#ファイナンス
求人メディア『Green』やマッチングアプリ『yenta』など、オリジナリティあるサービスを次々と展開し成長を遂げてきた株式会社アトラエ。社員の意志を最大限尊重する組織文化でも知られ、2016年に東証マザーズへ上場、2018年6月に東証一部への市場変更も果たした。同社代表取締役の新居佳英氏に、起業家の素養や、組織文化のつくり方などを聞いた。(全6話)
必ずトップ自ら採用に関わり、人材を見極める
――企業文化の醸成に新卒採用が効いている(第5話リンク)とのお話がありましたが、採用への取り組みをお聞かせください。
採用に関しては凄くこだわっていて、これだけは私が必ず絡むようにしています。もちろん採用に関してはこの会社の人間の中で最も経験が長いスペシャリストですし、創業者として企業文化に適性がある人間をちゃんとチェックするようにしています。
まず必ず見るのは「パッション」の部分。こればかりは教えられません。見極め方としては、これまでの人生で「パッション」を持って何かに取り組んだことのある人。スポーツでも趣味でもいい。「パッション」を持ったことのある人は、仕事でも「パッション」を持てる可能性が高いと感じています。
あと必ず見るのは、起業家の素養(第1話リンク)とも通じますが「人間性」です。具体的にいうと、利他的な部分を持っているかどうかです。これだけ本人の意志を尊重する組織ですので、お互いに心から信頼して背中を任せられるかはすごく重要です。自分のエゴに走る利己的な人間ではなく、利他的な考えをもつ人の方が、苦しい時でも信頼し続けることができます。
ベースは「一緒に働きたい」かどうか
――創業期の仲間集めについてもお聞かせください。
私は一緒に働きたいと思う人としか働きたくないタイプなので、一緒に働きたいと思った人を片っ端から集めました。初期の段階では5名くらいに声をかけて、ほぼ全員採用しました。
――それだけ優秀な人材を創業初期に口説くのは難しかったのではないでしょうか?
そこはネバーギブアップの精神しかないです。最長で3年かけて口説いた人もいました。ふられてもふられても、追いかけ続けて最後に振り向いてもらえれば、ふられてないことになります。(笑)
もちろん、自分の実現したいことのパッションをどれだけ伝えられるかが一番大事ですが、優秀な人を口説く時は、相手が何にパッションを持っているかを聞くことも大事です。相手が将来やりたいことを聞いた上で、「だったら一緒にやろう」とか「こういうビジネスを一緒に立ち上げられるんじゃないか」と伝えるようにしていました。
これは、欲しい機能やスキルで人を採用している会社にはできないことです。そういう会社はパズルのピースを埋めたいだけなので、一度ふられてしまうと違う人を求めてしまいます。でも私は、「この人と働きたい」という気持ちがベースなので、ポジションはその人のために作ればいいと常に思っています。
もちろんそのような採用方針を貫き、いろんな人にとっての機会を提供していくためには、会社が成長し続けていかないといけません。鶏が先か卵が先かの話になってしまいますが、良い人材を採用するためには会社が成長し続けることが大事、ということを日々実感しています。
――社外の仲間集めという点で、投資家の選び方についてもお聞かせください。
これも採用と同じで、「人として信頼できる人を選ぶ」ことが絶対条件です。
投資の際に議論になるバリュエーションや事業シナジーというのは、基本的には第二、第三の話で、まず第一は責任者が人として信頼できるかどうかを見ています。その信頼関係がないと、事業がうまくいかなくなったときに一緒に頑張れません。ですので、特に創業期の投資家選びでは「信頼できる人を選ぶ」ことが絶対だと思います。
世界中から愛され、尊敬される会社になる
――今後見据えているビジョンをお聞かせください。
我々のビジョンは「世界中の人々を魅了する会社を創る」です。多くの人がアトラエのファンとして応援してくれたり、アトラエが始める新しいサービスなら良いサービスなのではと期待してくれたりするような、そんな会社でありたいと思っています。
ビジョンにある「世界中」という言葉のニュアンスは、売上規模を追うといったものではなくて、ファンでいてくれる方々の範囲をどんどん大きくしていきたい、という意味合いを込めています。今は日本の一部の人たちにだけ届いている我々のサービス価値や組織構造を、より多くの人に知ってもらい、世界から愛される会社でありたいと思います。
――事業として具体的な発展イメージはございますか?
一つ目は、グローバルで勝負したいと思っています。
地域は全て可能性があると思っていますが、事業によって優先順位は変わってきます。現在弊社が展開している『yenta』や『wevox』はアプリやツールなので、言語対応することはさほど難しくありません。なのでニーズさえあれば、世界への展開も可能性はあると思います。ただし、そう簡単な話ではないとも理解しています。そのため、我々がすでに持っている3つの事業(Green、yenta、wevox)以外でも、もっとグローバルを最初から意識した新規事業も検討中です。
最近の日本のベンチャーでいうとメルカリが海外に挑戦しています。彼らだって創業から5年くらいのスパンで立ち上げたので、それが我々にできない理由はない。むしろ、我々の方が資金も技術もあるところからのスタートなのだから、もっと大きいものが作れるはずです。
二つ目は、マス向けサービスを展開したいと思っています。
今の我々のビジネスのほとんどが、企業のホワイトカラーを対象にしているビジネスなので、まだ価値を提供できていない人がたくさんいます。
世界中のできるだけ多くの人々に価値を届けたいと考えたときに、100億の売上を10社から10億円ずつ得るのではなくて、1億人から100円ずつ得られるようなサービスの方が面白い。そういう意味で、マス向けサービスはすごく興味があります。
――最後にベンチャーナビの読者の皆様(若手起業家や起業を目指している方)にメッセージをお願いいたします。
私が考える起業家の役割というのは「関わる人たちを幸せにすること」だと思っています。社員、社員の家族、顧客、ユーザー、クライアント。そういった人たちを幸せにできることが優れた経営者であり、優れた起業家だと思っています。
ですので、是非、自分の私利私欲に走ることなく、欲よりもどちらかというと周りの人たちの幸せを実現できる経営者が日本に増えてくれるといいなと思っています。
>第5話「「全員経営」を体現する企業文化のつくり方」に戻る
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DIMENSION 編集長
「人・事業・組織に向き合い、まっすぐな志が報われる社会を創る」をミッションに、真摯に経営に向き合う起業家に創業期から出資し、事業拡大・上場を支援する国内ベンチャーキャピタル。
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