#インタビュー
2010年の創業以来、モバイル/スマートフォン向けゲームでヒット作を数多く手がけ、成長を遂げてきた株式会社アカツキ。2016年3月に東証マザーズ上場、2017年9月には東証一部への市場変更も果たした。同社を牽引する代表取締役CEO 塩田元規氏に、起業家の素養や組織づくりのポイントなどについて聞いた。(全6話)
「トレンド」を見極め、「スピード」で乗る
――創業からわずか4ヶ月で、ゲーム「育てて☆マイガール」をリリースし、ヒットを記録されました。ゼロイチで事業を成功させるポイントはどのようなことでしょうか?
まずは「世の中の波を見極めること(トレンド)」と「いち早く波に乗ること(スピード)」が重要です。
最初のゲームがヒットしたかというと、それほど大ヒットしたわけではありません。ただ、ゲーム産業という昔からある巨大市場の中で、モバイルゲームがどんどん伸びていくトレンドにいち早く乗ることができた。この目利きとスピードの部分が良かったのだと思います。
あとは企画の筋が良いことも、もちろん重要です。私も創業時、過去のありとあらゆるゲーム作品を分析して、その中の成功ロジックが何なのかを抽出していきました。過去の成功事例を振り返れば、かならず成功ロジックは存在しているはずです。
自分の感情を直感的に突き動かすもの
――ヒットの裏には、しっかりとしたロジックがあったのですね。
でも、一番重要なのは「本当にそれが今やりたいのか?」という直感的な感情です。
「流行ってるからやる」という感情では、苦しい局面を乗り越える原動力になりません。もし、「3年で会社をイグジットする」という短期的な考えであれば、3年くらいは耐えられるから良いのかもしれません。しかし、起業によって素晴らしい人生を歩んでいくという考えであれば、その選択は本質的ではありません。
お金を得たいがために我慢する3年は、ただのモラトリアムのように思います。もし2年目で死んでしまったら、きっと後悔するでしょう。本質的には、「いま死んでもいい」という状態を常に作り続けることが重要です。そのためには、自分の感情を直感的に突き動かす何かが事業に対して無いとだめかと思います。
私の場合、自分がつくったゲームのことが、ロジック抜きに大好きでした。モバイルゲームは流行りではありましたが、ゲームの本質的な価値とは何なのかを常に問うていたし、創業2年目頃にイベント登壇した際にも「ゲームが人類を幸せにする」というテーマで話していました。ゲームが好きで意味があると心から信じてきました。この感情が無いとなかなか事業をゼロイチで立ち上げるのは辛いと思います。
真摯な態度で、信頼を積み重ねる
――御社が急成長された背景には、強力なビジネスパートナーとの連携というのも一因としてあるかと思います。ベンチャーが大企業と連携するうえでのポイントをお聞かせください。
まず重要なのは、定性的な「業界内でのレピュテーション(評価)」だと思います。
大企業と仕事をするときには、「この会社って信用できるの?」と必ず問われます。そのときに、担当者の方が自信をもって「この会社は裏切らない」とか、「この会社は言ったことをちゃんとやる」と言えるようにすることが重要です。
そういった信用は、過去のどんな小さな取引や関係性においても、真摯に正しいことに取り組んできた、という積み重ねでしか築くことはできません。我々がいくつもの大企業と連携できるのは、「アカツキは誠実」という評価が業界内で認識されているからでしょう。どんなにトラブルが起きても、嘘をつかずきちんと向き合ってきた。だからこそ、信用を得ることができたのだと思います。
加えて、「違い」があったというのもあると考えています早くに成功した会社だからこそ、他社には無いノウハウがあるというブランディングで差別化できました。
結論としては、信用に値する「業界内でのレビュテーション」を築くことと、選ばれる理由としての「違い」を持つこと。大企業と連携する際には、この両輪が重要になってくると思います。
――採用と同じで(第4話リンク)、相手を裏切らないことが重要なのですね。
大企業であれベンチャーであれ、結局のところは「人」で仕事をしていますから。
例えば、上手くいっているタイミングでちやほやする人の中には、上手くいかなくなると離れていく人もいます。反面、私たちは苦しいときに助けてくれた人のことを一生忘れません。相手だって苦しい時の我々の態度にこそ、注目しているものです。短視眼的に関係性を見るのではなく、長期の視点に立って、人との信頼関係を積み重ねていくことが大切だと思います。
※本記事は配信日現在の内容です
>第6話「「起業家の罠」を乗り越え、最高にハッピーな旅を」に続く
>第4話「組織論における「目に見えないもの」の重要性」に戻る
>アカツキ公式HPはこちら
DIMENSION 編集長
「人・事業・組織に向き合い、まっすぐな志が報われる社会を創る」をミッションに、真摯に経営に向き合う起業家に創業期から出資し、事業拡大・上場を支援する国内ベンチャーキャピタル。
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