#インタビュー
国内最大級(*1)の家計診断・相談サービス『オカネコ』や、toB向けのコンサルティング事業などを提供する株式会社400F。同社代表取締役社長 中村 仁氏に起業家の素養、資金調達などについてDIMENSIONビジネスプロデューサーの古家 広大が聞いた。(全4話) (*1)現時点での400F社データベース及び他社公開情報の比較調査による
創業初期から幹部クラスを採用せよ
ーー御社は、社外取締役として野村證券の元会長や、ゴールドマン・サックス証券の元シニアアナリスト、元メルカリデータアナリストチームの責任者で現デジタル庁データ分析の専門人材など、金融業界に精通した方々が参画されています。創業期からこのように実力者を集められた理由をお聞かせいただけますか。
経営において「人こそが全て」だと私は考えています。そのため、このような素晴らしい方々に参画いただけていることに、大変恵まれていると感じています。
その上で、社外取締役と社内のCxOを含めた役員に対する考え方は少し異なります。
まず社外取締役の役割についてご説明します。
私が取締役会に求めているのは、会社の成長に伴い、取締役会と執行部門の役割が明確に分かれていくことです。つまり、取締役会は本来、経営についてディスカッションする場なのです。
しかし、取締役会が単なる報告会のようになっている企業もあると伺います。
私はそれは大きな問題であり、議論が起きない取締役会は無価値だと思っています。
ですから、経験豊富な方々や各分野のスペシャリストに社外取締役として参画いただき、我々の経営方針に対して客観的な意見を求めています。
それこそ私たちの経営方針に対して厳しい意見をいただくこともありますが、それを聞き流すのではなくしっかりと受け止めて取締役会の中で議論します。そのことによって経営力が養われていくと考えています。
こうした方々から学び、共に成長できるような取締役会の構成を目指しています。
ーーCxOを含む役員についてはいかがでしょうか。
CxOや執行役員に関して、私の基本スタンスは権限委譲です。そのためにも、私は、最初に幹部クラスを採用すべきだと考えています。
我々は珍しい会社で、従業員が十数人というかなり早い段階で既にCxOを5人ほど任命していました。
理由は、組織が成長して100人規模の会社になった時に、私一人で全てを見ることは不可能であることがわかっているからです。
それなのに、なぜ最初から自分の代わりに各部署のマネジメントができる人材を入れないのか。それが私には不思議でなりません。
ベンチャー企業でよく言われる30人、50人の壁による組織崩壊。その主な理由は、マネージャー不足だと考えています。
ですから、我々は最初からCxOクラスのマネジメント人材を採用しています。
権限委譲できるマネジメント人材が揃っていれば、組織づくりも任せることができ、事業に集中することができます。
ベンチャー企業の社長は往々にして組織運営に苦心しがちですが、本来社長がすべきことは、事業に集中することだと思います。
「採用は営業」KPIを設定し、経営者自ら動く。
ーー具体的にどういった方法で採用されているのでしょうか。
採用で大切なのは、まず第一に経営者自身が動くことです。経営者自らが動き、そして、頭を下げて紹介をお願いすることも大切です。
我々の場合、CFOとCGOは株主の方からの紹介でした。株主が様々な候補者を探してくれました。
ベンチャー企業において、株主は我々の成長を応援してくれています。だからこそ、何が必要なのかを率直に伝え、協力を仰ぐことが重要です。
また、幹部クラスは採用候補者のポートフォリオのようなものを常に持っています。たとえ今すぐに採用できなくても、継続的に接触を続け、食事をし、近況を聞き、タイミングを見極めていく。
そういった取り組みを続けています。
ーー採用に関して、課題を感じながらも、実際には十分な時間を割けていない経営者も多いですよね。中村社長は、採用活動にどの程度の時間を割いていますか。
私は採用を非常に重視しており、ほぼ毎日候補者との面談を行っています。
私はGoogleカレンダーを活用し、全ての予定の背景色を変えています。採用、社内ミーティング、社外ミーティング、作業時間など、全てを色分けしています。
