#ビジョン
「日本的面白コンテンツ事業」を業務内容として掲げ、ソーシャルゲーム事業、ゲーム音楽事業、ウェディング事業、葬儀事業など、多岐にわたるビジネスで話題を呼び続けている「面白法人カヤック」こと株式会社カヤック。同社CEO・柳澤大輔氏に起業家としての心構えや、ベンチャー企業の組織づくりについて聞いた。(全5話)
職能を突き詰めてやり続ける中でしか幸せは訪れない
――近年、資金調達ブームと言われるほど、昔に比べて簡単に資金調達できる状況かと思います。この状況に対してなにか感じられていることはありますか?
私は「職能」というものに興味があるんです。
冒頭で少しお話ししたように(1話リンク)、起業家や経営者の職能が何なのかというのを突き詰めて、一生懸命やり続ける中で成長していく、というのがその人の人格成長や幸せに繋がっていくと思っています。
一方で、どうやって成長していくのかは時代によって状況が違っていて、ベンチャーの起業についても、物凄く苦しんでお金を集めなければいけないという時代ではもうないのかもしれません。
ただ、職能を突き詰めると、簡単にお金を集めることが出来ても、結局会社を大きくしていかない限り真の経営者にはなれないので、どちらにせよ困難はあります。経営者という職能には、やはり覚悟が必要だと思いますし、上手くいかない事業が一定数あるという状況は今も昔も変わらないんじゃないでしょうか。
我々は創業時からカヤックを「面白法人」と称していますが、会社を立ち上げる際にも「会社が面白いなんてけしからん」「そんな甘いもんじゃないぞ」と言われました。時代に応じて成長の方法や困難な事に違いはあれど、結局職能を突き詰めてやり続ける中でしか幸せはない、ということはいつの時代も共通だと思います。
――素朴な質問なのですが、なぜ職能に興味を持たれているのでしょうか?
何ででしょうね(笑)。
言えることは、1つのことを極め続けている人の本とかを読むと面白いんです。生き方としても面白いし気づきがあるし、「この職業を突き詰めるってどういうことか」を徹底していく先に、仕事というものの本質があるんじゃないかという気がするんです。職をくるくる変えていると、そんな境地にはたどり着かないんだろうなと思います。
たとえば、私はStartup Weekend TOKYOやカンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバルなどの審査員をやっていたんですが、そういう時にも「審査員になる人というのはどういう人なのか」「審査員長になれる人はどういう能力が必要なのか」を見極めていくようにしています。
どの職能が偉いとか、そういう優劣は無くて、起業家も経営者も一つの職能に過ぎません。どんな職能でも良いので、どの職能を選んでどこを突き詰めるか、ということ以外に仕事の真の意味は無いのではないのでしょうか。
「天職」をどう見極めるのか
――社長日記で「天職の見つけ方」を書かれていました(リンク)。柳澤さんにとって、まだ道半ばかとは思いますが、起業家は天職でしたでしょうか?
先日「鎌倉資本主義」という考えを発信させていただきましたが(リンク)、上場企業経営者であり社会起業家とも言えるこの職能を、突き詰めてやり続けていこうと考えています。
ブログにも書いていますが、自分の選ぶ道が「天職」かどうか。それは、「その仕事をしていて、気づきが多いかどうか」が鍵になります。
ーーーーーーーーーーーー
「いまの仕事は天職である。」
そう言い切れる人は、どのぐらいいるのでしょうか。
その割合は見当もつきませんが、その仕事をとおして、それなりのことを成し遂げている人というのは、おそらく天職についている人なのではないかと思います。であれば、できるだけ早く自分の天職というものを見つけた方がよいのではないかと思います。
そして、さらにこれは個人的な信念ですが、おそらく誰であっても、その人にとっての天職がある。そう僕は信じています。そこで、今回は、僕が独自に発見した「天職の見つけ方」を、お伝えしたいと思います。
では、いきなり結論を申し上げます。
「その人にとっての天職とは、その仕事を通して、その人に多くの気づきを与えてくれるものである」
(後略)
ーーーーーーーーーーーー
私も起業家という職能の中でたくさんの気づきを経て、「これに賭けよう」と覚悟が定まったように思います。
様々な方法で「面白法人」として新たな価値を発信し続ける
――最後に、このメディアの読者の方や、起業を目指す人たちへのメッセージをお聞かせください。
難しいですね……。今まで語ってきたところに全てが詰め込まれているので、改めて話すことは特にありません。
ただ、ひとつ言うなら、ベンチャーの果たすべき役割は「新しい価値を生み出す」ことです。
生み出す価値の中には、今までにない事業を通じて最速で規模を拡大し困っていた人達を助ける、といった価値ももちろんありますが、我々のように組織や会社の新しいあり方や働き方を発信するという価値もあって良いわけです。
例えば、私が「鎌倉資本主義」と呼んでいる活動や(リンク)、弊社が本社を鎌倉に置き続けていることも、新しい組織のあり方を発信する活動の一環です。
新しい価値の生み出し方にもいろんなルートを見つけ出すのがベンチャーらしさではないでしょうか。
(鎌倉オフィス内の様子)
――鎌倉を拠点にすることに葛藤はあったりしなかったのでしょうか。
あまりないですね。人材採用のしやすさや、オフィスを確保しやすいといった理由で都内に移ってしまうのは確かに合理的だとは思います。でも、鎌倉に限らずどこの地方も同じような困難を抱えていて、我々はそういった困難を含めて変えていきたいと思っています。
鎌倉オフィスの取組も含め、今後も様々な新しい価値を発信し続ける存在であり続けたいですね。
――本当に「面白法人」の目指す姿はブレないんですね。
我々は2014年12月に上場しましたが、上場前と後でも経営に関してはほとんど意識は変わっていません。上場する過程でルールに適応していくので、そこで色々やり方を変えた部分はもちろんありますが、「上場してカヤックがつまらなくなった」という感覚がある人はあまりいないんじゃないでしょうか。
ルールや時代が変わっても、また違うやり方で「面白法人」として新しいこと、面白いことを発信し続けていく。これが我々の存在価値だと思います。
>第4話「「なにをするかよりも誰とするか」を徹底する方法」に戻る
>面白法人カヤック公式HPはこちら
>柳澤社長日記はこちら
著者 小縣 拓馬
起業家向けメディア「ベンチャーナビ」 編集長。玩具会社のタカラトミーを経てDIに参画。ビジネスプロデューサーとして、主に国内ベンチャーへの投資・事業支援・戦略立案を担当。 ~「More than Meets the Eye」 これは玩具会社時代に担当していたトランスフォーマーというシリーズの代表的なコピーです。見た目だけではわからない、物事の本質に焦点を当てること。そんな想いで記事を提供していきたいと思っています。~
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