#インタビュー
『途上国から世界に通用するブランドをつくる』というビジョンのもと、バングラデシュをはじめとしたアジア6か国でのものづくり、そして国内外38店舗を展開する株式会社マザーハウス。2006年の創業以来、代表の山口絵理子氏とともに同社を牽引してきた山崎大祐 代表取締役副社長に、経営者の素養、世界で通用する事業作りについて聞いた(全6話)
「セーフティーネット」と「チャレンジサポート」
ーー優秀なメンバーを集め、エンゲージメントを高める秘訣についてお聞かせください。
組織づくりを語る上で基本となる概念は「セーフティーネット」と「チャレンジサポート」の組み合わせだと思っています。
「セーフティネット」というのは、メンバーの生活を守る機能のことです。
例えばマザーハウスはどんな社員であれ「最低年収300万円」と決めています。これは安月給が多い小売業界では革新的な取り組みですし、社員の心理的安全を担保するうえでも強烈なメッセージになっています。
人生、良い時もあれば悪い時もあります。出産・育児や介護で働く時間を確保しづらくなったり、予期せぬ病気になってしまうことだってある。「良い時だけ働いてもらって悪い時はさようなら」では絶対に会社は成り立ちません。
なので会社の「セーフティネット」をどう設計するかは、組織づくりにおいて非常に重要なポイントだと思っています。
一方で当然「セーフティネット」だけでは会社は成長しません。チャレンジする人がいてはじめて会社は新しい価値を生みだすことができます。チャレンジする人を応援する「チャレンジサポート」の仕組みとバランスさせながら、組織をつくっていくことが大切です。
ーーとはいえ、どうしてもコストがかかってしまうため制度を導入できない会社も多いのではないかと思います。
当然コストがかかることですが、大切なのは仕組みを導入するだけでなく、「みんなで考えること」と「トップがコミットすること」だと思います。
例えば「育児しながらの働き方」について考えるプロジェクトが社内であり、そこでは働くママたちと私が一緒になって企画を検討しています。
加えて経営者として意識すべきは、「何が起きても助け合えるだけの余剰人員を持つこと」です。そのためには、ある程度バッファを持てるだけの利益が必要となります。
日本企業は欧米企業に対して目指している利益率が低すぎます。大企業ならそれでも「セーフティネット」に投資できるかもしれませんが、規模の小さいベンチャーでは無理です。
メンバーの「セーフティネット」が今の先行き不透明な時代には必要だからこそ、その仕組みを維持できるだけの利益率を出すこと。私はこれを絶えず意識して経営しています。
トップが「正直に」語ることの重要性
ーーブランディングについてもお聞かせください。御社は商品顧客、人材採用のどちらにおいても非常に熱量の高い「ファン」を獲得できていると感じます。
2つ意識していることがあって、1つめのキーワードは「お客様の『ために』から『共に』へ」です。
たとえば「途上国から世界に通用するブランドをつくる」という理念がマザーハウスにはありますが、これは社員だけでなくお客様と「共に」達成していくものです。
具体的なアクションとして、私たちはお客様と「共に」商品企画をする場を作ったり、途上国の工場で「共に」ものづくりをする機会を作ったりしています。
社会にとって本当に必要なビジョン・ミッションであれば、必ず共感して行動してくれる人がいます。会社から一方的にメッセージを発信するだけでなく、「共に」ブランドを作り上げていくことを大切にしています。
2つ目のキーワードは「正直であれ」ということです。
誰しもが発信できる世の中で、嘘をついて取り繕っていても必ずどこかから情報が漏れます。共感していないことを「共感しています」と言ったところで、ぜったいにバレる時代です。
代表の山口や私をはじめ、マザーハウスの社員はみんな「正直」です。そして正直でいれば、必ず応援してくれる人がいるものなのです。
ーーたしかに、御社は山口さん、山崎さん共にメッセージを語る場をたくさん作られています。
トップが思いを上手く語れるようになるには、トレーニングとオポチュニティを増やすことが必要です。私たちは社外・社内ともにあらゆる機会で思いを語り続けているからこそ、メッセージが洗練されて多くの方に共感していただくことができています。
社外に向けてトップが思いを語る場を増やすことで、一番差がつくのは「採用」です。「採用」はトップがコミットすべきことだし、トップが正直に語らない会社に候補者は集まりません。
また社内プレゼンテーションも私たちはいつだって本気です。社内スタッフを感動させられないと、お客様を感動させられることはできないからです。
トップこそ「正直たれ」。これはブランディングにおいても採用においても大切なことだと思います。
>第6話「途上国から世界に通用するブランドをつくる」に続く
>第4話「自分たちの未来を信じ切れ。経営者に求められる覚悟とは」に戻る
>マザーハウスの採用情報はこちら
>マザーハウスの公式HPはこちら
DIMENSION 編集長
「人・事業・組織に向き合い、まっすぐな志が報われる社会を創る」をミッションに、真摯に経営に向き合う起業家に創業期から出資し、事業拡大・上場を支援する国内ベンチャーキャピタル。
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