仲間を惹きつけるビジョンと組織づくりの原点 株式会社 bitFlyer 加納 裕三 代表取締役(第2話)

「ブロックチェーンで世界を簡単に。」というミッションのもと、日本国内で最大級の暗号資産取引所を運営し、創業から11年を迎えた今もなお業界の最前線で挑戦を続けている株式会社bitFlyer。今回は、同社代表取締役 加納 裕三氏に、起業家に求められる素養やWeb3業界の現在、さらにはグローバル展開を見据えた今後の展望について、DIMENSIONビジネスプロデューサーの家弓 昌也が聞いた。(全4話)

創業期、仲間を動かしたのは「ビジョン」と「言葉の力」

ーー創業当時、加納さんは小宮山さんと2人で事業をスタートされました。創業には、どのような経緯があったのでしょうか?

小宮山はゴールドマン・サックス時代の先輩です。私がエンジニアとして入社したときに、プログラミング言語「C++」を教えてくれた方でした。

当時から私は起業したいという思いを強く持っていて、小宮山にも「いつか起業するときは一緒に来てほしい」と話していたのです。その当時、彼は「いいよ」と言ってくれていました。

そして2013年、ビットコインで起業することを決めたとき、真っ先に小宮山に電話をかけました。「あの時の約束、覚えてますか?」と聞くと、「覚えてる」と即答してくれて。

彼は本当に会社を辞めて、一緒にスタートを切ってくれました。

 

ーー即答で会社を辞めて起業する、すごい決断ですね。

「約束だから」ということでついてきてくれました。

とはいえ、当時はまだプロダクトもオフィスも何もない状態だったので、四谷三丁目にあるパン屋のイートインコーナーに通いながら、二人でひたすらコードを書いていました。

2014年の1月に登記して会社を作り、ワンルームマンションを借りて、そこから本格的に採用を始めましたが、人材集めは本当に苦労しました。

ハローワークなどにも足を運びましたが、創業期のスタートアップに合う人材はなかなか見つからず、結局、前職の仲間や小宮山の紹介など、信頼できる人たちに声をかけて来てもらいました。創業初期の採用は、やはり知人の繋がりが一番有効だったと感じています。

2016年頃に暗号資産がブームになり、その頃は採用がしやすくなった印象があります。一方で業界全体に業務改善命令が出たタイミングは採用も厳しくなるなど、好調と逆風の時期を行き来してきた印象です。

今では会社の純資産も安定し、優秀な人材に相応の対価を支払える環境が整ってきたため、採用に攻勢をかけています。

 

ーー創業期の人選について、特に意識していたポイントがあれば教えてください。

ビジョンへの共感が最も重要だと思います。

創業期の組織は本当に壊れやすく、あらゆるスタートアップが、創業者同士の喧嘩や資金調達の失敗などを経験しています。

そういう不安定な時期に大事なのは、創業者の想いであり、それを言語化したビジョンなのです。お金も人もプロダクトもない中で、人を動かせるのはやっぱりそのビジョンへの共感だと思っています。

スキルが高くてもビジョンに共感していなければ長続きしないし、むしろ組織を崩壊させてしまう可能性もある。だからこそ、創業期の採用はとても慎重に進めました。どんなハードな状況でも一つのビジョンのもとに力を合わせて頑張れる、そんな人と一緒に働きたいと思っていました。

 

企業のカルチャーを守る採用哲学

ーー創業期を乗り越えた後も、特にブロックチェーンの領域では、事件の発生や規制強化による強い逆風が度々あったのではないかと思います。そのような状況下でも、組織力を保ってこられたポイントはございますか。

企業にとって永遠の課題ですね。人は会社が良い時に入って、悪い時に辞めていきます。

だからこそ「今が良い時期だとしたら、必ず悪い時期も来る」というのは採用面接時に必ず話すようにしています。逆に悪い時期であれば、「これからきっと良くなる」とも伝えます。このように、最初にリスクや事実をきちんと説明することが大事だと思っています。

当社のカルチャーに合わない人は、無理に採用しないほうがお互いにとって幸せです。例えば、bitFlyerではリモートワークを推奨していません。オフィスに来てこそイノベーションが生まれると思っているので、そこが合わなければ他を選んだ方がいいことを伝えています。

週末に勉強するような向上心も大切にしていますし、そういったカルチャーと合わないならば他の会社に行った方がいいともキッパリと伝えています。

きちんと伝えることで、採用の時点でできる限りミスマッチを防ぎます。オフィス見学も勧めますし、条件も全て説明します。それでも納得してくれるなら、共に頑張ろうと伝えています。

 

多様な人材の相互理解・成長を育む仕組み

ーーbitFlyerでは、社員のモチベーションや相互理解を醸成するために、どのような取り組みをされていますか?

月次で全社員が集う「オールハンズミーティング」をやっていて、年に一度は「アニュアルミーティング」も開催しています。そこでは、最新のプロジェクトや採用の状況、財務面、トレーディングボリューム、KPIなどをできる限り社員と共有しています。会社の今の状況をしっかり伝えることで、全体の共通理解を醸成するのが目的です。

また、MVPの表彰や経営合宿など、社内の士気を高める取り組みも行っています。毎週金曜日には「〇〇会」と称して、社員主催のドリンクパーティーのようなイベントも開催しています。鈴木さんなら「鈴木会」、本田さんなら「本田会」のように、誰でも主催できるイベントを会社負担で実施する取り組みです。

他にも卓球やゲーム大会など、社内交流の機会が多い会社だと思います。もちろん強制ではなく、あくまで参加したい人だけが楽しめる形にしています。

 

 

ーー非常に風通しのいい組織だと感じます。ちなみに、Web3は専門性の高い業界だと思うのですが、社員の教育に関してはどのような取組みを行っていらっしゃるのでしょうか?

エンジニアは特に専門性が高いため、定期的にスキルを披露し合う社内セッションを行っています。この取組みは、互いに学び合い、モチベーションを高め合う場になっていると感じています。

また、ビジネスサイドでも活動を社内に共有する「フライトスクール」と呼ばれるセッションを毎週開催しています。

部門間の理解を深めることを目的に、具体的な担当プロジェクトの内容を、使用しているアプリケーションなどを実際に見せながら紹介するイメージです。最後にはQ&Aもあり、相互理解を深める工夫をしています。

また当社は社員の約4分の1が外国籍で、日本語が話せない社員も多くいるため、社内では英語が公用語に近い形で使われています。そのため、オンライン英会話の補助制度や、逆に日本語学習の支援制度も整えており、多様な文化背景を持つメンバーが必要なスキルを学び、快適に働ける環境づくりを意識しています。

 

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家弓 昌也

家弓 昌也

名古屋大学大学院航空宇宙工学修了。三菱重工の総合研究所にて、大型ガスタービンエンジンの研究開発に従事。数億円規模の国家研究プロジェクトを複数リードした後、新機種のタービン翼設計を担当。並行して、社内の新規事業創出ワーキンググループに参加し、事業化に向けた研究の立ち上げを経験。 2022年、DIMENSIONにビジネスプロデューサーとして参画。趣味は、国内/海外旅行、漫画、お笑い、サーフィン。

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