【M&A特別対談】ストライプインターナショナル流、人間力の磨き方 (第3話)

「ライフスタイル&テクノロジー」を事業領域として、創業20年余りでグループ売上1,300億円超まで成長し続けるストライプインターナショナル。2016年10月には創業2年目のベビー・キッズアパレルEC「smarby(スマービー)」を買収し、さらなる多様化を推し進めている。今回はそんなM&Aを実施したストライプインターナショナル石川社長とスマービー遠藤社長に、その舞台裏とM&A成功の秘訣を聞いた。(全5話)

起業して初めて身につけた、マーケットを読む力

——遠藤社長が考える、起業家に必要な3つの素養はなんでしょうか?

遠藤:1つめは、「貪欲さ」です。

成長に貪欲な姿勢は欠かせません。自分のプロダクトやサービスを成長させるというのもそうですが、自分自身を高め続ける貪欲さも必要だと思います。

2つめは、「マーケットを読む力」です。

どのタイミングで何の事業をすればよいのか、どうユーザーが変わっていくのかを読み続けること。感覚的なものと数字的なもの、両方においてこのセンスはすごく大事になります。

3つめは、「変わり者」であること。空気を読まずに突っこんでくるぐらいの、ちょっとずれているぐらいがちょうどいいという意味ですね。

だいたい自分と同世代とか、自分より若い人ですごいなと思う人には、今挙げた素養が備わっています。石川さんも勿論そうですね。

——マーケットを読む力は、どのように磨いていきましたか。具体的な方法をお教えください。 

遠藤:私自身を振り返ってみると、マーケットを読む力は起業する前にはなかったと思います。会社を外から支援する側の立場だった頃は、人から聞いた話や公開情報など、わかりやすい情報からしか考えることができませんでした。

スマービーを起業して、現場のユーザー情報に直接触れたり、より深い業界人脈ネットワークを得てから、「マーケットがこう変わっていくだろう」という見方がだんだん出来るようになったように思います。

あとは、やっぱり石川さんなど最前線で活躍している方にいろいろ教えていただく中で磨かれています。師匠となる人のものの見方を学びつつ、自らビジネスを進めていける今の環境は、自分の成長に大きく繋がっているなと感じます。

起業家は「詩人」たれ

——石川社長がお考えになる起業家に必要な3つの素養も同様にお教えください。

石川:難しい質問ですが、1つめは「詩人」であることだと思います。ロマンティストなポエマーであるということですね。

2つめは、「ペテン師」であること。ある意味では、ベンチャーキャピタルをかわさなきゃいけないこともあるからです。

3つめは、「宗教家」であること。社長には、周りをどんどん自分で巻きこんでいく力が必要です。

ロマンティックなことを言って、お金を集め、さらに集まってきた人を洗脳していくみたいなイメージですね。

——「詩人」は石川社長らしい表現ですね。石川社長はどのような点で詩人であることを体現していらっしゃいますか?

石川:現実的な考え方をする人から「そんな妄想したって、今すぐには解決できないでしょ」と言われることはたくさんあると思うんです。でも、できないことでも言い続ける“ロマンティストな詩人”であることが起業家にとってはすごく大事。発信している間に自分の考えが整理できて、実現をするために必要な人達も集まって、数年たったらできるようになっているものなんです。

例えば、ファッションレンタルサービスの「MECHAKARI(メチャカリ)」は、その好例だと思います。このサービスは「人生の節目でのファッションに関する不安に向き合う」といったメッセージを発信し続け、いまの形までたどり着きました。

どういうことかというと、例えば高校生から大学生になる学生服しか着てこなかった子供達は、毎日大学に行くのにどんな格好をしてよいかわからない。そんな不安や不満を、「MECHAKARI(メチャカリ)」では、モデルが着用したコーディネートをそのまま借りて解消することができる。流行のスタイルなので、周囲から「おしゃれだね」と褒められることもある。

さらにママさん達にも喜ばれると思っています。これまでは働いて好きな服を買ってきたけれど、結婚して子どもが生まれて家を買って……と倹約しなくてはならない人もいる。そんなときに洋服のレンタルサービスがあると嬉しいですよね。

まさに人生の節目、節目での悩みや不安に、「MECHAKARI(メチャカリ)」は向き合っていると思いませんか?今はサービス単体のお話をしましたが、企業もそうあるべきです。起業家は何歳になっても、少し現実離れしたようなロマンティックなストーリーを語れることが重要だと思います。

——「詩人」が「宗教家」になるための秘訣はどこにあるのでしょうか?

石川:ロマンティックなことを言い続けても、スタートしたサービスの会員を増やしたり、売上を上げたりしない限りは、いずれ周囲の人は離れていきます。結果を出さなければ周囲から尊敬される「宗教家」にはなれません。

時には傲慢と言われてでもゴールとして設定したKPIやKGIを達成することに執着する姿勢が必要だと思います。

人間力を磨く、人との出会い

——結果を出すにはどのような素養が必要でしょうか?

石川:お客様にちょっとした配慮や心配りができる「人間力」が必要です。

スマービーの良いところは、社員のほとんどが“ママ”のため、社員がお客様と同じ目線に立って気配りが出来ていることです。

ストライプでも、「社員をお客様にしよう」と言い続けてきました。事業開発として1番良いのは、自分たちが売りたいサービスやプロダクトのユーザーであることでしょう。ユーザーと同じ目線に立つことで「人間力」も発揮しやすくなるのです。

——確かに、「お客様=社員」であれば、サービスの開発や改善にとても有効ですね。

石川:そうなんです。社員が顧客になるのは、マーケティングの観点で非常に重要なことです。

一例を紹介しましょう。ルミネは、JRの連結子会社です。今の活気ある状態に改革される途上で、2001年にルミネの社長に就任した花崎淑夫さんが最初に言ったのは、「ルミネの営業部は、客とほど遠い」という一言でした。ルミネの営業部隊は、ほとんどがJRからきた60歳前後の男性でしたからね。そこで、「ここから5年かけて社内をお客様化する」という改革を断行していきます。

今となっては、何も知らない人はルミネをJRが運営しているとは思わないほど洗練されていますよね?顧客に近い視点を持つ社員が、社内改革していった成果だと思います。

——総合的な人間力はどう養ったらよいのかもお教えください。 

石川:1つめは、「自分はまだまだだ、と思い続けること」だと思います。そのための秘訣は、自分よりも優秀かつすごい人と会い続けることです。あの手この手を使って会う努力をすることが大切です。

2つめは、教養を磨くこと。文化、宗教や歴史などの教養から、リーダーシップや社会変化などを学ぶことができます。ちなみに、私はアートが好きなんですが、アートの歴史的文脈の変遷を知ることによって、新たに会社を路線転換させないといけないなどの気づきを得られることがあります。

海外では文化的教養はリーダーシップには必要不可欠で、例えばアートの話で盛り上がって気がついたら3時間話をして「お前とは気が合うな」と投資が決まったりする。日本ではなかなかないですよね。

いま影響力のある人の言葉、過去の偉人が作り出した教養。これを両方何かしらの形で取り込み続けることが人間力向上に役立つと思います。

※本記事は配信日現在の内容です

 

>第4話「M&A成功の秘訣」に続く

>第2話「投資したくなる起業家とは 」に続く

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DIMENSION 編集長

DIMENSION 編集長

「人・事業・組織に向き合い、まっすぐな志が報われる社会を創る」をミッションに、真摯に経営に向き合う起業家に創業期から出資し、事業拡大・上場を支援する国内ベンチャーキャピタル。

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