#ブランディング
人々の潜在能力を向上させ、癒しを与える新世代の家庭用ロボットを開発するGROOVE X。2015年の設立以降、多額の資金調達にも成功している今注目のスタートアップ企業だ。同社のCEOであり、ソフトバンクの孫正義氏の誘いに応じて「Pepper」の開発にも携わった林要氏に、起業家としての心得やチームマネジメントの極意について聞いた。(全6話)
卓越したアイデアは非常識の中から生まれる
――起業家にとって大事な3つの素養を挙げるとすれば何でしょうか?
色んな視点があると思うんですが、僕が思うのは「非常識な真実を発見できること」「ストーリーの力」「実行力」ですね。中でも、一番大事なのは「非常識な真実を発見できること」です。
林 要(はやし かなめ) GROOVE X 創業者兼 CEO。トヨタ自動車で空力技術者としてスーパーカー「LFA」やドイツでFormula-1(F1)の開発に従事。2011 年よりソフトバンク孫正義 CEO が立ち上げた「ソフトバンクアカデミア」参加。2012 年、同 CEO から誘いを受けて「Pepper」の開発リーダー着任。2015 年から現職。
――「非常識な真実」というと?
「非常識」とは「人のバイアスからリリースされていること」と言い換えることもできます。人間というのは、物事を見る時に自分の常識で判断しますよね。常識は物事を効率的に判断するのにはとても役立つんですが、それゆえに常識を通したからといって、物事を俯瞰してフラットに見れている訳じゃないんです。その証拠に、全員が真っ先に考えつくような常識的なアイデアに魅力が無いことは、皆さんご存知だと思います。
一方で、非常識なだけではダメで、バイアスからリリースされていながらも「真実」であることが重要です。真実に即していなければ、実行に移すことはできません。「非常識なファンタジー」はNGということです。非常識なファンタジーも常識的な真実もダメ。「非常識な真実、現実」をとらえにいかなくてはならないんです。
「非常識な真実」をとらえると、ビジネスにおいて卓越したアイデアになります。「卓越した」というのは、つまるところ「非常識な真実に基づいている」ということなんですね。
私がトヨタにいた頃にFormula 1(F1)というレースカーの開発に従事し始めた時も、いろいろとアイデアを考えてみてました。しかし世界中の優秀なトップエンジニアによって、すべて残らず試されていたんです。
その中でどうやって成果を出そうかと考えた時に、自分が真っ先に考えつくアイデアはことごとく没にすることにしました。で、逆に「皆の考えないところはどこなんだ?」と頭を捻る。
非常識なアイデアの99%は「ファンタジー」なのでダメなんですが、残り1%の「真実」を見つけることに注力すると、意外にそこはブルーオーシャンだったりするんです。
重要なのは人を動かす「ストーリー」
次に大事なのが「ストーリーの力」です。「非常識な真実」を見つけたとして、それを人に伝えられなければ、想いを表現するアーティストとして発見してもらう事を祈るしかない。でもビジネスにしたいんだったら、発見してもらうのは待てません。どうしても必要な時に必要な人の協力が必要になります。ビジネスにするための谷を越えることは、自分一人だけではなかなかできないんです。
しかし、言いっぱなしで人が理解してくれるのを待つ、というのはビジネスとしては非常に不確実です。人に理解してもらいたい時の打ち手としては、データで証明する等もあると思うんですが、人はデータだけでも動いてくれないものです。
では、どういう時に人は動いてくれるかというと、伝えたいことが「ストーリー」になっているときなんですね。ストーリーを聞いて初めて、人は動いてくれると私は思っています。
これは何故かというと、人間の認知の仕組みが「エピソード記憶」と呼ばれる、あらゆる情報をストーリーに関連づけて処理したり記憶したりする方法に基づいているからなんです。ですから相手に印象づけられるようなエピソードにそって説明できるかが認知の成否を左右するわけです。そんなストーリーを作れること、これが「ストーリーの力」です。
人を動かすストーリーに落とし込める力がつくと次に何が起きるかというと、リソースと体制が整うようになります。「ストーリーの力」によってお金も人もついてくる。リソースが集まればビジネスを推進していくための体制も作ることができます。
ですから、起業家に必要な素養は順番に「『非常識な真実』を発見できること」、次にそれを「説明できる『ストーリーの力』があること」、最後に「リソースを集め体制を整える『実行力』があること」という順番になると思います。
――なるほど。ちなみに、実行力があっても壁にぶつかって折れてしまう起業家も多いのではないかと思うのですが、壁を乗り越えるためにはどうしたらよいのでしょうか?
そこはストーリーの力によるんじゃないかと思います。
「やってやるぞ!」という熱意も大事なんですが、「壁にぶつかって折れてしまう起業家」というのは、熱意だけじゃどうにもならなかった、という事ですよね。それは協力してくれる人に分かってもらえないとダメなのだと思います。またその手前に、「非常識な真実」を発見できているかどうかも大事です。自分がやろうとしていることが本質的に大事なことなのか、またそれを上手く相手に伝えることができているかを常に自問自答することが大切だと思います。
>第2話「大企業エンジニア時代に養われた起業家としての素養」に続く
>GROOVE X公式HPはこちら
著者 小縣 拓馬
起業家向けメディア「ベンチャーナビ」 編集長。玩具会社のタカラトミーを経てDIに参画。ビジネスプロデューサーとして、主に国内ベンチャーへの投資・事業支援・戦略立案を担当。 ~「More than Meets the Eye」 これは玩具会社時代に担当していたトランスフォーマーというシリーズの代表的なコピーです。見た目だけではわからない、物事の本質に焦点を当てること。そんな想いで記事を提供していきたいと思っています。~
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