総合リユースショップ『トレファク』。株式会社トレジャー・ファクトリー 代表取締役社長 野坂英吾氏が語る「起業家の素養」とは(第1話)

全国に200店舗以上展開する総合リユースショップ「トレジャーファクトリー」を運営する株式会社トレジャー・ファクトリー。2007年、東証マザーズ上場。2022年、東証一部から東証プライムに市場変更。現在ではタイや台湾にも店舗を持つ。同社代表取締役社長 野坂 英吾氏に起業家の素養、海外展開のポイントなどについてDIMENSIONビジネスプロデューサーの巻口賢司が聞いた。(全4話)

世の中の当たり前を疑い、限界の先で工夫せよ

ーー野坂社長にとって、起業家として重要な素養を3つ挙げるとすると何でしょうか。

1つ目は、「世の中の当たり前と思われていることに疑問を持つこと」です。

世の中で難しいと思われていることや、無理だと思われていることを切り開いてビジネスにすることが非常に大事だと考えています。

これは、私自身の幼少期が原体験になっています。

野坂 英吾/1972年生まれ
商社勤務の父のもと幼少期をシンガポールで過ごす。大学在学中にリサイクルビジネスの物件探しを開始。1995年、有限会社トレジャー・ファクトリー(現:株式会社トレジャー・ファクトリー)を設立し社長に就任。開業資金30万円、150坪の倉庫で「トレジャーファクトリー足立舎人店」を開業。2007年、東証マザーズ上場を果たす。

父の仕事の関係で、私は2歳から10歳までシンガポールで生活しました。

シンガポールは多民族国家で、さまざまな国々の文化や風土、発想が混ざり合って国が運営されています。ある国では当たり前と思われることが他の国では異なるというダイバーシティのある思想に幼少期から触れていたことが、起業にも非常に役立ったと感じています。

2つ目は、「限界と思われる所からさらに工夫すること」です。

事業というのは、一般的に誰でもある程度までできることが多いのですが、その程度では差別化は難しいです。本質的な起業の力や差を生み出すのは、他の人たちが難しいと感じるところから更なる工夫ができるか、というところだと思います。

私は、小さい頃は水泳をしたり、高校までは野球を続けていました。スポーツでは限界までやってからの練習や工夫が大いに結果に生かされるので、これらの経験が、起業時にも役立ちました。

3つ目は、「プラス思考と感謝の気持ちを持つ」ことです。

起業や会社を形成することができるのは、色々な人たちの協力があってのことです。また、困難な事態も前向きに捉えて進んでいく姿勢が大切だと思います。

これは、もともと両親の教えでした。

私の両親は家の中で世間に対して不平不満を言うような人たちではなかったですし、「周りの人たちに支えられて自分自身がある」という感謝の心を忘れないようにと、教えられ育ちました。

インターネット元年に“リアル拠点”を軸にしたワケ

ーー1995年、いわゆる「インターネット元年」に御社は創業されました。野坂社長の周りでもデジタルを活用して起業に挑む方が多い時期だったと想像しますが、その中でリアルを基盤とするリユース事業に取り組まれた経緯をお聞かせください。

大きく2つの軸があります。

1つは「自分が実現できるもの」という軸です。

私が学生の頃に起業を決意したきっかけは父親でした。

中学2年生の時、バイタリティのある父を超え、認められるためには、自分で会社を創業し、その会社を大きく成長させることが必要だと考え、社長を志すようになりました。

もう1つは、自分で実現できることを見極める際に「何を選ぶか」という軸です。

先々の時代の中で、すでに完成しているものから取り組むことは、学生の視点から見て出来ることがかなり限られていました。

創業した1995年は東京都のごみ処理が有料化するタイミングで、世の中の傾向が大量生産・大量消費からサステナブルへと変わり始める時期でした。「これからは、物を大切に使っていくような世の中に変わっていく」という世間の声が大きくなっていた、というきっかけもあり、この事業を選びました。

もちろん当時、IT技術を使った起業を目指している人たちも多く、ホームページを5ページ作成すれば50万円ほどの収入がある時代でした。

しかし、それがいつまで続くかは疑問でした。IT技術を使ったビジネスを展開していく中で、定期的にヒットを出し続けるのは難しいと考え、長く続けられる事業を作りたいと思いました。

社会の変化の中でリユースビジネスを選び、IT技術を加えながら取り組むことで、自分が実現したいことを実現しつつ、世の中に必要とされるものを作れるのではないかと思ったことも大きかったです。

創業前に48件の市場調査。そこから見えた視点とは

ーーリユース事業への進出を決心した理由は何でしたか。

まず、しっかりとリサーチを行ったことは良い経験だったと感じています。

実際にリユースショップを3店舗を訪ねたのですが、私がまだ学生だったこともあり、起業に関するノウハウまで教えていただきました。

しかし、いずれも最終的にリユース事業での起業は「うまくいかないからやめた方がいい」と忠告されました。

それを聞いて、「本当にそうなのか?」と思いました。まさに、先ほど挙げたように“当たり前に疑問を持った”のですよね。

それから、自分自身で真実を探るために調査を続け、結局48件の店舗を訪れました。その結果、伺った店舗の約7割は経営難でしたが、残りの3割は繁盛していたことを知りました。

自分の目で見て感じたことから、「これはやるべきだ」とか「これは避けるべきだ」ということが徐々に明確になり、どこにこだわりたいのか、どんな店を出したいのかというイメージを持てるようになり、それらを形にすることが創業のスタートとなりました。

 

第2話「自社の強みをしっかりと磨き切る」へ続く

 

 

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巻口賢司

巻口賢司

早稲田大学政治経済学部卒業後、日本マイクロソフトに法人営業として入社。国内の大手企業におけるデジタル化の促進に携わる。その後、ウォルト・ディズニー・カンパニーにて、スタジオ部門での映画の配給・マーケティングからコーポレート戦略部での新規事業開発など、幅広い業務に従事。2023年、DIMENSIONにビジネスプロデューサーとして参画。日台ハーフ・日英バイリンガルというバックグラウンドを活かし、グローバルな目線でのスタートアップ支援を志す。

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