国内最大級の家計診断・相談サービス『オカネコ』運営 株式会社400F 中村 仁社長が考える「起業家に必要な3素養」とは(第1話)

不撓不屈・泰然自若・応無所住

ーー中村社長にとって、起業家として重要な素養は何でしょうか。

起業家として重要な素養を3つにまとめるとすると、「不撓不屈」「泰然自若」「応無所住」です。

1つ目の「不撓不屈」は、諦めない気持ちを意味しています。どんな困難にも負けず、挫折せずに立ち向かうという、ベンチャー精神そのものです。

この不撓不屈の精神が重要と思ったきっかけは、2005年に野村證券に入社し、水戸支店に配属された時に遡ります。水戸市は20万人ほどの人口ですが、支店の歴史が長く、営業し尽くされたエリアでした。

それでも私は、新入社員として新規開拓件数の社内記録を更新しました。この経験が、「諦めなければトップを取れる」という強い信念につながりました。

この精神は、その後の野村證券時代はもちろん、転職先でも、現在のベンチャー経営でも、様々な困難に直面する中で非常に重要だと感じています。

 

中村 仁/1981年生まれ
関西大学卒業後、野村證券株式会社へ入社。支店営業後、野村資本市場研究所NY事務所にて米国金融業界の調査及び日本の金融機関への経営提言を行う。帰国後、野村證券株式会社の営業戦略の立案及び世界中の金融業界の調査も行う。2016年4月、株式会社お金のデザインに入社し、2017年3月より代表取締役CEO就任。2018年7月より株式会社400F代表取締役就任。一般社団法人日本金融サービス仲介業協会代表理事会長。

 

2つ目の「泰然自若」は、落ち着いていて、どんなことにも動じないという意味です。

これは、ベンチャー企業の経営を始めてから得た教訓です。

野村證券のような大企業では、ある程度守られた環境でしたから勢いや頑張りだけでやっていけるシーンもありました。しかし、ベンチャー企業経営では自分が最終責任者として、全ての責任を負わなければなりません。

ベンチャー企業では、組織、プロダクト、ファイナンスなど、あらゆる面で問題が起こります。その都度慌てていては経営はできません。

だからこそ、「こういうことが起こるのは当然だ」という心構えを持ち、落ち着いて対応することが重要だと考えています。

3つ目の「応無所住」は禅の言葉です。

私が禅に興味を持ったのは、野村證券の京都支店時代に妙心寺の退蔵院を担当したことがきっかけです。

そこの住職である松山大耕さんは、ダボス会議に招かれたり親善大使を務めたりと、国際的に活躍されていました。彼から多くを学び、多くの経営者が禅に惹かれる理由を理解するようになりました。

「応無所住」の意味は「執着しない」ということです。

これは「不撓不屈」と矛盾するように思えますが、実は心の執着を離れるという意味なんです。

例えば、私たちの会社では共同創業者で取締役だった人物を執行役員に変更しています。

長年一緒に働いてきた仲間だからこそ、そのままの立場を維持したいという気持ちはありました。しかし、冷静に考えて必要な変更だと判断し、実行に移しました。

このように、執着しすぎないことはベンチャー企業の経営において非常に重要です。他にも、ファイナンス環境が良くない時期に条件に執着しすぎた調達をしようとして、事業が停滞してしまうこともあります。

 

 

組織、プロダクト、資金調達など、あらゆる面で柔軟に対応できた企業が生き残っているのではないでしょうか。

つまり、努力し続け、どんなことにも動じない心を持ちながらも、執着せずに変化に対応できることが、経営者として重要だと考えています。

これらの3つの言葉は、私が大切にしている経営の原則でもあります。

 

ーーこれは、サラリーパーソンの考え方やマインドセットと大きく異なり、意識的に切り替える必要がありますね。

そうですね。

学生ベンチャーや最初から起業した方とは大きく異なると思います。

私のように10年ほどサラリーパーソンを経験してから転職し、社長になった場合は特に、その違いを強く感じますね。

 

>第2話「MBOを円滑に進めるには「資本の原理を理解すること」「私欲をなくすこと」「誠実であること」」に続く

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古家 広大

古家 広大

早稲田大学卒業後、三井住友信託銀行に入行。 広島にて個人向けFP業務を行った後、大阪にて法人RMを経験。非上場からプライム市場の企業まで担当し、融資や不動産など信託銀行の幅広いソリューション営業に従事。また、ESGやSDGsをはじめ、CGC改訂への対応支援も行い、グローバルで勝ち続ける企業への成長を非財務領域も含めてサポート。 2022年DIMENSIONに参画。LP出資者からの資金調達と国内スタートアップへの出資・上場に向けた経営支援を担う。

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