「100カ国以上の海外展開を目指す」株式会社トレジャー・ファクトリー 野坂英吾 社長の今後の展望(第4話)

全国に200店舗以上展開する総合リユースショップ「トレジャーファクトリー」を運営する株式会社トレジャー・ファクトリー。2007年、東証マザーズ上場。2022年、東証一部から東証プライムに市場変更。タイや台湾にも店舗を持つ。同社代表取締役社長 野坂 英吾氏に起業家の素養、海外展開のポイントなどについてDIMENSIONビジネスプロデューサーの巻口賢司が聞いた。(全4話)

事業展開で重要なのは「任せられる人がいるか」。

ーーマザーズに上場した2007年頃には2業態ほどだった御社の事業ですが、現在は12業態まで拡大され、2014年にはタイへ、そして2020年には台湾への進出を果たしており、タイ事業においては既に単年度黒字化を達成されております。上場以降、事業の多角化およびグローバル化に積極的に取り組まれてきた野坂社長のお考えとして、事業展開を検討する際の着眼点は何でしょうか。

1つは外部環境を踏まえた上で、どのタイミングで行動するかということが重要です。

さらに大事なのは、この人に任せれば、事業を着実に成長させることができると思える人材がいるかどうかです。
本来は、創業3年目で海外展開をしたかったのですが、地盤がない中では、人材や事業が分散してしまうと考えました。

そのため、会社が新規事業に踏み出すための基盤が整い、信頼できる人材も見つかり、海外展開を始めたのは、創業20年目になってからのことでした。

起業家としては、やりたいことが先行し、何も整っていない中で色々なことをして広がっていってしまう方もいらっしゃるかもしれません。

どの人材に、何を、どのように任せるのか、全てが重要です。自分でできればそれに越したことはないですが、なかなかそうはいかないので、“任せられる人”が最も重要だと感じます。

 

ーーどういった観点で「この人に任せられる」と判断されるのですか。

やっていく事業や取り組みによって、難易度は多少異なります。

例えば海外の展開をスタートするという場合には、困難なことにぶつかるのは目に見えています。その困難にぶつかった時に、それを創意工夫しながら乗り越えていける人なのか、それともぶつかって潰れてしまうのか、そこを見ています。

ーー最近、多くの方がグローバル進出を目指していますが、野坂社長が最初の海外展開先としてタイを選ばれた理由や背景について教えていただけますか。

タイを選んだ理由は、我々の強みを最大限に発揮できると考えたからです。

店舗を出店する際には、家賃相場、働く人々、顧客のニーズなどを考慮に入れて計画を進める必要があります。その中で、国内で展開している事業から派生する形で、我々の強みを最も発揮できそうな場所、環境を考えた結果、タイのバンコクが最適だと判断しました。

スタート直後は、主に日本人の駐在員からの買い取りで事業が支えられましたが、タイの方々からの認知と信頼が増えるにつれ、現地の方々からの買い取りも増え、現在では現地の方々による買い取り比率の方が上回っています。

 

ーー野坂社長の今後の海外展開についてお教えください。

中長期的な目標として徐々に展開していくつもりですが、世界には約200カ国ありますので、少なくともその半分の100カ国には展開したいと考えています。

 

ーー200以上の店舗を拡大されていますが、どのようにして全ての店舗の業績を伸ばしているのでしょうか?

上手くいっている店舗というのは、気付きに厚みがあると思います。
社員が新たに店長に就任する際、私が常に強調するのは「店の中心部を重視するのはもちろん、その店の四隅にもこだわること」です。

レジ前のメインスポットは、従業員全員がよく見ており、力を入れていますが、店の四隅に目を向けることは少ないです。しかし、四隅が乱れると次第に中心も乱れてしまいます。そのため、四隅の管理をしっかりと行うことで、それを防ぐことができます。

事業も同様で、伸びているところをさらに伸ばすことも重要ですが、うまくいっていない場所を管理できる人材が増えると、企業全体が厚みを増し、良い部分をさらに伸ばすことが可能になります。そのため、困難な部分を改善できる人材の育成にも注力しています。

