
#インタビュー
「データによって人の価値を最大化する」というミッションを掲げ、顧客理解からパーソナライズまでを一気通貫で実装できる、CX(顧客体験)プラットフォーム『KARTE』を提供する株式会社プレイド。同社代表取締役 CEO 倉橋 健太氏に、起業家の素養や、CXの今後についてDIMENSIONビジネスプロデューサーの巻口 賢司が聞いた。(全4話)
ーー創業当初は現在の「KARTE事業」とは全く異なる形で、「食べログ」や「Retty」のような、飲食店のCtoCアプリを開発され、創業メンバー数名でスタートされたと伺いました。そこから一転、事業内容の見直しを進められた経緯を教えていただけますでしょうか。
楽天在籍時から起業1年目の途中までが当初のプロジェクトに取り組んでいた時期でしたが、今から振り返ると、その1〜2年の間に数多くの失敗を経験しました。
その中で最も大きな失敗は、明確なビジョンを掲げ、それに対して内発的なモチベーションで人が集まってくる組織づくりができなかったことです。
組織づくりにおいて、最初のビジョンとチームビルディングの段階でつまずいてしまったという思いは今でも残っています。
たとえ将来性のある事業でも、アプローチを誤ると根本的な問題になります。そのため、起業1年目の途中で一度立ち止まって見直すことにしました。
外部からはピボットのように見えるかもしれませんが、当時はそういう意識はなく、ただ根本から作り直す必要があると考えました。
そこで、ビジョンとチームを1から作り直すことにしたんです。
プレイドを創業して1年目という早い段階でしたが、すべてをリセットして再スタートを切りました。チームに残ったのは私と当時社外取締役の高柳だけです。チームメンバーを含めて全てリセットし、株式構成も見直したのです。
そのタイミングで柴山(共同創業者・取締役)と出会い、そこから改めてビジョン作りを始めました。
彼と出会えたことが非常に大きかったですね。技術面から見た未来と、ビジネス面から見た未来。そこで何が起きるのか、それにどれだけの価値があるのか、本当に面白いものなのか。
これを徹底的に議論し、外部の方々にも意見を聞きながら、彼と出会ってからずっとその過程を繰り返してきました。
ーー想いやパッションは持っているものの、顧客のニーズやペインがつかめずに悩んでいたり、成長が鈍化してしまったりするケースが非常に多いと感じています。御社は、『KARTE』という事業を1から練り直して再起動されましたが、PMFの達成に向けた取り組みの中で、特に注力された点や工夫されたエピソードがあれば、ぜひ伺いたいです。
色々な考えが存在すると思いますが、私の整理で話しますと、「PMFの前にコンセプトが問題・課題にフィットするか」という考えが先にあります。それがその会社のアイデンティティになると考えています。
これを「コンセプト・プロブレム・フィット」と呼ぶとすると、印象的なエピソードがあります。
KARTEの原型は、WEBやアプリなどのユーザーデータを捉えて、管理画面で確認し、ユーザーに働きかけるというシンプルな構図でした。
最初の管理画面では、計測データを大量のグラフを用いて表示していました。ユーザーの行動をチャートや棒グラフで表示する、いわゆるアクセス解析や分析のダッシュボードのような画面で始めましたが、反応は芳しくありませんでした。
すべてのデータがユーザーに紐づいており、分析が必ずアクションにつながる内容のはずなのに、それが伝わっていませんでした。
試行錯誤を重ねた末、ある時UIを大きく変更してみました。
管理画面の1ページ目を、アクセスしているユーザー、つまり「人」が並ぶシンプルなUIに変えたのです。これは現在のKARTEの管理画面でもトップページになっていますが、この変更で今まで興味を示さなかった人たちの反応が一変しました。
当時の管理画面イメージ
これは、「人」が見えていなかったことで潜在的に興味を持ちづらい状況から、UIの変更によって私たちが持っていたコンセプトを適切に表現できた結果、顧客の課題に適合したのです。
これがコンセプト・プロブレム・フィットの話で、本格的なプロダクト・マーケット・フィットを実感できたのは、そこからさらに2年後でした。
ちょうどプロダクトリリースの1年後に、設定していた複数の料金モデル(使用量課金、売上マージン型、事業規模に応じた定額制)を、定額制の1プランに絞りました。
すると、お客様の利用が大幅に増えたのです。
初期のプロダクトはたくさん使用してもらわないと価値を実感できないのに、使うほど料金が上がる仕組みでは心理的なハードルが高かったのです。
そこで、契約したら「思う存分使えるプラン」にしようと、現在のエンタープライズプランの原型となる、事業規模に応じた固定費モデルに切り替えました。
その結果、お客様の利用量が劇的に増え、満足度も向上しました。
その後、最低単価を10万円から20万円、さらに30万円と段階的に引き上げることができました。
この10万円以上の固定料金化のタイミングで、コンセプトと提供形態がマッチし、お客様にも受け入れられたことで、私たちはPMFを達成できたと実感しました。
ーー創業初期から顧客ニーズを徹底的に追求し、顧客の声に耳を傾け、それを繰り返した結果がUIの変更や料金体系の改定という形で現れたということですね。
そうですね。
PMFは確かに重要ですが、その先の事業展開でも何度も見直す必要があります。市場も変化するし、私たち自身も変化していくからです。
PMFは継続的な取り組みが必要で、特に重要なのは、将来の機会につながるような連鎖性のあるPMFを最初に実現できるかどうかです。間違ったPMFにたどり着くと、その先の機会を失ってしまいます。
私は、進むべき方向性を正しく定められるかどうかが最も重要だと考えています。方向性さえ間違わなければ、事業の成長に応じて柔軟に変えていくことができるようになります。
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巻口 賢司
早稲田大学政治経済学部卒業後、日本マイクロソフトに法人営業として入社。国内の大手企業におけるデジタル化の促進に携わる。その後、ウォルト・ディズニー・カンパニーにて、スタジオ部門での映画の配給・マーケティングからコーポレート戦略部での新規事業開発など、幅広い業務に従事。2023年、DIMENSIONにビジネスプロデューサーとして参画。日台ハーフ・日英バイリンガルというバックグラウンドを活かし、グローバルな目線でのスタートアップ支援を志す。
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