志という名の錦の旗に人は集まる 弁護士ドットコム元榮太一郎会長(第4話)

自分のビジョンを語り、人を巻き込む

―どのように事業を一緒に作っていく仲間を巻きこんでいったのですか。

私は、常に「こういう人を求めている」と周りに言いふらすようにしています。

創業当時も、「弁護士ドットコムとしてこういうことをやりたいんだ。こういう人を探している」とさまざまな所で話していました。

独立して1カ月後ぐらいに、大学のゼミの後輩の弁護士が「おもしろいですね。僕にもやらせてください。弁護士になったものの受験時代みたいな熱い想いがもてなくてどうしようかと思っていたんですよ」といってきてくれました。

弁護士で共感してくれる人がいるとは思ってもみなかったので、とても嬉しかったですね。

さらに、彼のルームメイトに大手企業のエンジニアがいて賛同してくれたり、その彼の大学のゼミの同期で某オークションサービスを立ち上げた立役者などもいて、多くの人がどんどん集まってくれました。

2005年4月に居酒屋に集まって、情熱を込めたパワーポイントのスライドを見せながら、「こんな感じだけど、どう? やってみない?」と誘ったら、みんなが「やりたい!」と答えてくれたのです。

こうして、起業して4カ月ほどでオリジナルメンバーが揃いました。

旗を立て強い引力でリクルーティング

―すごいですね。そこからも順調にメンバーが集まっていったのですか。

はい。2013年7月に加わったCOOやCFOも同様です。COO、CFOを本格的に探しはじめたのは2013年4月。上場準備の直前期に入り、そういえばCOOとCFOがいないなと気がつきました。

そこで、4月にFacebookで「COO、CFO大募集!! 我こそはという人は来てください」と募集をかけました。

そのときはすでに、弁護士ドットコムがたくさんのメディアで紹介されていたこともあって、多くの方からお問い合わせをいただきました。

そして、募集をしてから3ヶ月で入社してもらうことになったのです。

―ハイスピードですね!

今はSNSが活発な時代なので、本気を出せば集まるものです。

1番大切なのは、どういう旗を立てるかだと思います。私は、「弁護士を身近にする!」という旗を立てました。

みなさん弁護士を遠い存在で敷居が高いと思っています。それをもっと身近にしたら、必ず社会に役立ちますよね。

借金で困っている人や養育費を払ってもらえないシングルマザー、相続トラブルを抱えている人など、生活をしていればいろいろトラブルはあるのに、弁護士を活用できていないんです。

共感されやすい理念をしっかり立てて、それを広報も活用して訴え続けていけばおのずと引力が生まれ、人は集まってくると思います。

ミッションを掲げることで組織の求心力を上げる

―創業後、社員が増えていき、組織面や人事設計面で苦労されたことや、それを乗り越えた工夫・ポイントがあれば教えてください。

8期連続で実質赤字が続いた時期は苦労しましたね。給料を上げにくい中で、社員を採用し、定着させていかなければなりませんから。

そのときに大事にしたのが、やはり理念です。数あるWebサービスの中で、どれだけこのサービスが社会の役に立っているのかということについて、社員会議で日々伝え続けました。

また、それと同時に、当時は私がカスタマーサポートも見ていましたから、利用者からよせられる感謝のメッセージをシャワーを浴びせるように社員に転送し続けました。

加えて、世間に理念について紹介してもらえるように、メディア各社と積極的に関係性を構築していきました。

経済誌の弁護士特集に自分が載ってなかったときには、その雑誌の記者さんに会いに行って弁護士ドットコムについて熱く語ったりもしました。その想いが伝わったようで、「次は巻頭インタビューでお願いします」と言っていただいたこともあります。

弁護士の「一見さんお断り」だった世界に一石を投じるのが我々のミッション。そういう発信を、『プレジデント』や『ダイヤモンド』のような良く知られた雑誌に大きく取り上げていただければ、日弁連や弁護士会など、弁護士の先輩方にサービスを理解していただけるだけでなく、それを読む社員にも理念が浸透していきます。

志から説き続けることで、社外の方にたくさんの仲間を作っていく。そして、それをまた社員に共有していく。そんな循環で、組織の熱量をキープしていきました。 

―上場が近づいたタイミングで、人事組織制度に何か変更はありましたか。 

上場のタイミングになると、人事制度を目標管理制度に移行し、360度評価も取り入れました。より納得感がある制度にブラッシュアップしていったのです。

また、どんどん社員が増えていきますから、社員同士の交流を意図的に設計することも大事です。弁護士ドットコムでは月1回、ビールやハイボールを片手にピザをつまむ「ビアバッシュ」という交流会や、部活動制度の整備、四半期ごとには社員懇親総会を開催するなど、様々な工夫をしていきました。

経営者としては、組織が大きくなるからこそ、社員と向き合い、距離が遠くならないように配慮することも欠かせません。

そんな思いからグループ全体で300人くらいいる全社員の誕生日には、私から手書きのカードを必ず贈るようにしています。

社員が年々増えているので大変なのですが、1人1人に1年に1回、手書きで感謝とお祝いの言葉を伝えたいので、続けています。

こういったハードの仕組みとエモーショナルな部分の掛け合わせこそが、組織運営には大事だと思います。

いろいろと試行錯誤しながら、これからも社員とのコミュニケーションを重視しながら、挑戦していきたいですね。

 

 

>>第5話「時代を読んで仕掛けて待て」に続く

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DIMENSION 編集長

DIMENSION 編集長

「人・事業・組織に向き合い、まっすぐな志が報われる社会を創る」をミッションに、真摯に経営に向き合う起業家に創業期から出資し、事業拡大・上場を支援する国内ベンチャーキャピタル。

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