M&A成功の鍵は「いきなり何かを変えようとしないこと」

ーー御社は経営戦略の方針の一つにリユース事業とシナジーのある企業の積極的なM&Aによる成長を掲げ、これまで多様な企業の買収・統合をされてきました。M&Aを成功させるために心がけていることは何でしょうか。

M&Aを成功させるために重要なのは、いきなり何かを変えようとしないということです。

「ここがダメ、あれがダメ。だからこうして下さい」と伝えても「わかりました」とはなりませんよね。

グループに加わってくれる企業独自の強み、弱み、課題などの特徴を理解しながら、それぞれの良い部分の素晴らしさを伝えていくことが大切です。

また、組織としての課題を正確に理解し、共有することも重要です。変化が必要な場合でも、ただ単に「変えます」と伝えるのではなく、なぜ変えるのか、変えた後にどのような状況が待っているのかを丁寧に説明することを心掛けています。

企業と企業が一緒になっていくという意味では、大切なのはそこで働いている人達ですので、一体感を持つことが重要です。

また、目指す成果を出すためには、チーム全体のマインドが一体化し、風土や文化が統一されることが必要です。その結果、組織はより強固になり、人々とのつながりも深まりますので、この点には特にこだわっています。

また、M&Aは迎え入れて終わりではなく、当然そこからがスタートになります。M&A後の統合では、単に新たな企業を迎え入れるのではなく、その後の取り組みを見据え、1+1が2以上になるようなビジョンを描きます。

新品とリユースの間の境界が無くなってきている

ーー先ほど100カ国以上を目指すというお話が出ましたが、今後のチャレンジとその想いに至ったプロセスについて詳しくお話しいただけますか。

我々の祖業であるリユース業の需要は年々増してきています。そして、世界がサステナビリティを前提とした社会に変わる中、リユース事業が果たすべき役割も大きくなっています。

まずは、このリユース事業を国内で発展させ、リアルの店舗やEC上の取り組みも強化していきたいと思っています。

一方で、海外のマーケットはまだまだ大きいです。

全く異なる商習慣や顧客ニーズがあるため、国ごとにチューニングが必要だと感じています。各国のリサーチを行い、適したビジネススタイルを確立しながら、世界各地に展開していきたいと思っています。

また、リユースを強化していく中で関連するサービスが必要となることもあります。

例えば、不用品の買取と引越しを同時に行う「トレファク引越」や、ドレスレンタルサービス「Cariru(カリル)」、「トレファク不動産」などです。

こういった関連したサービスも、顧客ニーズにお応えして発展させていきたいと思っています。

 

ーー現在のリユース業界におけるこれからの課題や、解決されたいことなど、何かございますでしょうか。

創業初期は、基本的に他のリユースショップなどと比較をされて「よくできてますね」などと言われましたが、現在は新品のショップやサービスと比較され、その質が問われています。

それは、新品とリユースの間の境界が無くなってきているということだと思うんです。

そのため、提供するサービスのレベルを上げる必要がありますし、利用者を増やしていくためにも、さらなる改善が必要だと考えています。

 

ーー最後に、創業から本日までの28年間を振り返り、野坂社長の考える御社の今後の展望について教えていただけますでしょうか。

創業当時に思い描いてた世界は、現時点ではるかに超えてしまっています。

しかし、企業のステージが変化すると、その先の世界が見えてきて、まだまだ提供できる価値や、世の中を変えていける部分があるとも感じています。

それを実現するため、我々はリユースの需要を広げ、世の中の変化に合わせながら、IT技術を活用した顧客サービスをこれからも提供していきたいと思っています。

 

 

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巻口 賢司

巻口 賢司

早稲田大学政治経済学部卒業後、日本マイクロソフトに法人営業として入社。国内の大手企業におけるデジタル化の促進に携わる。その後、ウォルト・ディズニー・カンパニーにて、スタジオ部門での映画の配給・マーケティングからコーポレート戦略部での新規事業開発など、幅広い業務に従事。2023年、DIMENSIONにビジネスプロデューサーとして参画。日台ハーフ・日英バイリンガルというバックグラウンドを活かし、グローバルな目線でのスタートアップ支援を志す。

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