#ビジョン
「マンガ家の職業価値を向上させ、子供たちの憧れの職業にする。」というミッションを掲げ、日本発のグローバルヒットIP制作を目指すコミックスマート株式会社。同社代表取締役社長CEO 佐藤 光紀氏に起業家の素養、ヒット作を生み出す秘訣などについてDIMENSIONビジネスプロデューサーの巻口 賢司が聞いた。(全4話)
起業家に重要なのは「夢中になる力」
ーー佐藤社長にとって、起業家として重要な素養は何でしょうか。
起業家に重要な素養として、「夢中になる力」が挙げられると考えています。
大規模な事業の構築には相当な時間を要します。10年、20年、場合によっては30年から50年という長期間にわたって事業を発展させていくこともあります。
小規模な事業を立ち上げ、事業初期段階のみに注力するという選択肢もありますが、偉大な事業を創出するためには、数十年という時間軸で事業を拡大していく志が重要だと考えています。
一方で、起業家には新しいアイデアや事業に惹かれやすい傾向もあります。
そのため、軸をぶらさぬよう、自身がどのような事業を成し遂げたいのか、どのような分野であれば長期的に取り組みたいのかを考え抜くことが、モチベーションを維持する上で非常に大切だと考えます。
これは「ファウンダー・マーケット・フィット」という点にも通じるものですが、長期間にわたって事業に全力を注げる領域を選ぶことが大切なのです。
時間の経過を忘れるほどに没頭できるテーマに取り組むことが重要であり、そのような「夢中になれる力」が起業家としての重要な素養だと考えています。
佐藤 光紀/1975年生まれ
東京都国立市出身、立教大学法学部卒業。1997年、株式会社サブ・アンド・リミナル(現・セプテーニ・ホールディングス)入社、1999年、新規事業責任者としてインターネット広告事業を立ち上げ、同社を国内トップクラスのデジタルマーケティング企業に育てる。2009年、セプテーニ・ホールディングスの代表取締役社長に就任。2013年、セプテーニグループの新規事業としてIPプラットフォーム事業を創業し、コミックスマートの代表取締役社長に就任。2024年、セプテーニ・ホールディングスの代表取締役を退任、コミックスマートはセプテーニグループからスピンオフし、スタートアップ企業としての事業成長を目指す。
ーーそのような素養が重要だと考えるようになったきっかけは何かございますか。
私の経験を振り返ると、まさに「点と点がつながる」ようなプロセスだったと感じています。
15歳から24歳まで音楽活動に従事し、エンターテインメントやコンテンツ制作の分野で早くから経験を積んでいました。
音楽活動を終えた後、セプテーニにてデジタルマーケティング事業を立ち上げました。これが私の起業の第一歩となりました。
その後、2013年に現在のコミックスマート事業を創業する際、「WHY ME?」という自身の情熱と将来性のある市場の両立を慎重に検討しました。
私の場合、元ミュージシャンとしての経験、熱心なマンガ読者としての視点、そしてエンターテインメント制作者としてのプロデュース力が、独自の強みと捉えました。
また、自身の特性として、あらゆるエンターテインメントを単なる娯楽として消費するのではなく、「どうしてこの作品は面白いんだろう」「どうして売れるんだろう」と、エンタメを構造的に要素分解する習慣を持ち合わせていたように思います。これは、後の事業展開において大きな資産となりました。
結果として、キャリアの初期段階から約15〜20年を経て、ある意味原点回帰のような形で、10代の頃に成し遂げたかったテーマと密接に関連する事業に携わることとなりました。
ティーンエイジャーの頃の自分では想像もしていなかった展開ですが、振り返ってみれば、常に自然と自分が夢中になれるテーマを探してきたように思います。
“わがまま”と“素直さ”を両立せよ
ーー新たに起業された方、あるいは組織を次の段階に引き上げようとしている起業家の方々に向けて、アドバイスをいただけますでしょうか。
まず、適度な失敗は起業家としての強靭さを育むために重要です。あらゆる失敗を事前に回避しようとするだけでは、成長の機会を失ってしまいますから。
致命的な失敗は避けるべきですが、適度に失敗を経験していくことが大切だと考えています。
次に、メンターとの信頼関係を築くことを強くお勧めします。私が起業した2000年頃と比べ、現在はスタートアップのエコシステムが大幅に進化しています。
信頼できるメンター、同じ志を持つ起業家仲間、さらには自分を信じて支えてくれる投資家など、利害関係を超えて相談できる人々とのネットワークを広げることが重要です。
また、己を知ることも不可欠です。様々なフィードバックを真摯に受け止め、自分を理解する機会として活用してください。
自分自身を客観的に見ることは難しいですが、他者からの評価は的確であることが多いことを心に留めておくべきです。
最後に、起業家には“わがままさ”と“素直さ”の両立が求められます。
事業に対しては強い信念を持ちつつ、同時に周囲の意見に耳を傾ける柔軟さも必要です。この二面性のバランスを取ることで、より多くの人々の支持を得られるでしょう。
これらの要素を意識しながら、経験を積み重ねていくことが、事業拡大への道筋になると考えています。
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巻口 賢司
早稲田大学政治経済学部卒業後、日本マイクロソフトに法人営業として入社。国内の大手企業におけるデジタル化の促進に携わる。その後、ウォルト・ディズニー・カンパニーにて、スタジオ部門での映画の配給・マーケティングからコーポレート戦略部での新規事業開発など、幅広い業務に従事。2023年、DIMENSIONにビジネスプロデューサーとして参画。日台ハーフ・日英バイリンガルというバックグラウンドを活かし、グローバルな目線でのスタートアップ支援を志す。
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