これにより、1週間や1ヶ月の時間の使い方が一目瞭然です。
社長の主要な役割は、採用と社外ミーティングの2つであり、私は過度な社内ミーティングを避けるべきだと考えているので、それが多い場合は会議体の棚卸しを行い、社長として本当に参加するべきものなのかどうかを精査します。
幹部クラスの採用は自ら働きかける必要がありますが、現在は幹部層がかなり充実しているため、最終面接に意識を向けています。
各職種カテゴリーで最終面接が適切に行われているか確認し、進捗が芳しくない場合は定例ミーティングを設けて対応します。KPIを設定して採用活動を監視し、「なぜ進展がないのか」といった点をチェックします。
結果として、私のところに最終面接が回ってくる量が期待値を上回るように数で管理しています。結局のところ、採用は営業活動と同じなのです。
マネジメント・バイ・バリューズ
ーー御社はすでに80名を超える従業員数まで成長され、メンバーが全国に点在し、全体の6割がフルリモートという組織運営をされています。事業拡大期における組織構築のポイントについて教えていただけますでしょうか。
私が意識しているのは、組織運営をフレームワークとして捉えることです。感覚で運営するのではなく、全ての方法についてフレームワークを作成し、実行しています。
例えば、弊社のミッション、ビジョン、バリューについて、なぜそうなったのかを全て文章化し、誰もが閲覧できるようにしています。
フレームワークとしては、目標管理の運営方法も様々試してきました。
そのうえで、私たちなりの「マネジメント・バイ・バリューズ」というアプローチを採用しています。こちらはMBO(マネジメント・バイ・バリューズ)とOKR(オブジェクティブ・キーリザルト)を組み合わせたものをイメージしていただくと良いかも知れません。
これは弊社のバリューに基づいた目標管理・行動計画で、1年後のあるべき姿、3ヶ月後の会社目標と照らし合わせて、何を達成するかを設定します。
そして、バリューをどう体現してそれを達成するかを記述し、1on1を通じてフィードバックを行います。
1on1ではバリューフィードバックシートというものを作成しており、自らがバリューに基づいて行動できたかを書いてnotionで全社公開されている仕組みを用意しています。そしてこのフィードバックシートの公開はCxOも行っています。
また、フルリモートの勤務体制ですが、全員に日報の提出があります。
リモートワークでは何をしているのかが見えにくいため、それを可視化することは重要です。
フルリモートなどの自由を得るためには一定の規律やルールが必要であり、それを実践することで初めて真の自由が得られる。そういった考えで設計をしています。
ーーそのほか、組織運営のために取り組まれていることはございますか。
原則として、社内資料はPowerPointを禁止にしています。
ベンチャーには様々なバックグラウンドの人が入社しますよね。そうすると、曖昧な形で情報共有すると、大抵は間違った解釈で様々なものが広まっていってしまいます。
そこで私たちは、プロダクトの方針や今後の事業展開について決まった時、それを全て文章化しています。
なぜそうするのか、どういう背景があって、何を実現しようとしているのか。規模が小さかった頃は全社員が集まり、全員でその文章を読んでいました。
このようなプロセスを通じて、全員の考え方を一致させたり、先ほど言及した自由と規律のバランスを取りながら、フルリモートでも生産性を維持できるようにしています。
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古家 広大
早稲田大学卒業後、三井住友信託銀行に入行。 広島にて個人向けFP業務を行った後、大阪にて法人RMを経験。非上場からプライム市場の企業まで担当し、融資や不動産など信託銀行の幅広いソリューション営業に従事。また、ESGやSDGsをはじめ、CGC改訂への対応支援も行い、グローバルで勝ち続ける企業への成長を非財務領域も含めてサポート。 2022年DIMENSIONに参画。LP出資者からの資金調達と国内スタートアップへの出資・上場に向けた経営支援を担う。
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