1人生を懸ける「ミッション」と出会う方法 PR TIMES 山口拓己社長(第1話)

「行動者発の情報が、人の心を揺さぶる時代へ」をミッションに掲げ、国内シェアNo.1のプレスリリースプラットフォームを運営する株式会社PR TIMES。2016年3月に東証マザーズへ上場し、2018年8月には東証一部への市場変更も果たした同社 代表取締役社長の山口拓己氏に、経営者としての素養や成長事業の創り方について聞いた(全4話)

事業を通して成し遂げたい「志」に出会えた

ーー経営者にとって重要だと思う素養をお教えください。

私は人が働く理由は以下の5つのパターンの組み合わせだと思っています。

 

1:やりたいからやる(例えば趣味嗜好)

2:できる、もしくはできるようになりたいからやる

3:何かを得たいからやる(例えばお金、承認など)

4:なりたいからやる(例えばプロスポーツ選手、博士など)

5:社会に対して何かを成したいからやる

 

私の場合、PR TIMESを始める前は1〜4のどれかの組み合わせで仕事を選ぶことが多かったのですが、この事業と出会ってはじめて5の「何かを成したいからやる」という職業観に変わりました。

「何を社会に対して成し遂げたいか」という志が経営者には必要不可欠ですし、私はこの事業をやることを通して「行動者発の情報が、人の心を揺さぶる時代へ」というミッションに出会うことができました。これはとてもラッキーなことだったと思います。

 

山口拓己/1974年生まれ 1996年4月、新卒で山一證券入社後、アビームコンサルティングなどを経て、2006年3月、ベクトルに入社。取締役CFOに就任し、上場準備責任者としてIPOへ向けて指揮を執る。2009年5月、PR TIMES代表取締役就任。2016年3月、東証マザーズ上場、2018年東証一部へ市場変更。

 

ーーPR TIMESを始める前から志を明確に持たれていたわけではなかったのですね。

私の場合は、PR TIMESの事業が志を育んでくれたと思っています。

PR TIMESの前身となるのが、2006年5月にベクトルが立ち上げた「キジネタ.com」というネットPRサービスです。インターネットの時代に合った、企業とメディアのリレーションを構築する新しい記事ネタ流通サービスというコンセプトでした。

とはいえ、当時、「プレスリリースは終わった」とも言われている時代で、コンセプトはあるものの、肝心の「何を流通するのか」がないまま会社をつくり、サービスをローンチしてしまった状態だったんです。それをなんとか立て直すというのが私の最初のミッションでした。

最初の仕事は立ち上げたサービスを即日停止する、後ろ向きな仕事でしたね。

 

ーー壮絶な船出ですね。

それまでは取締役という肩書きはあったものの、真の意味での経営者ではなく、業務執行の責任者、という意識レベルだったのだと思います。しかし、修羅場に追い込まれてはじめて自分のリソースを超えて機会を追求するという「アントレプレナーシップ」が自分の中で芽生えました。

「アントレプレナーシップ」は会社の代表になったら自動的に身に付くかというとそうではありません。平時から持てればベストですが、誰もがコントロールできない事態に翻弄され、自ら追いつめられた修羅場のなかで徐々に培われた、というのが私のケースだったと思います。

 

事業が持つ社会的意義を捉えなおす

ーー「プレスリリースは終わった」と言われる中で、どのようにして「行動者発の情報が、人の心を揺さぶる時代へ」というミッションに出会われたのでしょうか?

2008年頃からインターネットのデバイスがPCからスマートフォンに変わって、生活者はいつでもすぐに検索して調べるようになり、またSNSは閉じた空間からFacebookやTwitterといったオープンなサービスへ移り変わりました。このようにコミュニケーションや情報流通の劇的な変化が、プレスリリースの事業環境を根底から覆す変曲点となりました。

そしてもう1つ、私の中で「志」が芽生えるきっかけとなったのが2011年の東日本大震災です。それまで、私は自分たちの事業が与える社会への影響をかなり限定的に捉えていました。

しかし、震災の時に「社会的に重要な役割」を果たすべく、困難に立ち向かって働き続ける人たちの姿勢に刺激を受けました。

例えば、ヤフーさんはYahoo!ニューストピックスの編集を即日、大阪オフィスでも作業を開始して、翌日には24時間体制とし、翌営業日には東京だけでなく、名古屋、大阪それぞれの拠点で行えるようにしていました。ヤフーさんが当時掲げていた「人々の生活と人生のインフラとして、どんな時でもいちばん頼りになる存在であり続けたい」という想いが突き動かした行動だったと思います。

私たちも自分たちに何ができるか考え、震災の翌営業日に2つのプレスリリースを出しています。

1つめは「今の状況において、各社、情報発信が適切か慎重に検討していただき、内容に応じて発表延期を推奨する」というもの。

2つめは「震災に関わる情報の発信が、私たちの事業が有料であることによって阻害されているのなら、その情報は無償にしてでも積極的に発信していただきたい」というものです。

計画停電の影響などから自宅待機措置を余儀なくされるなか、サービスを止めずに顧客やメディアに対応し続けるのは本当に大変でした。ただこの経験がきっかけとなって、自分たちの事業のポテンシャルや社会的な使命を見つめ直し、それに忠実であるか自問自答するようになりました。そしてその後のNPO・NGO、スタートアップへのサービス無償提供、さらに地方地域やスポーツの支援といった取り組みにつながっていきました。

ミッションについては、自分の原体験から生まれることもあれば、顧客から学んだり社会課題から設定したりすることもあるでしょう。私はたまたま始めたサービスがいろんな経験を積むきっかけとなりました。間違いを犯し、失敗から学び、私たちの事業は何なのかを少しずつ深く考えられるようになり、いまのミッションに出会えたのだと思います。

 

 

>第2話「子会社社長就任、そして上場。山口氏が語るキャリアの創り方」に続く

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DIMENSION 編集長

DIMENSION 編集長

「人・事業・組織に向き合い、まっすぐな志が報われる社会を創る」をミッションに、真摯に経営に向き合う起業家に創業期から出資し、事業拡大・上場を支援する国内ベンチャーキャピタル。

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