、これまでは、心のどこかで「いざとなれば自分でなんとかする」と考えていた節がありました。ですが、これから展開する国のリストを作った際にその数が70ヶ国あって「これは絶対に自分1人じゃ無理だ」と確信したんです。
自分の無力さを確信すると、その必死さが人を口説くときの態度に出ます。優秀な人であればあるほど口説かれ慣れているので、小手先のテクニックは通用しません。起業家の本心を見抜いて、力を貸すかどうか判断すると思います。
ーー「自分が無力である」と素直に認められるにはどうすれば良いのでしょうか?
これは先ほど( 第1話リンク)お話しした「自己肯定感」と関わるところで、自己肯定感が高い人は素直に自分の無力さを認められる傾向があるように思います。
どういうことかというと、自己肯定感が高い人は自分が無力だと悟っても「自分は生きていていい」と思える。自己肯定感というのは、自分が無能であっても自分の存在価値は薄れないと確信できることだからです。
逆に、自己肯定感が低い人は優秀な人たちに囲まれると自分の存在価値が無くなってしまうのではと不安になってしまうんです。それでは優秀な人が集まる組織は作れません。
自分の無力さを素直に認めることが、自分より優秀な人を仲間にする秘訣だと思っています。
>第3話「世界を変える起業家になるために必要な2つのこと」に続く
>第1話「誰もが自分の宿命を乗り越えることができる世界をつくる」に戻る
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DIMENSION 編集長
「人・事業・組織に向き合い、まっすぐな志が報われる社会を創る」をミッションに、真摯に経営に向き合う起業家に創業期から出資し、事業拡大・上場を支援する国内ベンチャーキャピタル。
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