#人事・組織
『途上国から世界に通用するブランドをつくる』というビジョンのもと、バングラデシュをはじめとしたアジア6か国でのものづくり、そして国内外38店舗を展開する株式会社マザーハウス。2006年の創業以来、代表の山口絵理子氏とともに同社を牽引してきた山崎大祐 代表取締役副社長に、経営者の素養、世界で通用する事業作りについて聞いた(全6話)
世界と戦うために問われる「トップの覚悟」
ーー台湾、香港、シンガポールと、次々に海外にも出店されています。海外展開において重視していることをお聞かせください。
2つ重視しているポイントがあって、1つめはトップが本気でコミットすること。それによりスピード感を持ってリスクテイクしていくことです。
例えば2019年3月に出店したシンガポール空港の店舗は、最初は私一人で交渉に行きました。特に小売業界は海外進出している日本企業が全然いないので、日本人のトップがいきなり一人で来てびっくりされたのを覚えています。そして最初の交渉から1週間後には理想の条件に近い提示が先方からあり、残り2、3回のミーティングで出店が決まりました。
このスピード感が海外では必要ですし、そのためにはトップが本気でコミットするしかありません。
2つ目は「続けること」です。最初からは絶対にうまくいかないからです。
例えばマザーハウスは台湾に2011年に進出していますが、黒字化するのに約6年もかかりました。日本市場は新しいものに寛容で、大量生産品じゃないものの価値を理解してくれるリテラシーの高さもある。本当に戦いやすい市場なんです。
「日本の市場は縮小するから海外へ行かないと、、」くらいの生半可な気持ちなら、日本に残って稼いだ方がよっぽど成功確率が高いでしょう。
それでも海外に行かなければならない理由と覚悟があるのなら、損失覚悟で「続けること」です。私たちも撤退要件はゆるやかに決めるだけで、あとはリスクをとって「続ける」覚悟を持って参入しています。
ーー工場もアジア6カ国に展開され、会社全体で600名規模に成長されています。グローバルな組織をマネジメントするうえでの苦労をお聞かせください。
組織運営において大切なことは日本と本質的には変わりません。アジア各国は離職率が高いのではないかとよく聞かれますが、当社の場合は日本とあまり変わりません。
例えば香港に出店したときも、日本に出店するときと同じように店を自分たちで作るところから携わってもらいました。そうやって「共に」作るプロセスを経ているからこそ、非常にロイヤリティ高く働いてくれています。
1つだけ日本にはない点で注意すべきことがあるとすると「宗教」です。これは日本人には理解できないと思ったほうがいいです。
例えばマザーハウスの工場があるバングラデシュはイスラム教国なので、彼らはイスラムの戒律を守ることが生まれた時から最優先事項として染み付いています。この感覚は日本人には理解しようとしても本質的に理解できるものではありません。
同様にネパールはヒンドゥー教、インドネシアはイスラム、スリランカは仏教といったように各国で主に信仰されている宗教が異なります。
宗教がコミュニティや働き方に与える影響を理解する力は、日本人に最も欠けている能力です。それを理解したうえで、互いを尊重し合う意識は忘れてはいけません。
リーダーが「Optimistic」であり続ける
ーー今後のチャレンジについてお聞かせください。
「途上国から世界に通用するブランドをつくる」というビジョンのもとに10カ国で事業を展開してきましたが、現状は全てアジアです。
しかし途上国は世界中にあるし、「世界に通用する」と言っているのにヨーロッパもアメリカも展開できていません。ですので、ビジョンに対してようやくスタートラインについたところで、これからの5年10年が本当の勝負だと思っています。
これからもビジョンに忠実に、一つでも多くの国からものづくりをし、一つでも多くの国に商品を届けていきたいと思っていきます。
ーー最後にベンチャーナビの読者である起業家・起業家予備軍の皆さんにメッセージをお願いいたします。
私も13年間マザーハウスという会社をやってきて、何度も会社がなくなるかと思うほど大変なことがあった一方で、マザーハウスのおかげで自分の人生がすごく豊かになったなと思っています。
1つだけ伝えたいのは、私が一番好きな言葉。「Optimistic(楽観的であれ)」です。
今の時代は一つ間違えるとすぐに悲観できる時代です。社会にはいろんな問題があって、リスクも大きいし、技術進歩も早い。そんな中だとしても、悲観からは何も生まれないと思っています。
「Optimistic」であって欲しいし、「Optimistic」の語源である「Optimus(最善を尽くす)」、どんな状況であっても最善を尽くして欲しいし、最後まで最善を尽くす、諦めない人が社会のリーダーになっていく人だと思います。
私もそれをこれからも続けていきたいですし、皆さんもOptimisticでいてほしいと思います。
>第5話「ファン作りは「お客様の『ために』から『共に』の時代へ」に戻る
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DIMENSION 編集長
「人・事業・組織に向き合い、まっすぐな志が報われる社会を創る」をミッションに、真摯に経営に向き合う起業家に創業期から出資し、事業拡大・上場を支援する国内ベンチャーキャピタル。
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